長期優良住宅のメリットとデメリットって?

2017.09.01
長期優良住宅のメリットとデメリットって?
「長期優良住宅」という言葉をご存知でしょうか。この言葉が誕生したのは2009年9月のことです。長期優良住宅には、税制面や住宅ローンの金利面で一般の住宅よりも優位になる特例措置が設けられており、2015年度には約104,000戸、制度開始からは約696,000戸が認定されました。多くの住宅が認定を受けていると感じる方もいらっしゃるかもしれませんが、2015年度の1年間で着工した住宅数は約909,000戸であり、まだ認定を受けているのは9戸に1戸程度という状況です。長期優良住宅には認定を受けた場合のメリットも多くありますが、一方でデメリットと感じてしまう部分もいくつかあります。今回は長期優良住宅の概要や、この制度のメリット・デメリットをまとめました。

監修者:針山昌幸

株式会社Housmart 代表取締役
宅地建物取引士・損害保険募集人資格
『中古マンション 本当にかしこい買い方・選び方』
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長期優良住宅だとどんなメリットがあるの?

さまざまな水準をクリアすることが求められる長期優良住宅ですが、どのようなメリットがあるのでしょうか。建物を長く維持していくことを目的とした水準であるため、長期優良住宅は、安全性の高い住宅に長く居住できることや資産として長く考えていくことができるというメリットがあります。しかしながら、この水準をクリアするために柔軟な間取設計が出来ない場合や耐震性を向上させるために追加費用がかかる場合があるなど手間や費用面において負担が発生する可能性もあります。前述のメリットだけでは長期優良住宅の普及は難しいため、現在では減税の特例など様々なメリットが享受できるようになっています。

所得税の投資型減税

住宅ローンを利用しないで長期優良住宅を建てた場合に適用できる減税です。長期優良住宅は性能を強化するために投資をしたという考え方から、標準的な性能強化費用相当額650万円の10%を所得税から控除する減税措置です。こちらも住宅ローン控除同様に所得税の減税です。その年の所得税が控除額よりも下回る場合には、翌年の所得税が控除されます。

登録免許税が安くなる

登録免許税とは、住宅の登記に関する税金です。現在、個人の不動産売買を促進するため、一般住宅においても軽減税率が定められています。完成した建物の所有権を保存する登記の税率は0.4%ですが、一般住宅の場合は0.15%に軽減され、長期優良住宅では更に0.1%に軽減されます。評価額が1,000万円の場合、所有権保存登記の登録免許税は一般住宅が15,000円であるところ、長期優良住宅では10,000円です。また、不動産の所有権を移転する登記においても軽減税率が適用されます。通常2.0%ですが、一般住宅では0.3%に軽減され、長期優良住宅では更に0.2%(マンションの場合は0.1%)に軽減されます。評価額が1,000万円の場合、所有権移転登記の登録免許税は一般住宅が30,000円であるところ、長期優良住宅では20,000円(マンションの場合は10,000円)です。建物の建築費用や土地の売買価格は数千万円にも及ぶため、小さい金額に見えるかもしれませんが、差額で小さなインテリアや雑貨などを新居に新しく用意できると思うと嬉しい減税です。

不動産取得税の控除額が増える

長期優良住宅では、一般住宅の控除額が1,200万円であるところ、1,300万円に引き上げられています。しかしながら、建物の固定資産税評価額が1,200万円を超えたときに初めて効力を発揮する特例ですので、小規模の住宅などでは効果が得られない場合もあります。不動産取得税の税率は3%と定められているため、固定資産税評価額が1,300万円以上の住宅の場合には、最大30,000円(100万円×3%)の減税効果が得られる計算になります。

固定資産税の減税措置適用期間が延びる

毎年課税される固定資産税について、新築住宅の場合には一定期間税額が1/2になる減税措置が受けられます。一般住宅の場合は、その期間が戸建3年・マンション5年ですが、長期優良住宅では、各々2年ずつ延長されます。固定資産税の税率は1.4%と定められておりますので、評価額が1,000万円の住宅の場合は年間14万円が課税されます。新築住宅ではこれが1/2になりますので年間7万円に減税されます。長期優良住宅では期間が2年延長されるため、評価額1,000万円の場合は14万円の減税効果が得られることになります。

金利が安くなる

長期優良住宅は、住宅金融支援機構のフラット35の金利引き下げプランであるフラット35Sに該当します。借入期間の当初10年間の適用金利が0.3%引き下げられるメリットがあります。住宅金融支援機構の試算(ケース:融資率90%以下、借入金額3,000万円、返済期間35年、元利均等返済、金利1.47%)では、フラット35と比べて約174万円の利息が減るメリットが得られます。大きな削減効果であり、これによって民間金融機関との比較も変わってくる場合もありますので、住宅ローンの借入先の決定はしっかりと考えてから決定しましょう。

長期優良住宅のデメリット

長期優良住宅のメリットを述べてきましたが、長期優良住宅のデメリットについても触れておきます。デメリットは大きく「時間」と「コスト」に分かれます。長期優良住宅の認定を受けるためには、それを前提とした打合せや行政への手続きなどに時間を要します。通常住宅の場合から1ヶ月程度が追加期間と考えて下さい。また、手続きに要する追加費用も発生します。ハウスメーカーや工務店によって異なりますが、数万円~数十万円が追加コストとしてかかります。完成後においても前述の通り、定期的な点検を実施する必要があるため、相応のコストを要します。

まとめ

長期優良住宅は、安心安全について一定水準を満たす住宅に居住できたり税や金利の優遇を受けられるというメリットと、申請の時間や点検費用などのデメリット、両面を長い目で考える必要があります。2009年に長期優良住宅の認定制度が誕生してからまだ10年も経過していません。今後、長期優良住宅として認定された住宅が中古市場で流通する量も増えていくことが想定されます。長期優良住宅が一般住宅と比べて、売買価格や成約までの期間など売買時で優位性を保つことができるのか注目していきましょう。
株式会社Housmart
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マンションジャーナル編集部

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