データで検証!「物件が見つからない!」原因は「エリアと条件の組み合わせ」にあり!?

2024.03.17
データで検証!「物件が見つからない!」原因は「エリアと条件の組み合わせ」にあり!?

「ちっとも物件が売り出されてこない・・そんなにたくさんの数は条件提示していないはずなのに・・」という方、もしかしたらその希望条件の「組み合わせ」に原因があるかもしれません。

希望条件は、数よりも内容が重要です。マンションはその土地の特性や建築上の制約などの諸条件に合わせた商品企画になっているもの。そのため、エリア特性に合っていない条件を設定していたり、そのエリアならではの傾向によってはいくら待っても出てこない・・ということも起こりえます。

そこで今回は、

  • 「見つかりやすい物件希望条件」と「見つかりにくい物件希望条件」の例
  • エリアの特性によって見つかりやすい物件と見つかりにくい物件があるとはどういうことなのか?

を実際のデータから見ていきたいと思います。

東京首都圏でも高層マンションはたった6%!?


東京首都圏で人気の高層マンション(タワーマンション)。タワーマンションの建設には、広大な敷地面積が必要です。そのため、タワーマンションがある場所というのは都内だと工場跡地などを再開発した湾岸エリアか、駅前周辺一体を大規模再開発したエリアなどに限られます。結果的に、売り出し物件数も自然と絞られていきます。

実際にタワーマンションと低層マンションで物件数を比較してみましょう。2024年3月時点で、東京首都圏エリアにおいて売り出されている物件数を、エリアごとに集計してみました。



左側がタワーマンション(ここでは20階建以上と定義)、右側が低層マンション(7階建以下と定義)です。円の大きさは、エリア(郵便番号)ごとの売り出し物件数の多さを表しています。

これで見ると、タワーマンションの件数が少ないことが一目瞭然。売り出されている物件数のわずか6%にしか満たないのです(※2024年3月調査時点)。それに対して低層マンションは、全体の47%。タワーマンションの7倍以上の数の物件が売り出されているのです。タワーマンションを希望する場合は、必然的にエリアが絞られ、その中から選ぶことになります。

低層マンションなら選び放題?

では低層マンションなら選び放題となるのでしょうか? ・・というと、そういうわけでもありません。

タワーマンションと低層マンション、それぞれ売り出し件数が多い上位3エリアを比較してみましょう。

タワーマンションの売り出しが多いエリアTOP3
【1】中央区勝どき 101戸
【2】中央区晴海 99戸
【3】江東区豊洲 86戸


低層マンションの売り出しが多いエリアTOP3
【1】世田谷区弦巻 47戸
【1】渋谷区代々木 47戸
【3】港区赤坂 43戸


タワーマンションが最も売り出されているエリアは勝どき。101戸もの物件が売り出されています。対して低層マンションが最も売り出されているエリアは、世田谷区弦巻と渋谷区代々木で、たった47戸。多ければ1,000戸を超える規模にもなるタワーマンションに対して、10戸にも満たない規模もめずらしくない低層マンションは、売り出される機会自体が少ないのです。

先ほどの売り出し物件数は、階数以外の条件は設定していません。そのため、単身向けのワンルームマンションも、70㎡以上のファミリー向けマンションも含まれた数字です。ご自身やご家族の欲しい間取りや広さで探すとなれば、ここからまたさらに対象件数が減ることになります。

そう考えると、タワーマンションが多い勝どきや晴海、豊洲などの湾岸エリアを希望するのであれば物件数自体は多いため、希望の物件には比較的出会いやすいといえます。ファミリー層も多くお子さんの進学タイミングなどに合わせて住み替えをする方も多いため、常に売り出し数は一定数あるでしょう。

反対に、低層マンションが多い世田谷区や渋谷区といったエリアは、駅単位まで絞って探してしまった場合、なかなか売り出し物件に出会えないということが起こりやすいのです。

閑静な住宅街エリア」がなかなか売り出されない理由


いわゆる「閑静な住宅街」と表現されるようなエリアでマンションを探していて見つからず、苦労されている方も多いでしょう。こうしたエリアは売出物件数が少なくなりますが、これも低層マンションが多いことに関連しています。

低層マンションが多いエリアは、一般的に住宅街としての街並みが整えられていることが多くなります。それは、用途地域で「住宅専用地域」として定められているから。特に、主に戸建住宅が集まる住宅街を守るために定められた「第一種低層住居専用地域」や「第二種低層住居専用地域」であれば、マンションは2階建程度の低層住宅になります。戸建専用地域ではありませんが、そもそものマンション棟数自体が少ない上に、住戸数が少数しか設けられないため、必然的にマンション住戸数はぐっと限られてしまうのです。希少価値が高いため価格も高額になりやすくなります。

戸建が多い閑静な住宅街のマンションに住みたいと思うならば、じっと売り出しを待つほかない・・ということになるでしょう。お子さんの進学タイミングなど「この時期までに引っ越したい」という期限がある方は、かなり前から探し始めないと厳しいかもしれません。

「低層で大規模なマンション」は郊外に多い

では、「住戸数が多い低層マンション」はないのでしょうか?

低層(7階建以下)かつ大規模(200戸以上)のマンションに絞ってみたのが、こちらのデータです。



こちらも棟数が大きく限られました。そして同じ大規模だとしてもタワーマンションとはエリアが大きく変わったのが、先ほどのマップと見比べていただけるとよくわかります。高層タワーマンションが湾岸沿いにあるのに比べて、ずいぶんと内陸に寄っています。

低層かつ超大規模マンションの売り出しが多いエリアTOP5
【1】神奈川県横浜市港南区港南台
【2】東京都町田市鶴川
【3】神奈川県横浜市戸塚区前田町
【4】神奈川県相模原市南区相武台団地
【5】東京都国分寺市西町


東京23区ではほとんどなく、神奈川県内が圧倒的です。

低層で大規模なマンションは、郊外のいわゆるベッドタウンとして発展したエリアが目立ちます。郊外エリアの低層大規模マンションはその形状から「板状マンション」などとも呼ばれ、広大な敷地内に複数棟が建っていることも多くあります。駅から少し離れた立地であり、「低層住居専用地域」や「住居専用地域」とまではならずとも、一帯を住宅地として再開発していることも多いので、互いに落ち着いた住環境を守るために低層とされることもあります。

エリアや物件条件によっては「待っても出てこない」ことに・・

街の雰囲気と物件の特性が密接に結びついていることがおわかりいただけたかと思います。エリアによって大きく物件の特性が変わるため、条件の設定の仕方によっては「ずっと待ち続けているのに・・」ということにもなり得ます。

「なかなか希望物件が見つからない・・」そうお思いの方、もしかしたらその希望条件の組み合わせが「ハードルが高い」ものになっているかもしれません。希望が叶うまで待つ、というのも一つの選択肢ですが、もしも購入の動機が「賃料を払い続けるのがもったいない」というものであったり、お子さんの進学などを念頭に期限付きで引っ越したいとお考えの場合は、ぜひ一度、希望条件を調整してみることをおすすめします。

たとえば、
戸建が多い住宅街を希望している場合なら、

  • 少し範囲を広げて同じ路線の別の駅まで探してみる
  • 「落ち着いた住環境」が一番欲しい条件なら、他のエリアで同じような雰囲気の街を探してみる


など・・

見つからない状態でじっと待ち続けるのはストレスが溜まり、賃貸であれば出費も重なることになります。「子どもの学区を変えないためにこのアドレス内で」「両親の家から徒歩10分圏内で」など、他に変えようがない条件であれば別ですが、改めて優先順位をつけ直してみたり、「どうしてこの条件にこだわっていたんだっけ?」と、希望条件でかなえたかった要望を改めて考え直してみたりすることで、打開策が見つかるかもしれません。あなたの住まい選びが、次のステップに進みますように!

各エリアの売り出し物件の傾向やエリアごとの特性については、連載「トレンド分析 “住宅購入市場のいま”」で詳しく解説しています。住宅購入市場におけるトレンドを、毎回1エリアにフォーカスして数値ベースで考察。その売り出し状況を深堀していきます。週一回ペースで更新中。ぜひ気になるエリアからチェックしてみてください。

>>「トレンド分析 “住宅購入市場のいま”」はこちらから

株式会社Housmart
株式会社Housmart
マンションジャーナル編集部

「Housmart(ハウスマート)」が、購入や売却に必要な基礎知識・ノウハウ、資産価値の高い中古マンションの物件情報詳細、ディベロッパーや街などの不動産情報をお届けします。