マンション売却価格の決め方とは?相場と査定の考え方を解説
2020.05.18
マンション売却にあたってもっとも多いお悩みの一つが、売り出し価格の設定。
それを判断するには、まず何よりも売り主自らが「自分の物件を売ればどれくらいの金額が妥当なのか」=相場 を知っておくことが、一番大事なのです。
「自分のマンションの価格を決めたいけど、まずどこから始めたらいい?」
「査定を依頼したら、高かったり低かったりで、どれが信じられる価格なのかわからない・・・」
「買い手がつかず、値段を下げるべきか悩んでいるのだけど・・・」
高額の交渉ごとになるだけに、失敗は避けたいものですよね。「高く」×「早く」×「確実に」マンション売却を成功させるための、正しい価格の決め方・査定のポイントをお教えします。
価格設定(値付け)でいちばん重要なこととは
売り出し価格を決める中で、最も重要なポイントは「いつまでに売りたいか(≒どの程度の売却活動期間に耐えられるか)」という点です。売り主である自分が「高く」売りたいか、「早く」売りたいのか。 これによって、値段をどこに設定するのかが大きく変わってきます。また、その意思決定にあたって、販売長期化に伴うリスクも事前に把握しておくことが非常に重要です。「高く」売りたいか、「早く」売りたいか?を決める
売却期間に余裕があるのであれば、価格を高めに設定してう様子をみるということができます。 一方でとにかく早く売りたいのであれば、価格を相場より安めに設定すればそれだけ早く買い手を集客することができます。●高く売りたい
【メリット】高く売れる可能性がある
【デメリット】集客の難易度が高い(=販売が長期化しやすい傾向)
●早く売りたい
【メリット】早く売れるぶん、売り手の負担が軽くなる
【デメリット】相場よりやや割安に成約する可能性がある
実際のところ売却には「転勤」や「買い替え」などの事情が絡んでいることがほとんどであり、あまり「高く」に比重を置いていられないという方も少なくないでしょう。転勤であれば、
転勤により退去する日程が決まっている場合、「空室になる=住んでいないのに管理費等や税金の負担がある」
というリスクがあるため、退去と同時に買い手に引き渡すことのできるスケジュールが理想的です。また、買い替えであれば、
買い替えによる売却で、すでに買い替え先(新居)を購入している場合、新居の引き渡しを受けるタイミングで売却ができていなければ、「ダブルローン」となり、キャッシュフローが厳しくなります。このようにまず、自分の状況に合わせて、「高く」「早く」のどちらに比重を置くか、という視点で考えましょう。
販売長期化のリスクとは
「高く売りたいので、長期戦でも構わない」という場合、あとで後悔をしないために、どういったリスクがあるのかを認識しておくことが大切です。販売長期化のリスク
①内覧対応の手間や時間の負担が増えてしまう
②買い手に「売れ残っている」と認識されてしまう
③負のスパイラルに入ってしまう
リスク①内覧対応の手間や時間の負担が増えてしまう
販売が長期化すると売り手にとっての負担も増加します。具体的には、買い手(内覧者)の対応に割く手間や時間などです。買い手からの内覧があると、こうした手間を毎週末のように行うことになります。・質問への回答準備
・お部屋の整理整頓
・スケジュール調整
毎週末のように入る内覧。その都度の片付け、他人が自宅に入れ替わり立ち替わり入ってくることでの精神的ストレス・・・売却活動は、売り手にとって想像以上の負担がかかるもの。「こんなはずじゃなかった・・・」ということにならないよう、普段の生活に加えてさまざまな負担が発生することは、ある程度心づもりしておく必要があります。
リスク②買い手に「売れ残っている」と認識されてしまう
販売が長期化してしまうことによるリスクとして、もう1点重要なものがあります。最たるリスクは、販売が長期化した際に、買い手に「売れ残っている」と認識されてしまうことにあります。 一度「売れ残っている」と認識された物件は、さらに買い手から敬遠されてしまい、ますます売りにくくなるという負のスパイラルに陥ることがあります。内覧時に買い手のお客様からよく聞かれる質問のうちの一つが、 「いつから売りに出ているんですか?」 「売れない理由は何ですか?」というもの。同じエリアや同じマンションで探している購入検討者は、定期的に物件情報をウォッチしています。 そこで「この物件、ずっと売れていないな・・・」という印象を受けてしまうと、「何か売れない理由があるのでは?」という勘ぐりや、感情的に「売れ残っている物件は買いたくない」と思ってしまうのです。リスク③負のスパイラルに入ってしまう
一番避けなければならないのが、売り手の心理状態に関わる点。長期化してくると、だんだん毎週の内覧受け入れ準備や実際の内覧が疎ましく思えてきてしまう状態です。最悪なのはその結果、売却業務を預けている不動産業者に「今後の内覧は【本気の方】に限ってください」と、内覧の受け入れの絞りをかけてしまうこと。内覧希望者の絞りについてはある程度は有効な場合もありますが、長期化に伴う疲れが原因で絞り過ぎてしまうのは、売却期間をさらに長引かせることになります。こうなってしまうといつまで経っても売れない、売れ残り続ける「負のスパイラル」に入ってしまいます。これだけは避けるよう、重々注意が必要です。ここまでのポイントは3つ。【1】まずはご自身で、「いつまでに売りたいか(≒どの程度の売却活動期間に耐えられるか)」を考えましょう。
【2】その上で、自分は高く売りたいのか、早く売りたいのかを見定めましょう。
【3】高く売りたい場合は、販売長期化に伴うリスクも事前に認識し、極力をそれを避ける対策をきっちりとこなしていきましょう。
ではいよいよ、「売れ残らないための価格設定」を、ステップを踏んでご説明していきます。
価格を決める時の大事なポイント4つ
まず何よりも絶対に避けなければいけないことは、「売れ残らない」ことです。価格を決める際、どうしても「少しでも高く売りたい」という気持ちが先走ってしまいがちです。 ですが、相場を正しく知らないことには、適正価格をつけることができません。適正価格をつけないと、買い手に「このエリアのマンションにしては随分高いな」などと思われてしまい、相手にされなくなってしまう危険があります。価格を決める際は、①まずは自分自身で相場を把握し、
②物件の強みと弱みを正確に把握し、
③その上で、希望の売出価格についてある程度考えをまとめておいた上で、
④不動産業者から提示された査定金額の「根拠」について説明を求めること
このポイントをしっかり押さえるようにしましょう。
まずは自分自身で「相場を把握する」
売り出し価格を決めるにあたり、多くの場合、「まずは不動産会社や一括査定サイトに査定を依頼する」というステップから始める人が多いと思います。実際、ネット上でもそういった段取りを進めるサイトは少なくありません。ですが、まずは自分自身で相場を調べ、把握することから始めることを強くおすすめします。売り出し価格を決める際に、複数の不動産業者から提示される「査定書」を鵜呑みにすることは危険だからです。「査定書」を鵜呑みにすることが危険な理由
不動産会社によって査定マニュアルや方針は異なるため、査定金額が多少ブレることは起こり得ます。しかしまれに、他社と比較して「明らかに安い」もしくは「明らかに高い」査定書を持参する会社が存在します。そうした不動産会社の「査定金額」には、残念ながら高い確率で、こうした思惑が潜んでいます。割安で提示する業者は、「安く預かりさえすれば早く利益化する」という思惑、 割安で提示する業者は、「高値で査定額を出せばとりあえず媒介契約はもらえる。売れなければ後から値下げしてもらおう」という思惑。どちらも「とにかく契約をもらい、利益を生む」ことだけを考えているパターンです。相場を知っていれば、頼れる業者か見分けられる
本来、売出価格というものは「エリア内の相場データ」や「周辺の競合物件との差別化」などを踏まえた査定価格に、売り手の優先順位(価格 or スピード)や売却戦略を加味した上で決定するものです。そのため、机上査定のみでは限界があるはずなのですが、その段階で高値で提案してくる業者や、安値で提案して早く売れることのみを追求するような業者には注意が必要です。もちろん高い/低い金額であっても、それがしっかりと根拠のある提案であって、その提案(戦略)に対する考え方や希望の売却活動の形に納得がいくのであれば、問題ありません。- 提案された査定金額が相場とどれくらい開きがあるのか
- その査定金額を提示してきた業者が、今後の売却活動を進めていく上で信頼できる会社・担当者なのか
相場の調べ方
相場を調べるにあたって、見るべきポイントは4つあります。具体的に見るべきポイント4つ
注意すべきなのは、販売価格と成約価格の間にはギャップがあること。
販売価格(売り出し価格)とは、売主が「この値段で売りたい」という希望価格。実際にその価格で売れる(売れた)とは限りません。
また、値下げ交渉が入ることを想定して高く設定していることも可能性も十分ありえます。そのため、正しく相場を把握するためには、特に「成約価格」に着目しましょう。成約価格を調べるのは「レインズ」で、現在売り出されている物件価格や過去の売り出し価格は、ポータルサイトや各種WEBサービスで調べることができます。
- 同じマンションの売り出し事例
- 同じマンションの成約事例
- 周辺の類似物件の売り出し事例
- 周辺の類似物件の成約事例
レインズを使って調べる
調べ方の一つが、「レインズ マーケットインフォメーション」です。不動産会社は「レインズ」というシステムを使って、不動産情報を共有して業務を行なっています。レインズは一般の人には閲覧不可ですが、その情報の一部が公開されています。それが「レインズ マーケットインフォメーション」です。知りたいエリア、路線、駅からの徒歩分数、広さ、築年数などの条件で検索をかけられます。 過去の成約事例のみで現在の売り出し物件は見られない、マンション名などの細かい情報までは知ることができないなど限定的ではありますが、自分の検討状況に近しいマンションの過去実績を調べることができます。不動産会社に査定を申し込む
ご自身で相場を調べたら、不動産会社に査定を申し込みます。かつては営業マンの感覚で電卓を叩くやり方で価格を算出していた時代もありましたが、現在ではほとんどの会社に「査定マニュアル」が存在します。不動産査定に特化したツールなども数多くあり、システマチックに机上査定がなされます。主観性を排除した机上査定が行われた上で、その後実際にお部屋を訪問した際に 室内の保存状況や周辺環境などを確認。「システムでは算出できない強み・弱み」を考慮した上で、最終的な売出価格が不動産会社から、提示されます。売り出し価格に影響する、システムでは算出できない強み・弱みとは?
物件を実際に見なければ、正確な査定金額は出せません。買い手にとってプラスになる要素、もしくはマイナスになる要素は、良くも悪くも価格に影響します。価格決定の際に考慮すべき「システムでは算出できない強み・弱み」とは、たとえばこうしたものです。買い手にとってプラスになる要素(価格を高く設定できる)
この辺りの「生活に密着する部分」については、買い手が現地内覧時に最も感情的になる部分です。そのため、「・・・だから他と比べて価格が高い」「・・・だからやや安めにしている」という理由を、しっかり説明できるようにしておきましょう。また、これらの要素とは別で、買い手側に高く評価されやすい条件・逆に低く評価されやすい条件として、ぜひ覚えておいて欲しいことがあります。
- 室内の保存状態が良い
- リフォーム済みである
- 階下に住戸がない
- 前面道路の交通量が少ない
- 前面建物がなく開けている
- 間取り、構造に無駄がない
- マンションの収支状況が健全である
- 室内の保存状態が悪い
- 前面道路の交通量が多く、騒音がする
- 前面建物が近く、圧迫感がある
- 室内に梁が多く、デッドスペースが多い
- 故障している設備がある
- マンションの収支状況に懸念がある
高く評価されやすい要素(=買い手が「相場+α」のお金を出せる要素)
仮に、「買い手にとってマイナスになる要素」をもっていたとしても、挽回できるものもあります。買い手が現地を見学した際に感情的に揺さぶられるものがあれば、具体的な購入のお話に進みやすいのです。たとえば、こういったものです。- 「1Fだから暗いと思っていたけど実際見てみるとすごく日当たりが良い」
- 「築年数的にフルリフォームを覚悟していたけど、室内がとても綺麗なのでリフォームコストが浮きそう」
- 「北向きはどうかと思っていたけど、北向きだけ前面に建物がなくて開放的で気持ちが良い」
高く評価されにくい要素(=買い手が「相場+α」のお金は出さない要素)
反対に、売り手にとっての「お気に入りポイント」や「こだわった内装」などは、買い手に響かないこともあります。 よくあるのが、「数年前にフルリフォームをしたから、その分のコストも込みで高めに売り出したい」というご相談です。 この手の売り出し方は失敗するケースが多いのが特徴です。買い手にとっては、「リフォーム代も乗せるくらいならリフォーム前のものを安く買いたかったな・・・」「そもそも内装は自分たち好みにリフォームしたかったのに・・・」というマイナス評価に繋がる場合も少なくないのです。そのため売却時に高値で売れることを見込んでリフォームをすることは、避けた方がいいでしょう。買い手の「個別事情」によって高く売れるレアケース
また、こちらは売り手の戦略の話とは少々ズレますが、買い手の「個別事情」によって割高で成約をすることも稀にあります。 個別事情というのは、買い手が「どうしてもその物件を買わなければならない理由」のことを指します。例えば、こうした例です。- お子様の学校
- 賃貸の更新時期
- 実家近接