防災に強いマンション選びのためのチェックリスト【資産価値を守る】

2023.08.31
防災に強いマンション選びのためのチェックリスト【資産価値を守る】

中古マンションを選ぶ上で、ぜひともチェックしたいのが「防災関連情報」。いわゆるハザードマップや耐震に関わる情報です。とはいえ、調べる項目が多かったり、情報が集約されていなかったり、参照先として掲示されたURLのリンク切れが起こっていたり・・と、防災関連の情報収集は何かと負担が多く、煩雑になりがちです。

この記事では、マンション購入検討時にチェックしたい防災関連情報について、「これだけは」というものに絞り、主要なものをまとめて紹介します。

※情報は今後も適宜アップデート(更新・追加)していきます。
※本記事は東京都におけるマンション購入を主軸として想定しています。他都道府県に関しては、一部参考にしづらい項目を含みます。あらかじめご了承ください。

なぜ、マンション購入において防災関連情報の確認が必須なのか

これまでも住宅購入時に地震や台風などの災害に対する強度をチェックする必要性は唱えられてきました。しかし、近年増加傾向にある台風や大雨被害、今後30年以内の発生確率が70%と推定される「首都直下地震」など、災害リスクへの備えはますます重要度を増してきています。

中古マンションの購入を検討する人へのアンケート結果からも、防災の観点から不安を感じた物件の購入を見送った経験がある人が全体の半数以上(2人に1人)いた、というアンケート結果もあります。

>>アンケート結果詳細はこちら
「防災観点で難ありのマンションは資産価値が低下する!? 2人に1人が「購入をやめた」経験あり」

東京首都圏における中古マンション購入において、今後ますます「防災観点で懸念がないか」という点が資産価値を左右することになるでしょう。

災害リスクは、残念ながら「この一つだけ見ておけばOK」というものはありません。複数の要素を総合的に見て判断することが必要です。
最低限ご自身で確認・準備すべき項目は、大きく下記の3つに分けられます。

  • 水害へのリスク
  • 地震へのリスク
  • 災害時の個人ですべき対応策


これらに対して、「これだけは調べておきたい」項目リストを作ったものがこちらです。



では早速、各項目ごとに調べ方や情報参照先をご紹介していきます。

※各種地図はデータ読み込みに時間がかかることもあるため、気長に待ちましょう。
また、スマートフォンで確認できるものもありますが、効率性からもネット環境の整った場所でパソコン(デスクトップ)で閲覧することをおすすめします。情報量が多いためより広い画面で見る方がわかりやすいのと、また地図の凡例を合わせて見る際にそれらが別ウィンドウで開く場合もあるためです。

【1】「重ねるハザードマップ」で主な水害リスクを確認

まず確認したいのが、「ハザードマップ(被害予測地図)」です。ハザードマップとは、簡単にいえば災害発生時の被害状況を予測し、マップ上に落としたもの。「自然災害による被害の軽減や防災対策に使用する目的で、被災想定区域や避難場所・避難経路などの防災関係施設の位置などを表示した地図」と定義されています(国土交通省 国土地理院)。各自治体によって作成され、公開されています。

一口にハザードマップと言っても、洪水・土砂災害・高潮・津波・・・と複数種類あり、それぞれを探しにいくのは一苦労。自治体を跨いで物件を探している場合は、なおさらです。

そこでまずは、「重ねるハザードマップ」(国土交通省)を見てみましょう。さまざまな種類のハザードマップを一度に地図上に重ねて確認することができるため、効率的よくリスクをチェックできます。洪水・土砂災害・高潮・津波のリスク情報に加えて、余裕があれば道路防災情報や土地の特徴・成り立ちなども合わせて確認しましょう。

>>「重ねるハザードマップ」(国土交通省)

【2】「東京被害想定マップ」で液状化リスクを確認

次に、地震発生時の「液状化リスク」を調べます。液状化現象とは、地震発生時に地盤が液体状になる現象のこと。比重が重い建物が沈んだり傾いたりするほか、下水道のマンホールなどが浮き上がったりします。

使うのは、東京都が公開する「東京被害想定マップ」です。都心南部直下地震など、各種地震レベルごとのリスクをみることができます。

>>「東京被害想定マップ」(東京都)

なお、液状化については、東京都建設局による「東京の液状化予測図」でも確認できますが、「東京被害想定マップ」では直近の最も大きな懸念対象となる都心南部直下地震での被害状況が予測されているので、ここではこちらを参照することをおすすめします。

参考:液状化現象とは(東京都 建物における液状化対策ポータルサイト)

【3】「わがまちハザードマップ」でそれ以外のハザードマップを確認

次に見たいのは、「わがまちハザードマップ」。こちらも国土交通省が提供するものですが、各自治体のハザードマップへリンクするポータルサイトのようなものです。

市町村が法令に基づき作成・公開したハザードマップへリンクしています。「重ねるハザードマップ」には載っていない、自治体独自の防災情報を確認しましょう。

注意点として、「わがまちハザードマップ」はリンク切れを起こしていることがあります。その際には、直に検索をかけましょう。また、各自治体の独自防災マップを網羅できているわけではありません。広範囲で区をまたいで検討しているなどの場合は便利ですが、すでに特定の自治体に対して、前向きに検討を進めている方は、次のステップ【4】に直接進んでも良いでしょう。

【4】各自治体HPで自治体独自発信情報を確認

防災への意識が高い自治体は、独自ツールや資料を用意していることがあります。特定市区町村まで絞りこんだ人は、ぜひここまで踏み込んで調べてみましょう。

(ex.江東区「江東区洪水高潮ブックレット」や「江東区防災マップアプリ」)

また、かなり電子化が進んでいるものの、一部にはパンフレットや冊子など紙ベースの資料もある場合があります。その場合は、各自治体の防災関係の担当部署に問い合わせると安心です。

【5】現地見学時は「東京都防災アプリ」でその場で水害リスク確認

希望物件の内覧、現地周辺を見学してまわる際に、その場でマップを確認したくなったら、「東京都防災アプリ」が便利です。

GPS機能との連動により、現在地における水害リスク(河川の氾濫・高潮による浸水や土砂災害)を確認することができます。UIもわかりやすく、親しみやすいのが特徴です。

「東京都防災アプリ」は、他にも、防災の基礎知識など災害前・災害時に役立つコンテンツを閲覧できます。東京で住宅購入を検討している方であれば、入れておいて損はありません。

>>「東京都防災アプリ」(東京都)

【6】マンションの耐震基準を確認

地震への防災対策として建物の耐震性も必須確認事項です。

中古マンションの場合は、十分な耐震化がされているか否かが需要です。まずは築年数を確認しましょう。1981年6月1日以降に建築確認を受けた建物、いわゆる「新耐震」であるマンションであれば、震度6強〜7クラスの大地震でも倒壊しないとされています。

今後30年以内に70%の確率で発生すると推定されている首都直下地震の最大予想震度は、震度7。つまり新耐震のマンションであれば、耐えられる想定であることになります。都心南部直下地震において全壊すると言われている約8万棟の建物のうち約8割が、旧耐震基準の建物とされます

ここで注意したいのは、1981年竣工だった場合。建築確認から竣工までは期間があるため、1981年竣工のマンションだと新耐震ではない可能性があります。不明な場合は不動産仲介担当者に確認しましょう。また、万が一旧耐震であっても、耐震補強工事を行い新耐震設計基準を満たすとされる場合は、倒壊可能性は低くなります。

東京都では、耐震に関する相談窓口として「耐震化総合相談窓口」(公益財団法人 防災・建築まちづくりセンター)が設けられています。建物の種類によらず、耐震診断や耐震改修についてアドバイスを受けたり専門窓口の紹介も可能なので、困った時は相談してみるのも良いでしょう。

>>「耐震化総合相談窓口」(公益財団法人 防災・建築まちづくりセンター)

【7】市区町村の都市計画マスタープランを確認

地震発生時には派生的に火災が引き起こされる可能性があります。木造の建物が多く密集度も高い日本の市街地、いわゆる「木造住宅密集地域」は、一度火災が発生すると延焼によって被害が拡大しやすい地域です。東京都は大地震に対して被害を最小限に食い止めるため、防災都市づくり推進計画を掲げてこうした「木密地域」の整備を推進していきました。もしも木密地域が検討エリアにある場合は、今後の対策がとられているか、市区町村の都市計画マスタープランを確認してみましょう。市区町村の都市計画マスタープランは、各自治体ホームページで確認することができます。「自治体名×都市計画マスタープラン」でネット検索をかければ、すぐに見つかるはずです。

【おまけ】備えあれば憂いなし。さらに学びたい人向けの参考図書

ここまでくれば、必要な情報は最低限揃ったといえるでしょう。

基本的な考え方や用語についてしっかり理解したい、という方のために、最後に防災知識の基本が学べる参考サイトや書籍をご紹介します。

<災害時の個人ですべき対応策を学ぶ>

「東京被害想定マップ」(東京都)

年齢や家族構成、住まいの形式や住むエリア、状況などの諸条件に応じた取るべき行動や想定される被害状況を教えてくれます。

>>「東京被害想定マップ」(東京都)

「災害に対するご家庭での備え~これだけは準備しておこう!~」(首相官邸)

各家庭で準備すべき備蓄品や取り組むべき対策について、非常に簡潔にまとめてあります。まずは最低限のところから始めたい人には、ここからチェックすると良いでしょう。

>>「災害に対するご家庭での備え~これだけは準備しておこう!~」(首相官邸)

「防災体験学習(そなエリア東京)」

東京臨海広域防災公園内にある防災体験学習施設。ジオラマなどお子さんでも楽しく学べるようなミュージアム形式になっているので、ファミリーで意識を高めるのにぴったりです。

>>「防災体験学習(そなエリア東京)」

<関連知識の基本を学ぶ>

『住宅・不動産会社が知っておくべきハザードマップ活用 基礎知識』(不動産流通研究所)

不動産会社向けにハザードマップの見方、 説明の仕方を解説したテキストですが、イラストも多く一般の人でも非常にわかりやすい内容にまとまっています。ハザードマップの基本的な考え方、捉え方を知るのに最適。Kindle版もあります。

>>『住宅・不動産会社が知っておくべきハザードマップ活用 基礎知識』(不動産流通研究所)

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マンションジャーナル編集部

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