荻窪エリアの中古マンション市況|トレンド分析 “住宅購入市場のいま”

2024.03.15
荻窪エリアの中古マンション市況|トレンド分析 “住宅購入市場のいま”

いつどこで売り出されるかわからない中古マンション。
現在、どこのエリアでの売り出し物件数が多いのか。価格として手堅いのはどのエリアなのか・・etc.
住宅購入市場におけるトレンドを、毎回1エリアにフォーカスして数値ベースで考察します。
「今から買うべきエリア」を探している方はもちろん、「今購入を検討しているエリアを買うべきか」を考える参考値にもなるはず。

今回は、荻窪エリアをPICKUP。
駅周辺の賑やかな商店街と文化人が暮らした別荘地の歴史が共存するこのエリア。その不動産マーケットは今、どうなっているのか?
売り出し物件数と平米単価から分析してみます。

データで見る荻窪エリア

最高価格:1億1999万円 最低価格:800万円
平均価格帯:約5140万円
販売物件数:54
※2024年3月現在




↑ 平均価格と売出戸数




↑ 平均価格と平均平米単価


このエリアを一言で

👉売出物件数は少ない
👉物件面積は50〜60㎡台がメイン
👉売り出しは南荻窪より荻窪アドレスの方が多く、駅周辺に集積
👉平均平米単価は南荻窪の方が高い

今回は、杉並区の荻窪エリアをピックアップ。荻窪駅の南側に位置する荻窪・南荻窪の2アドレスで見てみた。荻窪駅(JR中央線、東京メトロ丸の内線)のほか、荻窪アドレスの東側の立地であれば、阿佐ヶ谷駅(JR中央・総武線とJR中央線快速)も利用できる。
 
◾️この街の歴史・街並み・特色
江戸時代には農村地帯であった荻窪エリア。「荻窪」の地名は、かつて一帯に荻(おぎ)が多く生えていたことに由来する。1891年に甲武鉄道荻窪駅(現JR荻窪駅)が開設され、1923年の関東大震災後に人が移り住むようになり宅地化が進んだ。1980年代初頭には「荻窪駅北口地区市街地再開発事業」によって商店街を前身とする駅前ショッピングセンター「タウンセブン」や駅ビル「ルミネ荻窪」が完成。2011年には荻窪駅北口駅前広場整備が完了し、現在の駅周辺に商業施設が集まる姿へと変貌を遂げた。また、荻窪駅の北側も含めた荻窪エリアは、井伏鱒二や太宰治、与謝野晶子といった文化人や音楽家が暮らしていた背景もあり、今も邸宅の跡地や記念館などが点在。大正から明治にかけて別荘地として人気となり「西の鎌倉、東の荻窪」とも呼ばれた。荻窪音楽祭など、クラシック音楽を楽しむ文化も根付いている。

◾️中古マンションの売り出し状況
本エリアの売出物件数は少ない。売り出しは南荻窪より荻窪アドレスの方が多く、駅周辺に集まっている(前掲のマップを参照)。これは荻窪駅周辺のみが商業地域・近隣商業地域・第2種住居地域として指定されており、それより南側は第1種低層住居専用地域に指定され戸建中心の街並みとなるため。物件面積は10〜80㎡台まで揃うが、50〜60㎡台の物件が中心。築10-30年は50㎡台以上しか売り出しがないため築10年未満の築浅物件よりも物件平均価格が高額となっている(前掲のグラフ参照)。築30年以降は平均平米単価が80万円/㎡台まで下がるが、以降は安定している。アドレス別の平均平米単価で比較してみると荻窪が約108万円/㎡、南荻窪が約78万円/㎡と、荻窪アドレスの方が高額。これは南荻窪の売り出しが築30年以上の築古物件のみであるため。

◾️今後の発展の見込み、再開発予定
杉並区は、「荻窪駅周辺まちづくり方針」を2017年4月に策定。この方針では荻窪駅を中心とする南北半径500mの範囲をベースに、荻窪駅周辺エリア・青梅街道北側エリア・駅南側エリアの3つに分けて、再開発が進められる予定である。駅前広場機能の充実、区内唯一のJR地上駅であることによる駅南北の商店街の分断、回遊性の不足の解消などをはじめ、「住宅都市杉並の芯として 歴史文化を礎ににぎわいと住環境が調和したまち」を掲げたまちづくり計画となっている。「荻窪の歴史・まち・人を想う15の提案 『住んでよし、訪れてよし』のためのプラン集」を策定。まちなかの何気ない場所でまちの歴史について触れられる機会をつくる「毎日荻窪の記憶」プラン、一般のお宅の車庫脇や商店街の店先など、ちょっとしたスペースに腰掛けられるものを置いてもらい、まち歩きや地域の人が買い物途中で休憩できるお休みどころを広げる「どうぞご自由にお掛けください 」プランなど、具体的な構想案が多数上がっている。荻窪には歴史的・文化的資源が多く集まる。その中でも国に指定されている史跡「荻外荘(てきがいそう)」を復元した「(仮称)荻外荘公園」が2024年12月に公開予定だ。

◾️この街の住みやすさ
東京メトロ丸の内線が始発駅である荻窪駅は、銀座駅やオフィス街の大手町駅まで約30分と乗り換えなしでアクセスできる。JR中央線を利用すれば新宿駅まで約11分、東京駅まで約25分と乗り換えなしで行くことができる。

荻窪駅北口側には駅直結のショッピング施設「ルミネ荻窪」があり、飲食店が充実しており地下1階にはスーパーの「ザ・ガーデン自由」がある。隣には、日用品店やインテリアショップ、書店など多くのお店が揃った「荻窪タウンセブン」がある。中には24時間営業のスーパー「西友荻窪店」も揃い、買い物は駅周辺で完結できる。荻窪駅から徒歩3分の場所にはスーパーの「ミニコープ荻窪店」がある。「荻窪すずらん通り商店街」、赤色のアーチが目印の「荻窪南口仲通り商店会」と2つの商店街がある。飲食店はもちろん書店や薬局、演劇・芝居が楽しめる「劇団だるま座」などエンターテイメントまで様々な店舗が軒を連ねる。荻窪駅北側には「荻窪白山通り商店会」があり、ボーリングが楽しめる「荻窪ボウル」やカラオケ、ゲームセンターなどエンターテイメント系のお店が集まる。荻窪駅周辺には、クラシック音楽を中心としたレコードが揃う中古レコード店「月光社」「名曲喫茶ミニヨン」など、音楽通に知られた名店も。荻窪は「荻窪ラーメン」という種別名もあるほど、ラーメンの聖地でもある。中でも「荻窪ラーメン御三家」とも呼ばれる「春木屋」「丸信」「丸福」の老舗ラーメン店は行列が絶えない人気店だ。

当エリアには自然豊かなスポットや公共施設、文化人の邸宅を跡地にした公園も点在する。荻窪駅から徒歩3分の場所には歯の神様のご利益で知られる「荻窪白山神社」があり、自然も感じることができる。荻窪駅の西口を出て徒歩5分歩いた場所にはコンサートホールの「杉並公会堂」があり、荻窪音楽際のイベントが開催される(大規模修繕工事のため、2024年1月9日~2024年8月31日迄全館休館)。荻窪駅から徒歩7分の場所には音楽評論家の大田黒元雄の屋敷跡地を回遊式日本庭園にした「大田黒公園」があり、大田黒が愛用していたピアノ等を記念館で見ることができるほか、秋になるとイチョウ並木など紅葉が楽しめる。荻窪駅から徒歩12分の場所には内閣総理大臣を3度務めた政治家・近衞文麿(このえふみまろ)の旧邸宅「荻外荘(てきがいそう)」が国の史跡に指定されている(2024年12月に区立公園として公開予定)。南荻窪には、かつて歌人の与謝野晶子夫婦が晩年を過ごした住居跡地に整備された公園「与謝野公園」がある。

荻窪駅は東京メトロ丸の内線の始発駅のため、電車が混み合う朝の時間帯でも通勤・通学しやすい。駅前商業ビルと商店街の使い分けもでき、買い物や外食先にも困らない。通勤路や散歩道で作家や音楽家が居を構えていた当時のまちの面影や歴史を感じることができる荻窪エリア。商店街など昔ながらの街並みが好きで買い物・外食の選択肢は豊富な方がいい、でも文化や歴史を日々の暮らしの中で感じられるような落ち着きのある街に住みたい。そんな方におすすめできるエリアだ。

エリア内のマンション・平米単価と販売戸数の推移

現時点で売り出し件数が多い中古マンションの平米単価と販売戸数の推移を見てみました。

築7年のシティテラス荻窪ブリーズコートは、2023年7月に平米単価114万円/㎡から徐々に上昇し、2024年2月に131万円/㎡、2024年3月現在は129万円/㎡に。築34年のルジェンテ・リベル荻窪は、2023年8月に平米単価70万円/㎡から2023年9月に76万円/㎡まで上昇。2023年12月以降2024年3月現在まで平米単価77.2万円/㎡に。築55年の秀和南荻窪レジデンスは、2023年2月に平米単価84万円/㎡から2023年6月までに77万円/㎡まで下落。その後緩やかに右肩下がりとなり、2024年1月には74万円/㎡まで下落。2024年3月現在は68万円/㎡に。

👉シティテラス荻窪ブリーズコート(総戸数125、2017年竣工)
👉ルジェンテ・リベル荻窪(総戸数11、1990年竣工)
👉秀和南荻窪レジデンス(総戸数37、1969年竣工)

気になるあのエリアの最新市況データを見る方法

連載「トレンド分析 “住宅購入市場のいま”」では、今回のように毎回1エリアをPICKUPして、その売り出し状況を深堀していきます。

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マンションジャーナル編集部

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