「大規模修繕実施済みのマンション」を建築のプロがおすすめする理由とは【奥澤氏 ×渕ノ上対談記事】

2019.06.05
「大規模修繕実施済みのマンション」を建築のプロがおすすめする理由とは【奥澤氏 ×渕ノ上対談記事】
コンドミニアム・アセットマネジメント代表の渕ノ上が、マンションの維持管理に関わる設計事務所の草分けとして数多くの保全実績を誇る株式会社スペースユニオン代表の奥澤氏と「マンション管理と資産価値」をテーマに対談を実施しました。

大規模修繕工事の現状

渕ノ上:奥澤さん、本日はよろしくお願いします。まず最初に、建築のプロとしての観点も含めて一般のお客様にはどんなマンションの購入をおすすめされますか。奥澤代表:すでに大規模修繕工事を実施している中古マンションはおすすめですね。経年によって初期の不具合が出てきていて、それらをしっかりと修繕した履歴が残っていれば安心できますね。実際に私もマンションを購入した時も、大規模修繕の妥当性を判断してから購入しました。渕ノ上:ある程度使われていて、安心できるマンションを購入すべきという点は非常に納得感があります。奥澤代表:国交省の調査でも出ていますが、大規模修繕工事を管理会社さんに全てお任せされている管理組合さんがほとんどです。そういったケースではプロの目線から見て残念な点が多いと感じてしまうんです。管理会社の方の力量次第で工事の結果は大きく変わってしまいます。渕ノ上:なるほど。どのような点で「残念」と感じられますか?奥澤代表:然るべきタイミングで必要な修繕を行っていないケースや、あるいは逆に必ずしも必要ない工事をおこなっていたり、工事費用が割高になってしまっているケースもありますね。例えば、大規模修繕工事というのは、仮設の足場をかけて工事をします。平均的な工事費は世帯あたり100万円で、そのうち2割くらいは足場の設置にかかります。ただ、工事が終わったら、仮設の足場は撤去されてしまうのでマンションの資産として残りませんよね。だからこそ、足場を組むのであればやるべき工事を完了させて効率を高めていくべきです。必要な工事を先送りにしてしまうと、何度も足場を組みコストだけがかさんでしまう可能性があります。また、屋上防水工事を築10年ほどのマンションで行うケースもお見受けしますが、今の建築技術では築10年で屋上防水工事は全く必要ないです。こういったオーバースペックな工事の事例は都内の有名マンション、タワーマンションでもよく見られますね。

誰もが持つべき「資産価値の考え方」

渕ノ上:修繕履歴をしっかりと判断して購入すべき理由は、管理の健全性を見極める必要があるからに他なりませんね。他に重視すべき点はありますか?奥澤代表:資産価値ですね。何かあった時にすぐに買い手がついて売却できるかどうかを重視することは本当に重要だなと思います。その前提に立つと、平米数よりも立地を優先した方が得策です。多少の狭さを我慢してでも、駅近を選んだ方がいいですね。渕ノ上:おっしゃる通りですね。例えば、老後に100平米のお部屋に住むのはリスクですね。固定資産税も必要以上に支払い続けなければいけませんよね。我々が仲介の現場で「需要のある広さ」のマンションをお客様におすすめしているのはこういった理由からですね。奥澤代表:そういった事例は私も多く見ていました。特に郊外に多いケースですね。エリアについては、ブランドエリアでなくても駅近で、かつ管理がしっかりしていればいいと思います。もちろん、郊外にも良い面はあり、ゆとりのある敷地や落ち着いた環境などは駅近の建物が込み入った場所では持ち得ないものですし、若い子育て世代にマッチする場合も少なくないと思います。渕ノ上:特定のエリアに住まないといけない事情をお持ちの方もいらっしゃいますよね。あとは、エリアの相場を熟知できているかも大事ですよね。割高で掴んでしまうと売却時に損してしまいます。

ライオンズマンション茅場町の大規模修繕事例

渕ノ上:先生は私が副理事長を務めているライオンズマンション茅場町の大規模修繕のコンサルティングも手がけられておりますが、茅場町の管理レベルはいかがでしょうか。奥澤代表:ライオンズマンション茅場町は、昔から管理への意識が高く素晴らしいと思います。早い時期から修繕積立金を計画的に積立ていましたよね。渕ノ上:ただ、修繕積立金をどう運用していくかを管理組合で決めるのは難しいですよね。積立金が必要以上に余っていても良くないですし、足りないからといって必ず悪いとは言えないんですよね。奥澤代表:そうですね。足りない場合は管理組合として金融機関から融資を受け、積立金で返済していくという選択肢もあります。例えば、最低限の工事だけであれば現状の積立金でまかなえるが、手すりやサッシを交換するなら借り入れが必要になるケースを想定してみましょう。私はこのとき、「投資」の考えを持ち積極的にマンションのグレードをアップさせていくことがこれからのマンション管理では必要になると思っています。今できることをやらずに我慢するよりも、マンションの性能向上に投資することで生活環境をよくしていくこともできます。資産価値という観点で考えても、いかに早く買い手が見つかるかは重要で、築年数や、駅徒歩の条件が同じような近隣物件と比較されても負けないことが、今後一層重要になります。渕ノ上:近隣のマンションに勝つ」という意識は大事ですね。この考えはライオンズマンション茅場町の管理組合のスタンスになっていますね。また、先生は大規模修繕時に外観の意匠(デザイン)にかなりこだわっていらっしゃった印象なのですが、やはり意匠はマンション管理をする上で重要でしょうか?奥澤代表:建物の意匠(デザイン)はかなり重要です。みなさん外観の見栄えには敏感です。大規模修繕工事後に「あまり変わらない」と言われることもあれば、「とても良くなった」と喜ばれることも多いです。意匠の改善は、立派な性能アップだと思っています。渕ノ上:ライオンズマンション茅場町は先生のご提案に基づき、意匠が大きく改善されましたよね。意匠の改善は賃料価格の上昇にも繋がりうる資産価値向上のための有効な施策ですね。意匠以外にも、「古い給排水管の交換が終わっているかどうか」は入居後のランニングコストに直結しますから、もっと売買の場面でも重視されてもいいと思っています。奥澤代表:今は腐食する素材を使用していない、メンテナンスフリーの給排水管がメインです。おっしゃる通り、築年数が経過しているマンションにおいては、給排水管の交換が済んでいるかどうかは重要です。渕ノ上:今後は、そういった管理面も価格に影響するような仕組みづくりを行なっていきたいと考えています。私はようやく少しずつ流通と管理が繋がってきたと思っていまして、コンドミニアム・アセットマネジメントでは街、立地、建物、そして管理とマンションの資産価値を構成する全ての要素を満遍なく評価できる不動産エージェントになっていきたいと考えています。(終)
株式会社Housmart
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マンションジャーナル編集部

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