中古マンションは購入するべきか賃貸するべきか?
2017.07.15
私は賃貸管理会社を営んでいますが、2~3年で物件を購入されて転居される方もいらっしゃる一方で、賃貸に結婚のタイミングでお住まいになり、子供が産まれても同じ間取りで住み続けているお客様もいらっしゃいます。中にはそのマンションの新築時から30年以上お住まいになられている方も!この記事では
- 購入と賃貸 それぞれのメリット・デメリット
- 50年間でかかる住まいの費用
監修者:針山昌幸
購入と賃貸 それぞれのメリット・デメリット
購入にしろ、賃貸にしろ、どちらにもメリットとデメリットがあります。
メリット |
デメリット |
|
購 入 |
|
|
賃 貸 |
|
|
購入のメリット
①室内におけるリフォームや間取りの変更を自由にすることができます。
購入した場合、専有部分である部屋の室内に関しては、リフォームにしても間取り変更するにしても自由です。子供が家を巣立って夫婦2人になった際に、2人の生活に合わせた間取りに変更することも可能です。マンションの場合は、管理組合に届け出が必要になります。②賃貸よりも広いところに住むことができます。
賃貸の場合、利回りを重視してプランニングされるので2LDKまでの物件が多く供給される傾向にあります。そのため、70㎡以上や3LDK以上の物件が比較的少なくなっています。一方で分譲されたものは、ファミリー向けの供給が多いので、選択肢が豊富です。③仕様や設備・共用施設が充実しています
賃貸は、室内の仕様・設備は分譲のものに比べて見劣りするのが一般的です。フローリングや扉をはじめ、キッチンや洗面台等、分譲の方が質が高いです。また総戸数の多いマンションの場合、共用施設も充実しており、マンション内にパーティルームやゲストルーム・ジム等もあります。購入のデメリット
①自己資金が少ない場合、トータルで支払う金額が多くなります
新築マンションの販売をしていた際、ローンの返済がギリギリのお客様でも購入していく光景を目の当たりにしました。毎月の返済には金利が上乗せされています。今は低水準ですが、今後どうなっていくかは分かりません。子供がいた場合は教育費も発生していきますから、住居以外の費用で将来的にどのくらい必要になるかを含めて考えていかなければなりません。適切な資金計画が大切です。自己資金がなく全額ローンで組む方もいらっしゃいますが、慎重に決断する必要があります。②すぐに現金化することが難しい場合があります
転職・退職・病気等でローンの返済が難しくなった・離婚した等、売却をなるべく早めにしたい状況に置かれることもないとは言えません。ローンの残額が売却額を上回っている場合、その差額分を現金で返済することが出来ればよいのですが、任意売却や競売の恐れも。現金化出来ないどころか、負債を抱え続ける危険性もあります。住宅ローンが残っている間は、まだ自身の「資産」ではないことを認識することが大切です。③マンション全体のことに関しても責任をもつ必要があります
部屋の中で設備の不良があった場合の修理等はすべて自身の費用負担になります。また、マンションの場合修繕積立金が毎月発生するように、共用部分の修繕も自分たちのお金で行うことになります。大規模修繕の際、今まで貯めた積立金だけでは足りない場合は、費用が追加発生することもあります。管理会社任せにするのではなく長期修繕計画をチェックし、適切なマンション管理をしていくことが大切です。賃貸のメリット
①お得な賃貸物件が増加傾向にあります
賃貸物件は供給過多のため、15年以上の物件は賃料が抑えられている傾向にあります。また以前と比べて、敷金1ヶ月礼金0ヶ月の物件も多くなっており、初期費用を抑えることも可能です。②家族構成に合わせて引っ越すことも可能です
夫婦2人の場合は別として、同じ家族構成で住んでいる期間は意外に短いものです。子供が産まれてから家族3~4人で住む期間は平均して20年強ではないでしょうか。賃貸であれば、柔軟に家族構成の変化に対応することができます。③設備の交換はオーナーさんです
賃貸の設備交換や修理はオーナーさんや管理会社に頼むことになります。経年劣化によるものの場合、費用負担はオーナーさんが行います。賃貸のデメリット
①高齢者の場合、住む場所を探すのに一苦労する可能性もあります
賃貸を高齢者が借りる場合、現状においては近隣に子供や身内がいないとなかなか審査が厳しく、借りることのできる物件が限られる場合があります。オーナーさんの意志で建て替えや取り壊しが決まるため、築年数が経っている物件の場合、6か月前に通知がきて引っ越しを強いられる場合もあります。物件に空室が多い場合や修繕をあまり施していない物件は、建て替えの可能性もあるので注意したほうがよいでしょう。②更新の度に更新料が必要になります
一般的に2年に1度更新があり、更新料が発生します。以前は1ヶ月分の賃料でしたが、更新料が2分の1以下であるものも増えてきました。URなど更新料が発生しない物件もあるので、そのようなところを選ぶのも良いでしょう。③自由にリフォームや間取りを変えることができません
壁紙を変更したり戸棚をつけたりといったDIYがOKな物件も最近出てきましたが、基本的に賃貸の物件は部屋のリフォーム等を自身で勝手に行うことはできません。そのため壁紙が多少汚くなっても、そのまま生活をされる方が多いです。退去時にクリーニング代金を請求される場合もありますが、大体賃料1か月分以内におさまります。煙草を室内で吸われた場合やペットを飼育していた場合は、修繕の実費が請求されることもあります。50年間でかかる住まいの費用
購入の方が自分の資産になるしお得だと思っている方もいらっしゃるかも知れませんが、購入した場合にかかる金額と賃貸で払い続ける金額を比較したことはありますか?ある地域をモデルとし、そのエリアで4人の家族が購入する場合と生涯賃貸に住み続ける場合、50年間で費用がどのくらいかかるのかシミュレーションをしてみましょう。住居費用は、毎月15万円負担出来ると仮定します。購入を選択した場合
70㎡ 3LDK 4,600万円の物件を、金利1%で最長35年間の住宅ローンを全額分組んで購入したと仮定します。毎月の住宅ローン返済が約13万円で、最終的に総額約5,450万円の返済となります。管理費・修繕積立金が月2万円とし、リノベーションを1度と給湯器・クーラー・照明器具の設備交換を15年に1度行うものとします。(リフォーム等の費用は経験上のあくまでも目安金額で、内容により大きく異なります。)住宅ローン返済総額 5,450万円(金利1% 35年ローン)管理費・修繕積立金 1,200万円(月2万円×12ヶ月×50年)リノベーション等費用 1,000万円 トータル 7,650万円なお、金利が2%の場合は、毎月のローン返済が15万円になり、返済総額も6,600万円になります。これとは別に固定資産税と都市計画税が発生します。またマンションの場合、建替えをする場合には建替え費用を負担することになります。戸建てに関しては2世帯にする以外は建替えをするよりもリノベーションをされる方が多くいらっしゃいます。生涯賃貸を選択した場合
賃貸でもずっと同じ広さの物件に子供が産まれても住み続けることは可能ですが、今回は住み替える場合を考慮して試算します。購入の場合も購入時の初期費用は含めていないことから、敷金礼金はかからないものとします。更新料は2年に1度、1/2ヶ月発生するものとします。【子どもが小さい期間 2LDK(10年)】賃料 1,440万円(12万円×12ヶ月×10年)更新料 20万円(5万円×更新4回)【3LDKへの住み替え(12年)】賃料 2,160万円(賃料15万円×12ヶ月×12年)更新料 40万円(8万円×更新5回)【夫婦2人 2LDK(28年)】賃料 3,360万円(賃料10万円×12ヶ月×28年)更新 65万円(5万円×更新13回) トータル 7,085万円このシミュレーションから、以下のことが見えてきます。- 金利や選択する物件のグレードにもよって異なってきますが、賃貸も購入も住宅にかかる費用はあまり変わりません。しかし、賃料が高額であった場合、同じ賃料を賃貸で支払い続けるのは、もったいないかも知れません。また賃貸は仕事を退職したあとも、毎月の賃料が発生することになります。
- 購入の場合は金利分や、管理費・修繕積立金の負担が大きいので、賃貸と比較して費用は発生しますが、資産が残ります。住宅ローンの残額が売却額を上回っている場合は難しいですが、住宅ローンを完済したあとは、現金化することも可能です。
こんな人は購入がお勧めです
資産を持ちたい方や安心したい方
賃料を長年払ってもその物件が自身の資産になることはありません。自宅を売却して老人ホームに等入居される方もいらっしゃいます。また住宅ローンを組むと団体信用保険に加入するため、万が一購入者が亡くなった場合、その後家族がローンに苦しむことはありません。しかし、病気の場合は適用されないため、注意が必要です。老後も賃貸は不安
現金で一括購入する場合は例外として、高齢になってローンを組む場合、実際に支払える金額年数も限られるため、ローンを組める金額もその分少なくなります。いつか購入したいと思っている場合は働いている間にローンを返済できるよう逆算して購入することが大切です。こんな人は賃貸がお勧めです
単身者や自営業の方
賃料や場所が自由に変えることができるため、自身のその時の状況に合わせて柔軟に対応することができます。経費で落とすこともできるので、賃貸を選択する方もいらっしゃいます。親から不動産の相続を受ける予定
親の住まいを相続したり、いずれ2世帯で住む場合は、それまでの期間賃貸を選択しても良いでしょう。また、いずれ地元でUターン就職を考えている人も同様でしょう。転勤の可能性がある場合はどちらにするかなかなか判断が難しいです。転勤中、賃貸に出して収支が合う物件の場合は購入してもよいと思います。その場合、賃料は低めに見積もって借入額とのバランスを見たほうが良いでしょう。また賃貸中も管理費・修繕積立金がかかるのでそれも含めて計算しましょう。なお、10年の間に2~3組以上は借り手が変わる可能性があります。部屋の状態にもよりますが、借り手が変わるたびに、クリーニングやリフォーム費が必要になってきます。また、使用の仕方が人によって様々なので部屋が傷みやすいリスクはあるでしょう。自分たちが住む際に設備を交換するものも出てきます。まとめ
購入するか賃貸するかは、自身の現在の状況だけでなく、将来のプランニングも考慮して判断する必要があるといえるでしょう。この記事を参考に、ご自身・ご家族にとってより良い選択をしていただければ幸いです。株式会社Housmart
マンションジャーナル編集部
マンションジャーナル編集部
「Housmart(ハウスマート)」が、購入や売却に必要な基礎知識・ノウハウ、資産価値の高い中古マンションの物件情報詳細、ディベロッパーや街などの不動産情報をお届けします。