フラット35、結局どの金融機関がお得なの?

2017.07.21
フラット35、結局どの金融機関がお得なの?
最近目にする機会が多くなった「フラット35」。「ずっと変わらない安心」というキャッチコピーを聞いたことがある人も多いのでは? フラット35は、そのコピー通り「全期間固定」が特徴の商品なのですが、実際は金融機関によってそのサービスは千差万別。この記事では、フラット35の仕組みをおさらいしつつ、金融機関ごとの具体的な差を比較します。

監修者:針山昌幸

針山昌幸 プロフィール写真

株式会社Housmart 代表取締役
宅地建物取引士・損害保険募集人資格
『中古マンション 本当にかしこい買い方・選び方』
(Amazonランキング・ベストセラー1位)

フラット35ってどんな仕組み?

まずフラット35は、窓口になる民間の金融機関を通して「独立行政法人住宅金融支援機構(前身は住宅金融公庫)」というところから受ける融資です。住宅金融支援機構は、財源として住宅ローンの債権を「証券化」して、投資家から資金を調達する方法を取っています。債務者が返済不能になった場合のリスクは住宅金融支援機構が負うため、投資家も窓口の金融機関も安心して取引が出来るという仕組みで成り立っています。そのため基準の金利に関しても、取扱い金融機関ではなく住宅金融支援機構が決定しており、各取扱金融機関に多少の差はありますが金利が倍違うということはありません。差があるとすれば、金利ではなく事務手数料の方でしょう。

事務手数料と保証料

フラット35を利用するためには、事務手数料がかかります。これは都市銀行や信用金庫でも同様にかかるものですが、一番の大きな違いは金額です。都市銀行等の事務手数料は、だいたい3万円+消費税というのが一般的です。フラット35の場合、その事務手数料が「融資金額の〇%」(1%~2%の間が多い)という形でかかります。これは取扱い金融機関によって決まります。それなら都市銀行等の方がお得じゃないか!と思うかもしれませんが、実は都市銀行等は事務手数料以外に「保証料」というお金を取ります。この「保証料」というのは借入年数によって金額が違いますが、35年ローンの場合「融資金額100万円あたり20,610円前後」が目安です。フラット35にはこれはありません。事務手数料でとるか、保証料でとるかという点が違うのみで、実は初期費用としてはあまり大きな違いはありません。ではなぜ、名目が違うのか。それは用途が違うからです。「保証料」は万が一住宅ローンの返済が滞ったときに保証会社に肩代わりしてもらうための保険金のような扱いです。そのため、繰り上げ返済や短期間で完済をした場合、割戻しがあります。事務手数料は読んで字のごとく「手数料」なので、繰り上げ返済をしようが5年で完済しようが一切戻ってきません。その点は注意が必要です。

フラット35は「携帯電話」に似ている

ここまで色々読んでみたもののなんだか難しいなという方のために、身近なもので例えてみましょう。それは「携帯電話」です。例えば□□社が出しているスマートフォンAという商品があったとします。これは□□社が発売した時点で販売価格は〇万円と決まっています。でも、契約する電話会社によって販売価格が違っていたり、手数料が違っていたり、キャンペーンがあったり……そんな経験、ありませんか?フラット35に置き換えると「□□社」=「住宅金融支援機構」、「スマートフォンA」=「フラット35」、「販売価格」=「金利」、「契約する電話会社」=「取扱金融機関」となります。

代表的な5社を比較

フラット35取扱金融機関は平成29年7月現在、全国で328社(住宅金融支援機構ホームページ参照)あります。「えー!そんなにたくさんあるの!?いったいどこを選べばいいの?」と迷ってしまう方も多いと思いますので、実際に5社を例に挙げてご説明いたします。

1.楽天銀行

  • 店舗数⇒0 インターネットのみなので無し
  • 住宅ローンセンター⇒2 京都と福岡県にあるが、こちらも店舗ではなく事務所としての扱い。
  • 営業時間⇒AM9:00~PM10:00(土日も可)
  • 相談のしやすさ⇒★★★ 実店舗がなく、オンラインでの相談のみなのでパソコン利用が苦ではない方、忙しい方には向いているかと思います。
  • 審査スピード⇒★★★★ 事前審査最短翌日、本審査7~14日。手続きはすべて自分でインターネットと郵送で行います。
  • 商品&金利⇒★★★★★ 金利と事務手数料ダントツに安いのが魅力。また新規、借り換え、つなぎ融資、併せ融資、フラット35S等々オールマイティーに取扱可能です。
  • サービス⇒★★★★★ 楽天銀行の口座開設をすれば、事務手数料がさらに安くなったり、ATMの利用手数料や他行への振込が数回無料になったり等特典もたくさんあります。
ご存知の方も多い「楽天銀行」。こちらもフラット35取り扱いを行っています。フラット35で人気の2社のうちの一つです。何よりも金利と事務手数料が安いというのが一番ではないでしょうか。インターネット上にて全て自分で手続きをしなければならない分、手間は増えますがその分のメリットも多いのが魅力です。

2.ARUHI

  • 店舗数⇒123店舗 店舗数はダントツです。
  • 住宅ローンセンター⇒1 東京都にありますが、ARUHIの場合はどこもローンセンターと変わりません。
  • 営業時間⇒AM9:00~PM18:00 各店舗によって定休日等に違いがあります。オンライン相談は22時まで可能です。(最終受付は20時)
  • 相談のしやすさ⇒★★★★★ 店舗数が多く、対面で細かいことも相談しやすいのがARUHIの最大の魅力です。
  • 審査スピード⇒★★★★★ 事前審査最短翌日、本審査最短3日。基本は対面での手続きになります。
  • 商品&金利⇒★★★★ 金利は安いが、事務手数料が高めです。また新規、借り換え、つなぎ融資、併せ融資、フラット35S等々オールマイティーに取扱可能です。
  • サービス⇒★★★★ さまざまな企業(家電・インテリア・エステ・飲食店等々)と提携しているので、提携先のサービスや商品が優待価格で利用できます。
フラット35のシェアが7年連続NO.1であるARUHI(旧SBIモーゲージ)。以前はシェアが25%を超えていたのですが、楽天銀行等の対抗により2016年に21.9%まで下落。それでもフラット35利用者の5人に一人はARUHI利用です。事務手数料が高めなのが痛い所ですが、やはり実際の店舗に行って、担当者の方と細かく資金相談や資金計画が立てられるというところが一番のメリットです。

3.住信SBIネット銀行

  • 店舗数⇒4店舗
  1. 新宿店
  2. 池袋ローンプラザ店
  3. 大手町ローンプラザ店
  4. 立川店(3/29にオープン致しました)
  • 相談のしやすさ⇒★★★★ 上記の店舗で対面相談されるか、インターネットないしは電話での相談となります。
  • 審査スピード⇒★★ 事前審査3日、その後2日以内に本審査の書類が郵送とのことなので、ある程度時間を要すると思われます。
  • 商品&金利⇒★★★★ 金利は安く、事務手数料は標準的です。また新規、借り換え、併せ融資(昨年からパッケージ商品として取り扱い開始)、フラット35Sが取扱可能ですがつなぎ融資はできません。
  • サービス⇒★★★★ ATMの引き出し手数料や振込手数料が数回無料になるのは楽天銀行と同じですが、一番は全疾病特約付きの団体信用生命保険が他行よりも割安(金利上乗せ無し)で入れることです。
比較的後発でフラット35の取り扱いを始めた住信SBIネット銀行。金利は楽天銀行・ARUHIと変わらず、事務手数料は2社の中間です。フラットはもちろんですがMR住宅ローンという自社商品の方が低金利なので、楽天銀行やARUHIに比べるとやや劣るイメージがあります。ただ、サービスの所でも記載した通り、全疾病の団体信用生命保険が割安で入れるので、先々の健康面に心配のある方はここを選んでもいいかと思います。

4. 日本住宅ローン

  • 店舗数⇒? ウェブサイト上にも記載がないので、店舗展開はしていないようです。
  • 住宅ローンセンター⇒0 ローンセンターという形のものは設けていません。
  • 営業時間⇒AM9:00~PM17:00 店舗が無い為、インターネットまたは電話受付です。上記は電話受付の時間です。
  • 相談のしやすさ⇒★ 電話やインターネットでの資料請求からスタート、また営業時間が限られているため相談はしにくいかもしれません。
  • 審査スピード⇒★ 審査スピードを売りにしているわけではありませんので、特別速いということはなさそうです。
  • 商品&金利⇒★★ 特定のハウスメーカーで戸建を建築する人は金利が下がりますが、トータルで考えても他行より安いということはありません。新規、借り換え、つなぎ融資、併せ融資、フラット35S等々オールマイティーに取扱可能です。
  • サービス⇒★★ 日本で初めて「電子署名」制度を導入しています。それ以外は特段目立ったサービスはありません。
日本住宅ローンは「積水ハウス」「大和ハウス工業」「住友林業」「セキスイハイム」「日立キャピタル」の5社共同の出資で誕生した住宅ローン会社です。そのため日立キャピタルを除く4つのハウスメーカーで家を建てる方以外には目立ったメリットはありません。また、一見すると事務手数料が格段に安く見えますが、「特約手数料」という名目でしっかり取っているので注意が必要です。

5.財形住宅金融

  • 店舗数⇒5店舗 各主要都市に1店舗ずつあるイメージです。
  • 住宅ローンセンター⇒0 各支店が支社となっている為住宅ローンセンターを個別には設けていません。
  • 営業時間⇒AM9:00~PM20:00 平日のみの対応なので注意が必要です。
  • 相談のしやすさ⇒★★★★ 店舗は少ないですが、対面で細かいことも相談しやすく、夜も遅くまで対応しているので安心です。
  • 審査スピード⇒★★★★★ 事前審査1~2日。本審査は記載がないため分かりませんが、スピードを売りにしているわけではないので一般的な7~14日ではないかと思います。
  • 商品&金利⇒★★★★★ 金利は安く、事務手数料も安いのは魅力的です。(楽天銀行と同じ金利と事務手数料)
  • サービス⇒★ サービスについて特別な売りはありません。
最後は財形住宅金融です。ここはそもそも勤務先や所属団体が「財形住宅金融と提携あるいは出資」していないと使えません。それ以外は他と変わりませんので、金利や事務手数料の面からみると楽天銀行との勝負になるでしょうか。対面で相談したい、でも事務手数料は安くしたい、会社が提携しているという方にはこちらがおすすめです。それぞれにメリット・デメリットがあり、また手続きの向き・不向きもあります。金利はどこも大きな差はないので、事務手数料と手続きのしやすさで決めていくのが良いでしょう。

そもそもフラット35のメリットって?

さて、ここまではフラット35について、そしてフラット35を取り扱う金融機関の比較をして参りました。ですがもっと根本的な話として、「民間金融機関の住宅ローン」と「フラット35」、結局のところどちらがいいの?という疑問を「審査基準」「諸費用」「新規借り入れと借り換え」の3つのポイントからお答えします。また、あくまでフラット35との比較のため、民間金融機関の住宅ローンは超長期固定に限定してお話しします。

1.審査基準は?どちらが通りやすい?

これは圧倒的にフラット35が有利です。フラット35は雇用形態に制限がありませんが、原則正社員で3年以上勤務(会社経営者や個人事業主は黒字で3年以上安定した収入が条件です)会社規模によっては勤続1年以上、あるいは契約社員でも組めるケースもあります。ただ、民間ローンはパートやアルバイトの方はローンが組めません。(収入合算も厳しいです。)また、職種や業種、会社規模、個人事業主の方は申告内容によっても通りやすい、通りにくいがあるのが民間住宅ローンのデメリットです。それと違いフラット35は勤続1ヶ月でも審査基準に乗ってきます。もちろんパートやアルバイトの方も問題ありません。要はいくら収入を得て、いくら税金を納めているかというところがポイントになります。ですので、この項目においてはフラット35に分があります。

2.諸費用

一言に「諸費用」と言っても、さまざまな項目があります。まずはその項目についてご説明します。

1.印紙代

金銭消費貸借契約書(要は住宅ローンの契約書)に貼る印紙代です。これは税金のため、民間ローン、フラット35、ともにかかる費用は同じです。

2.事務手数料

その名の通りの事務手数料です。これは最初に記述がある通り、民間ローンは基本32,400円(税込)、フラット35は融資額の〇%という形なので、民間ローンに分があります。

3.保証料

これも最初の方で記載したとおり、万が一返済が滞ってしまった際の保険金のような扱いです。フラット35にはありませんが民間ローンは先払いするか、金利に上乗せになります。ただし、繰り上げ返済や期限前に全額完済すれば割戻しがありますので掛け捨てではありません。ですので、事務手数料よりもトータルで考えるとお得になるケースが多いです。

4.団体信用生命保険料

住宅ローンを組んでいる本人が万が一、死亡や重度障害(失明、手足の一部が欠損等)になった場合、ローンの返済が無くなるという保険の料金です。これに関しては民間ローンに分があるといえます。まず、民間ローンは住宅ローン金利にこの保険料が含まれています。そしてフラット35は残債に対して1年ごと(窓口金融機関によっては月ごと)に支払いです。1000万円当たり35,800円の支払いになり、この費用を金利に換算すると0.3%相当と言われています。例えば、平成29年7月の都市銀行(三菱UFJ銀行)の超長期固定[31~35年]は1.33%。一方楽天銀行フラット35[21~35年]は1.09%。一見フラット35の方が安く感じますが、団体信用生命保険料を金利換算すると・・・1.39%。つまり、都市銀行の方が安い計算になります。このように目に見える金利だけが全てではないので、注意が必要です。

5.繰り上げ返済手数料

住宅ローンの一部または全部を繰り上げて返済するときにかかる手数料のことです。まず、フラット35は一部、全額繰り上げ返済手数料ともにかかりません。ただし、併せローンを使う方はその部分で手数料がかかることがあるので注意してください。民間ローンは金融機関によって様々ですが、先ほども話に出した都市銀行(三菱UFJ銀行)は、一部繰り上げ返済はインターネットバンキングから行えば無料です。以前は繰り上げ返済手数料は無料で、先払いしている保証料を戻してもらうのに「戻し保証料の手数料」という名目で費用がかかっていましたが、平成29年5月よりその費用も無料になりました。ただ、ほかの民間ローンはかかるケースが圧倒的なので、この項目についてはフラット35に分がありますね。

6.その他

どちらか一方にしかかからない諸経費もあります。まず、民間住宅ローンの「固定金利手数料」約1万円。これはかかるケースがほとんどです。続いてフラット35の「適合証明書取得費」約0~10万円。フラット35を使うために、適合証明書という書類を発行する必要があります。有資格者である建築士や検査機関に建物を診断してもらいます。中古だと3~6万、新築だと建物価格に含まれているあるいは別途10万円ほどかかるケースもあります。そしてフラット35にはもう一つ「確定日付料」700円。公証役場で確定日付(証書が作成された日を証明するもの)をもらうための費用です。細かい費用ですが、フラット35にしかかからないものなので、忘れないように計算に入れておきましょう。さて、諸費用の項目を総合して考えると、繰り上げ返済をしていきたい方は結果的に民間ローンの方がお得であると言えますね。事務手数料は戻ってきませんが、保証料は割り戻しがあります。また、団体信用生命保険料を考えると、トータル的に考えて民間ローンに分があります。

新規借り入れと借り換えの場合はどうなるの?

最後は「新規借り入れと借り換え」の場合です。

新規借り入れ

これはフラット35Sが使える物件かどうか、繰り上げ返済の予定はどうかで変わってきます。先ほど団体信用生命保険は金利0.3%相当であるという話をしましたが、フラット35S適応物件は借り入れ当初5年または10年0.3%の金利優遇があります。その為、優遇期間中は団体信用生命保険料分が浮く形になります。また、繰り上げ返済をどんどんしていくのであれば、事務手数料として払うより、保証料で払った方がお得でしょう。

借り換え

これは先ほど話に出た「フラット35S」は使えません。そのため借り換えに関して言えば、借り換えの諸費用を考慮しても、民間ローンに借り換えた方がお得になるケースがほとんどです。ただ、団体信用生命保険をつけなくてもいいという方はフラット35の方がお得になると思いますので、その点はケースバイケースになります。

まとめ

今回はフラット35について掘り下げていきました。住宅ローンは資金計画によって適材適所があります。必ずしもどれがお得!と明言できるものではありません。そのため、大まかでも返済計画を立てたうえで借り入れを行うことをおすすめします。お借入れの額が大きくなるため、数万円の差では済まないですからね。仮にトータルで見てお得であっても、月々返済で無理はしない!これを心に留めて、様々な金融機関を比較検討してください。
株式会社Housmart
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マンションジャーナル編集部

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