中古住宅買うなら知っておくべきインスペクションとは?徹底解説

2023.01.16
中古住宅買うなら知っておくべきインスペクションとは?徹底解説

マンション購入者の方にはまだ馴染みが薄い「インスペクション」。しかし今、住宅購入支援制度が、中古住宅に「より長く住む」ことが推奨される内容に変わってきています。マンション購入も例外ではなく、建物の状態を把握するためのインスペクションは、資産価値観点からも今後大切な視点となってくると考えられます。

この記事では、今後中古住宅を買うなら知っておきたい「インスペクション」の意義や考え方、依頼時の注意点まで解説します。

お話を伺ったのは、建物調査の専門家・古田土 勉さんです。

古田土 勉

古田土氏プロフィール画像

株式会社安心住宅みらいえ 代表取締役会長
住宅の建物調査や鑑定業務を行う株式会社安心住宅みらいえ代表。 行政側として建築の検査に携わり、確認検査機関を経て現職。 建築基準法の歩みとともにこの道30年、 業界では「何かあれば古田土(こだと)に聞け」と言われる存在。
https://c-miraie.com/

👉 この記事ではこんな内容が読めます
⏩ インスペクションとは
⏩ なぜ今インスペクションが注目されているのか
⏩ インスペクションを行うメリットとは
⏩ 建物状況調査だけでは不十分なの?
⏩ 依頼する際に気をつけるべき点やポイントは?
⏩ 依頼にベストなタイミングとは?
⏩ 中古住宅を買うなら知っておくべき必須要項になるか

インスペクションとは

一言で「インスペクション」と言っても、実はいろんな意味合いを含んだものとなっています。本来は「検査」「調査」といった意味をもつ言葉であり、住宅を長く使う意識が根付いた欧米では、一般的に行われているインスペクション。現在の日本では、意図するところによって大きく2種類に分けられます。

【A】宅建業法上のインスペクション(=「建物状況調査」

【B】広義でのインスペクション
・・▷「耐震診断」や「シロアリ検査」など、建物調査全般を指す
・・▷税制度や補助金などの適合証明・条件として必要な検査


【A】宅建業法上のインスペクション

まず、インスペクションとネットで調べた時にすぐに情報として上がってくるのは、おそらくこちらでしょう。

平成28年に改正された宅地建物取引業法から、インスペクションに関する事項が盛り込まれました。これに伴い平成30年4月以降、既存住宅(中古住宅)の売買の契約時にインスペクションの斡旋、説明を行うことが義務化されました。

この宅建業法上のインスペクションは、「建物状況調査」と呼ばれます。既存住宅状況調査技術者講習を修了した建築士が、国が定めた「既存住宅状況調査方法基準」に従い、既存住宅の調査を行うもの。建物の基礎、外壁など主要な部分や雨水の浸入を防止する部分に生じているひび割れ、雨漏りなどの劣化・不具合の状況を、目視で検査します。国交省指定の調査報告書(見本はこちら)によって報告がなされます。

費用としては依頼先の業者や住宅の条件によりますが、大体5〜8万円ほどが相場。2〜3時間ほどで終わることが一般的です。

*費用目安:5〜8万円ほど
参考価格表|株式会社安心住宅みらいえ

参考:
「宅地建物取引業法の一部を改正する法律」 (平成28年6月3日公布)概要
建物状況調査(インスペクション)について(国土交通省)

また、建物状況調査を行うことにより、瑕疵保証(保険)に入ることができます。

建物状況調査(既存住宅状況調査)のすべての基準に合格すると、既存住宅売買瑕疵保険に加入する事ができます。 ※一定の条件あり

この保険は平成17年に起こった構造計算書偽造問題によりできた制度です。マンションなど共同住宅の場合、基礎が原因で建物が傾いたり、構造計算の瑕疵により一定の構造耐力が満たされていない場合(雨もり、設備も対象)に適用されます。 

平成19年以降に建てられた建物は建設から10年間、保険制度もしくは供託により保険の対象となっています。 築10年を過ぎた建物は保証の対象にはなっていないため、事故が起こった場合、莫大な修理費が持ち主の負担となります。 共同住宅の場合、修理費(建て替えを含む)は全居住者で按分負担することになりますが、保険制度はその負担割合を補填してくれるのです」


参考:
既存住宅売買瑕疵保険について(国土交通省)
既存住宅購入をお考えの方(住宅瑕疵担保責任保険協会)

【B】広義でのインスペクション

建物状況調査以外に、さらに広い範囲をカバーするインスペクションがこちらです。

国が定める建物状況調査には、耐震診断やシロアリ検査などのオプションは含まれません。また、原則は目視による検査なので、床下や屋根裏など外から見て見えない部分は範囲外になります。

また、住宅購入にはさまざまな控除や補助金制度が用意されています。それらの適合条件として、それぞれに適した検査結果が求められており、それもインスペクションとして扱われています。代表的なところとして、以下のようなものが挙げられます。


■住宅ローン控除・・・耐震基準適合証明書、増改築証明書(リフォームの場合)
■登録免許税の控除・・・耐震基準適合証明書
贈与税の非課税措置・・・耐震基準適合証明書
フラット35・・・適合証明書
長期優良住宅化リフォーム推進事業・・・インスペクション実施(床・壁の傾きや雨漏り、白アリの被害など含む)


*費用目安:

  • 耐震診断:110,000円〜(木造125m²以内、設計図書有の場合)
  • フラット35適合証明書:新耐震の場合:木造60,500円、共同住宅5,5000円
  • 耐震基準適合証明書:55,000円(新耐震:検査済証が発行されている場合)

※上記はすべて株式会社安心住宅みらいえさんの参考価格


古田土さんのところには、仲介会社や管理会社などからの問い合わせが多いといいます。その内容も、非常に多種多様。住まいに関わる制度の多さや、いかに住まいが多くのトラブルに対峙する可能性があるかがわかります。

  • 管理組合と大規模改修・部分改修を問わず施工者が対立し、第三者の意見を聞きたい(管理組合・施工者)
  • 修繕計画と費用が適正か調べてほしい(管理組合等)
  • 補修方法が適正であったか調べてほしい(管理組合等)
  • 共用部分の結露の原因調査(管理組合等ホール・階段室)
  • カビの発生原因と改善方法を調べてほしい(室内)
  • 結露の発生原因と改善方法を調べてほしい(室内)
  • クロス剥がれの原因調査(室内)
  • 室内の不具合一般


なぜ今インスペクションが注目されているのか

冒頭にお伝えした通り、インスペクションは法改正もあり近年になってその重要性が注目されるようになってきました。

とはいえ、インスペクションが義務化されたのは「説明」まで。「既存住宅を売買する場合に、必ず建物状況調査を実施しなければならないものではありません」と国土交通省も明記している通り、現時点の日本ではまだインスペクションの「義務化」というには遠い状況です。

一方で、インスペクションをする大前提としての「住宅を手を入れながら長く住み続ける」基本姿勢を国交相は推進している状況であり、それに対する支援策や補助金も手厚くなりつつあります。必要な設計や管理がされた新築・中古住宅が優遇される一方で、管理がおろそかであったり設計や構造が長期利用に合わない住宅が今後よりシビアに鑑定される方向になることは間違いありません。

そのため、中古マンションであっても購入時にインスペクションを行う視点をもつことは購入時における出費の削減はもちろん、将来的な資産価値維持においても重要になってきていると言えます。

インスペクションを行うメリットとは

インスペクションを行うメリットとしては、支出金額を抑える点以外にもどんなことが考えられるでしょうか。古田土さんに聞いてみました。

「まず、建物状況調査においては、
●売り主・買主とも共通の視点で現在の状況を確認できること
●結果トラブルを未然に防ぎ取引がスムーズになる
●マンション全体の法適合性、管理の状況が分かる
ことなどが挙げられます。

さらに、目的に合わせた個別のインスペクションにおいては、
●生活環境の改善方法(生活リスク)がわかる
●マンションの場合は、大規模修繕時に管理組合に要望ができる
ということが挙げられるでしょう。

特に、一般の方にとっては「生活環境の改善方法(生活リスク)がわかる」というのが大きいと思います。
住まいのちょっとした不満は、原因がわかれば対策ができます。例えば戸建の例になりますが、『足元が寒い』というご相談があったとします。インスペクションの結果、下降気流の通り道がわかったら、そこに遮蔽する物をおいて防ぎましょう、とか、扇風機で風を循環させましょう、など解決策の提案ができます。リフォームをしなくても住み方を変えることで対処できる可能性があるのです」


よくあるご相談の一つは、リフォームしたけれど全然よくならなかった・・というもの。また、契約時に不動産会社から「インスペクションは必要ない」と言われて不安になって問い合わせた、というのもよくあるパターンだといいます。

国としての制度も整備途上のため、不動産会社は積極的にインスペクションを勧める会社と消極的な会社の二極化しているといいます。経験がない営業担当者も多いのが現状。第三者に見てもらうことで、結果が問題なかったとしても安心できて、万が一トラブルが起こった場合も責任の所在を明確にできるというのは、非常に意義として大きいと言えます。

建物状況調査だけでは不十分なの?

国として定められたインスペクションである建物状況調査ですが、これだけでは不十分なのでしょうか? 古田土さんは、「十分と言える部分と、言えない部分がある」と話します。

「十分と言える理由としては、宅建業法の範囲でのチェックはできるということ。つまり契約不適合であるかどうかの範囲は、しっかりカバーできているという点。
一方で十分とは言えない理由は、建物にはそれぞれ特性があるため、建物状況調査では個々の目的に最適な検査内容にはなっていない、という点にあります。基本的には目視の範囲のため内部の状況もわかりません」


法で問題がないと判断されるという側面と、実際に人(自分)が住んだ時に問題がないと感じるか、という側面は、まったく別の観点。建物もそこに住む人も、それぞれ個性があるからこそ、それに適合した検査が本来は望ましい。まさに病院にかかるのと同じと言えそうです。

依頼する際に気をつけるべき点やポイントは?

インスペクションの重要性が理解できたところで、依頼に際して気をつけるべき点やポイントがないかが気になります。

「保証・フラット35等の制度上の確認は別として、まず目的をはっきりさせることをしていただければ良いと思います。技術的な話であれば対応できるので、『何を調べて欲しいのか』ということを明確にしましょう。『アトピーがあるんだけど大丈夫か、不安要素がないか調べてくれ』・・といったようなことです」


インスペクション業者の選び方については、ポイントはあるのでしょうか?

「建物状況調査はガイドラインにより行うため、基本的にはどの業者でも同じはず。ただし慣れている人と慣れていない人がいることは事実です。資格はとったけど、調査依頼が来ないので実際には経験がない、というケースも。
理屈上は同じレベルでできるはずなのですが、実際には経験値も必要です。経験を積む、場数を踏むことで、インスペクションの見るポイントがわかってくる。ただ、建築士としてダメなところをダメとして指摘しないとお仕事にならないので、どこか取引先と繋がっているから悪いことは言わない、黒を白にするというような方は、まずないはずだと思います」


依頼にベストなタイミングとは?

インスペクションを依頼するベストなタイミングに関しては、
居住中の方であれば、生活上の問題がある時。修繕時であれば、修理したにも関わらず改善しない場合」とのこと。

「管理組合からの依頼も多いのですが、大規模改修をしたのに逆に雨漏りをしてしまった・・などの問い合わせもめずらしくありません。
あとは、売却を考えた時や、購入したい物件と出会った時など、気になったタイミングで問い合わせてみていただければと思います」


中古住宅を買うなら知っておくべき必須要項になるか

ここまでインスペクションの意義や現状、対応について見てきました。住まい(戸建)を30年で建て替えるサイクルが定着していた日本。そのため、建物を保たせることに対して意識が高くないのだと古田土さんは話します。

「建築基準法とは奥が深い世界、面白い世界ではあるんですよ。ハンムラビ法典だと人が死んだら建築家が死刑になるとか・・やっぱり始まりは保険制度ですね。今の建築基準法というのは、概念としてアメリカから持ってきたものなんです。イギリスやアメリカは大規模な火災があったりするので、それをどういうふうに防ごうかというところから始まっている」


これからの日本の住まいを考える上で、私たちはいかに住まいという環境を永続的に使うかという視点をもち、行動を選択することが求められてきています。

家っていうのは、マンションでも戸建でも、メンテナンスです。メンテナンスをいかにまめにやるかっていうことですね。これしかないです。これをどう見分けてやっていくか。メンテナンスのやり方というのも、例えば屋根だけやるか壁だけやるのか。足場を組むのはお金がかかるので、やるなら全部一度にやった方がお得ですよ、という提案をするとか・・」


例えば、コーキングは20年もっても、ペンキは10年しかもたない、など部位や素材によって耐久性に差があることも。

「だから、バランスなんです。私は高価なものは必要なく、普通のものでいいので、やるんなら両方ともやって、10年後にまた同じようにやってください、と話しています。全体のバランスをみて、メンテナンスはこまめにやるしかない。極端な話、コーキングなど自分でできるなら自分でやってもいいんです」


メンテナンスという観点で中古マンションを選ぶ、買う。メンテナンスに必要な手段として、インスペクションを考える。今買おうとしている家は、これから長く住んでいく場所になるのだし、将来的に売ることにもなるかもしれないのだからーー

「そういう思いを持っていただける方が増えてくれると、本当に嬉しいなと思います」と古田土さん。ご自身がキャリアとして、行政と確認検査機関を経て現在の民間の立場を選んだのは、民事に介入して住まい手の解決となる検査を行いたいと考えたからだと話します。

古田土さんの会社も、今は不動産会社など企業からの問い合わせが大半。ですが、一般のお客さんから各種制度への適用条件を問われたことをきっかけとして相談にくるケースが多いそう。消費者の目線は変わってきています。インスペクションが一般常識になる未来は、もうすぐそこ。売り手も買い手も業者も、いかに早く適応できるかが鍵となりそうです。

株式会社Housmart
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マンションジャーナル編集部

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