中古マンション購入で注意するべき「付帯設備表」「物件状況確認書」とは?
不動産の売買契約においては、いくつかの重要な書面があります。
非常に高額な商品であるため、署名・捺印が必要な書類の量も膨大となります。
その中でも、代表的な書類として「売買契約書」と「重要事項説明書」がありますが、この2つの書面の重要性については、その注意点が不動産サイトなどで紹介される事も多いことから、一般的にも広く認識されていると思います。
また、ほとんどの不動産会社(以下、業者と表記)で統一の書式・文言が採用されており、一定の信用性もあると言えるでしょう。
「売買契約書」はその名の通り、売主と買主間で合意した内容を記載しており、取引内容の概要を表す書面になります。
また、「重要事項説明書」は、当該取引において特に重要な項目(法規制やインフラ情報など)を抜粋した書面であり、契約時には宅建主任者との読み合わせが必須とされています。
しかし、この2つの書面ではカバーしきれない部分があります。
それは、「実際の物件の詳細な情報」の開示です。
当然ながら、その物件の平米数や築年数などの基本情報については、販売図面にも載っていますし、売買契約書と重要事項説明書にも記載されますが、より詳細な情報については、別添の書面に記載されています。
その別添の書面というのが「付帯設備表」と「物件状況確認書」と呼ばれるものです。
中古マンションにおいては、建物や部屋の経年劣化や摩耗なども伴うため、実はこの2つの書面が大変重要になってきます。
今回は、この2つの重要書面に焦点を当ててご紹介しますので、中古物件の売却・購入を検討されている方は是非参考にして頂ければと思います!
監修者:針山昌幸
1、付帯設備表と物件状況確認書について
付帯設備表と物件状況確認書とは?
冒頭でも述べた通り、物件のより詳細な情報についての内容が記載されているのが「付帯設備表」と「物件状況確認書」になります。
それぞれの違いとしては、「付帯設備表」は売買対象の部屋にある各設備の状況が記載されているもので、「物件状況確認書」は売買対象の物件それ自体の状況が記載されています。
詳しくは、次項でご紹介します。
特に、売主と買主の双方が個人間の売買取引の場合、売主は今までその部屋で暮らしてきたわけですから、何かしらの設備不良があっても何も不思議ではありませんし、築年数の古いマンションの場合、建物自体に不良があるケースもあります。
要は、売主側が把握している範囲で、懸念となる要素をすべて買主に開示するための書面であるわけです。
何故重要なのか
「付帯設備表」と「物件状況確認書」は、売買契約時に提示されるものですが、これは単に「不良があるかないかの確認」だけで済ますべきではありません。
というのも、あなたが実際に住み始めたところ、問題ないと聞いていた箇所に何かしらの不良が見つかった場合、「誰がどう責任を取るのか」という問題に発展するためです。
「物件状況確認書」の必要性
①不動産の売買契約では、売買契約締結時に売買物件がどのような状況であるか、またはどのような状態で買主に引き渡すかを明示する必要があるため。
②売買物件に瑕疵があれば、買主にあらかじめ説明する義務があるため。
③瑕疵には、物理的なものだけでなく、心理的なもの(事件、事故など)も該当するため、これらの重要な事実については、将来的なトラブル防止のために、事前に説明すべきであるため。
「付帯設備表」の必要性
①不動産の売買契約では、売買契約締結時に売買物件がどのような状況であるか、またはどのような状態で買主に引き渡すかを明示する必要があるため。
②売主は、「故障・不具合」欄に「有」とした設備においては修復義務を負わないが、「無」とした設備については使用可能な状態で引き渡す義務がある。また、「無」とした設備について引渡し完了日から7日以内に請求を受けた場合には、修復義務を負う。
③売主は買主に物件を引き渡すまでの期間、契約時の状態を保持する義務がある。
不具合のある建物、設備についてはどうなる?
不具合のある建物に関する保証については、「瑕疵担保責任」という考え方があります。
“ 瑕疵 “ とは “ 非常に大きな欠陥 “ を指し、大きな欠陥に関しては、売主が責任を負うわけです。
不動産の売買においては、売主からすると少しでも高額で物件を売りたいわけですから、欠陥などのマイナス要素は伝えたくないと思うのは当然のことです。
しかし、そうして伝えなかったことによって生じた被害を買主が被るのはおかしな話なので、買主保護の観点も含めて、「瑕疵担保責任」という形で、売主が負うべき責任として定めています。
瑕疵に該当する代表的なものは、下記が挙げられます。
- 雨漏り
- シロアリの被害
- 給排水管の腐食
“ 瑕疵 “ とは “ 非常に大きな欠陥 “ だと述べましたが、ではすべての欠陥を売主の責任とするのは正しいのでしょうか?
答えはNOです。
「欠陥工事によって建物が傾いている」「近くに大規模の産業廃棄物処理場があって臭気がキツイ」
ここまでの責任を売主に負わせるのは残酷ですね。
そのため、売主が責任を負うのは「隠れたる瑕疵」という範囲に限られます。
「隠れたる瑕疵」というのは、前項で紹介した「物件状況確認書」および「付帯設備表」において開示されていない内容のことです。
さらに、売買契約書には、売主が負担する瑕疵の範囲が定められます。
多くの場合、「雨漏り」「シロアリ被害」「給排水管の腐食」が売主の責任範囲とされ、これらの事象が起きた場合には、売主負担で修復する義務が発生しますが、それ以外は責任範囲外と考えます。
つまり、「売主も買主も契約時点で認識できていなかったもの」の中で、「売主の責任として定められている範囲」の瑕疵に限るわけですね。
売主が契約時に伝えて、買主が合意の上契約した内容は、そもそも瑕疵にはあたらない(買主への報告義務を果たしているため)ので、「付帯設備表」「物件状況確認書」はしっかりとチェックするようにしましょう。
2、付帯設備表に記載される項目について
付帯設備表には、「設備の名称」「設備の内容・機能」「設備の有無」「故障・不具合」「故障・不具合の具体的な内容」の項目があります。
どのような設備がついていて、不具合はあるのかどうかの報告書面になります。
設備は生活に直結するものですから、しっかりと目を通しましょう。
特にチェックすべきは、「故障・不具合」の有無ですね。
さて、では具体的に、付帯設備表に記載されている項目にはどのようなものがあるのでしょう。
Ⅰ.住宅設備機器の状態確認
- 給湯器、湯沸かし器(ガス、電化、灯油、太陽光)
- 浴槽
- オーブン(ガス、電機)
- 蓄熱暖房機
- 浴室乾燥機
- キッチンシンク
- 換気扇
- 食器洗浄機(乾燥機能)
- シャワー
- トイレ(暖房便座、洗浄機能)
- 洗面台
Ⅱ.電機関係の状態確認
- 照明器具
- 冷暖房機具
- TVアンテナ
- インターホン
- 外灯
Ⅲ.その他の箇所(室内)
- シューズボックス
- 収納戸棚
- 床下収納
- カーテンレール
- カーテン、ブラインド、アコーディオンカーテン
- 網戸
- シャッター、雨戸
- 畳、ふすま、障子
- カーペット(敷き込み)
Ⅳ.その他の箇所(屋外)
- 物置
- 門扉、フェンス
- 車庫、カーポート
- 庭木、庭石、植栽
【付帯設備表フォーマット】
あくまでも「付帯設備表」は「どんな設備があって、それが壊れているかどうか」を報告する書面ですから、ここで故障とされている設備を売主がすべて修理してくれるわけではありませんので、注意が必要です。
3、物件状況確認書に記載される項目について
次に、「物件状況確認書」について見てみましょう。
こちらは、その物件の情報と周辺環境などについて記載されています。
Ⅰ.すべての物件に共通する告知事項
- 土地・建物に関する被害、不具合、障害となる事柄
- 過去の補修・修繕の履歴
- 周辺環境に関する事(騒音、振動、臭気、嫌悪施設の有無)
- 土壌汚染の可能性
- 近隣の建築計画
- 電波障害の有無
- 近隣との申し合わせ事項(約束事)
- その他(事件・事故・火災等)
- 建築・修繕・調査に関する資料の有無
Ⅱ.土地建物・土地に関する告知事項
- 土地境界に関して把握している事
- シロアリ・雨漏りの履歴
- アスベスト使用の有無、または調査の履歴
- 増改築の有無
- 配管に関して把握している事
- 耐震診断の履歴
- 地盤沈下、軟弱地盤の認識
- 物件内の残存物の有無
Ⅲ.マンションに関する告知事項
- 管理費・修繕積立金等の変更予定
- 大規模修繕の予定
- 給排水管の故障
- 漏水の履歴
【物件状況確認書フォーマット】
4、付帯設備表、物件状況確認書を受け取ったら?
「付帯設備表」および「物件状況確認書」を受け取るタイミングは “ 売買契約時 “ です。
重要事項説明書の読み合わせが終わったタイミングで、売主側から上図のような書面を提示され、確認した証明として署名をし、控えを1部持ち帰ることになります。
設備等に本当に不備がないか、時間をかけて確認できるのは実際に入居した後になります。
しかも、個人の売主が相手の場合、設備保証の期間は一週間ほどですので、意外と時間がないのです。
入居して一週間というと、引越し作業や仕事などを考えると、隅々まで確認できないケースも想定されます。
そこで、『売買契約後の再内覧』を是非実施してほしいと思います。
売買契約が終わってからあまり日を空けず、「付帯設備表」と「物件状況確認書」を持って再内覧をすることで、売主側から伝え聞いた内容が正しいかどうか(本当に故障していない?どんな状況?)をご自身の目で確認して頂きたいのです。
ただし、売主が現在も住んでいる居住中の物件の場合は、売主側の都合もあるので、そこは調整が必要です。
空室の場合は、仲介会社の担当者に依頼すれば、すぐに再内覧が出来るはずです。
5、設備保証の保証期間に要注意!
新築住宅の瑕疵担保責任の期間が10年間と非常に長いのに比べ、中古住宅は最低2年間と決められています。
経年劣化や維持管理が新築よりもデリケートな中古物件であるにも関わらず、新築よりも瑕疵担保責任の期間が圧倒的に短いのです。
さらに、設備保証に関しては、引渡し後7日間と、これまた非常に短いのです。
設備保証も瑕疵担保責任も、起算日が引渡し日となっていますが、引渡し日前後は引越しや仕事が重なり、やることが多いため、非常にバタバタします。
また、多くの設備がある中で、普通に生活しているだけでは、そもそも不備があるか分からない(=設備をすべて使えない)こともあるでしょう。
まずは設備保証の期間を把握した上で、どの設備を確認すればいいのか、自分の中で整理しておくだけでも違うと思います。
併せて、前項で述べたように、売買契約後に再内覧を一度行えば、設備の仕様や場所などが把握できるので、いざ入居となっても慌てることなくチェック出来るはずです。
6、まとめ
《付帯設備表》
- 付帯設備は、売主から故障している報告がないものに限り、売主負担の保証となる。
- 設備保証の期間は、入居後一週間。
- 一週間を過ぎた後の設備不良発覚については、売主に負担義務はない。
《物件状況確認書》
- 売主との間で合意した「瑕疵の範囲」において、売主は責任を負う。
- 「雨漏り」「給排水管」については、入居後に確認しておく。
いかがでしたか?
「付帯設備表」と「物件状況確認書」は付属資料の一つと、軽く見てはいけません。
契約書と重要事項説明書と一緒に渡されるため、何となく軽視してしまう人が多いように感じます。
今後の生活に深く関わってくることですから、念入りにチェックするようにしましょう。
「こういう場合はどうなるか?」など、売買契約の場で確認しておくことでリスクヘッジに繋がります。
快適な新生活を送るために、ぜひチェックしてみてくださいね。
マンションジャーナル編集部
「Housmart(ハウスマート)」が、購入や売却に必要な基礎知識・ノウハウ、資産価値の高い中古マンションの物件情報詳細、ディベロッパーや街などの不動産情報をお届けします。