中古マンションを買い替える時の資金計画のポイントとは?
2017.09.17
昔は「不動産は一生に一度の買い物」が、現在は低金利の影響や融資が受けやすくなったこともあり、ライフステージの変化によって買い替えをする方が増えています。結婚、家族の増加、子供の独立など、多い方だと人生で合計で3回不動産を購入することもあります。今回は買い替えの際に一番大切な資金計画について説明します。
監修者:針山昌幸
家計のキャッシュフロー
まず現在の収入と支出、そして次の住まいを購入する際の費用を考えます。これをキャッシュフローと呼びますが、このとき必ず一度紙やパソコン上に具体的な金額を落とし込んでください。数字を可視化することで無理のない資金計画を立てることができます。いざ物件を探し始めると、予算より高いものに心を動かされることがありますが、あらかじめ数字の可視化をすることでその気持ちに歯止めをかけることができます。生活が圧迫されるのであれば、住まいを買い替える意味がありません。そのためまずは現状の把握が必要です。将来の支出
現状を把握したら、もう少し先の未来も考えてみましょう。子供がいる方は学費や習い事、子供が手を離れた方は老後の生活費や医療費など、必要な費用を想像できる範囲で具体的に書き出してみてください。ここでは「もしも」を考えることが大切です。「もしも、子供を大学まで全て私立校に通わせるとしたら?」「もしも病気になったら?」など、ある程度予測を立て、どのように対応するか考える必要があります。今はインターネットが普及しているため、目安となる金額はすぐに調べることができます。一度確認してみてください。今の持ち家をどうするか
買い替えの場合「今の持ち家をどうするか」ということが真っ先に浮かぶと思います。方法は2つ、「売却する」か「賃貸に出す」かです。どちらもメリット・デメリットがありますので1つずつ見ていきましょう。売却する場合
売却を考える方が圧倒的多数だと思います。まず予備知識として基本的には「住宅ローンは1人1本まで」です。そのため、現在の持ち家の住宅ローンが残った状態(残債のある状態)で次の住宅にもローンを利用する場合、持ち家を売却しなければならないケースがほとんどです。住宅ローンの残債以上で売却をする必要があるため、まずは残債額を確認しましょう。金融機関から送られてくる「返済明細」を参照してください。「返済明細」が手元にない場合、住宅ローンの名義人であれば金融機関に問い合わせることができます。その金額を踏まえ、売却希望額を決定しましょう。また、買い替えの場合は「売り先行」か「買い先行」か決める必要もあります。残債が多い、あるいは資金的な問題で売却しないと次の住宅が購入できない場合「売り先行」になります。先に購入できる資金がある、また住宅ローン利用でも銀行が認めた場合は「買い先行」が可能です。銀行が認める状況とは、「買替ローン」が使える、あるいは住宅ローンを2本組んでいても充分な返済能力があると判断される場合です。買替ローンは買い替え先の住宅ローンに、現在の持ち家の残債を乗せて1本の住宅ローンにするという商品です。ただし、売却をせずに残債すべてを乗せる場合にも使えますが、資金力に相当の余力がある方にしか適応されません。売却は確定したが、残債が残ってしまう場合に利用する方が多いので買い先行の方は確認が必要です。今の話から、原則は売り先行になるということがわかると思います。ただ、今はもう一つ画期的な方法があります。それはフラット35(住宅金融支援機構)の利用です。先ほど「基本的には」住宅ローンは1人1本と述べました。つまり、例外もあるということです。。フラット35は現在の残債を残したまま、もう1本住宅ローンを組むことができる制度です。現在の住宅を「売却予定」あるいは「賃貸に出す予定」ということを「伝え」れば利用することができます。ここでポイントなのが「伝える」という点です。売却の売買契約締結や賃貸借契約締結は必要ありません。買替ローンが利用できない、先に買いたい物件が見つかった方にはとてもおすすめの方法です。ただし1つ注意点があります。フラット35で現在住宅ローンを組んでいる方は利用できないため、借り換える必要があります。実際の具体例を用いて説明します。現在の持ち家を住宅金融支援機構から借り入れている方がいました。残債の問題で借り換えローンの利用ができませんでしたが、先に購入したい物件が見つかってしまいます。その際、現在の持ち家の住宅ローンを一度別の金融機関にて借り換え、その後買い替え先にフラット35を利用して住宅ローンを組みました。残債の関係上、売却価格は下げませんでしたが、新居に引越し後1ヶ月で売却が決定したのです。このように、フラット35をうまく利用することで、売り先行でないと進まない案件も買い先行で進めることができます。この仕組みは意外と不動産業者でも知らない人が多いので、買い先行を検討する方はこちらから提案した方がよいでしょう。賃貸に出す場合
現在の持ち家を賃貸に出して、その家賃収入で住宅ローンを返済したいと考える方も多いと思います。しかし、前項で述べた通り住宅ローンを全額残したまま、買い替え先も住宅ローンを組むには高い資金力が求められます。賃貸での運用を希望する方は前項の「フラット35」を利用しましょう。ただし、リフォームなどを施し家を貸せる状態にしなければならないこと、すぐに賃借人が付く保証がないこと、退去後のことも考えてください。一時的とはいえ必ずダブルローンになるので、毎月の支出をよく試算する必要があります。なお、安定した収入を見込みたい方は「サブリース」を検討してみてください。サブリースとは不動産会社による借り上げです。通常賃貸で貸し出すより見入りは安くなりますが、空室時でも収入がなくなることはありません。また、賃貸転用と売却の同時募集もできるので、両側面から検討することをおすすめします。頭金を捻出する
今までの項目からある程度の資金計画を立て、次の住宅購入のための頭金を計算します。買い替えの場合は購入諸経費、売却諸経費共にかかるので注意が必要です。項目としては購入だけでも「仲介手数料」「印紙代」「登記費用(新築は保存登記費用も)」「固定資産税等清算金(マンションは管理費等も)」「火災保険料」が必要となり、住宅ローン利用の場合はさらに「保証料」「事務手数料」「融資契約書の印紙代」がかかります。また、売却には「仲介手数料」「印紙代(契約書を写し保有でよければ無しにもできる)」がかかり、さらに住宅ローン残債がある場合は「完済手数料」「抵当権抹消費用」も別途必要になります。また、現自宅を売却して買い替えを行う方の場合は「今の家がいくらで売れるのか」をある程度予測して頭金を検討しなければなりません。現自宅を売却し、住宅ローン完済後に手元に残った金額から頭金を検討したいという方もいますが、それは現実的には困難です。住宅ローンの完済は現自宅を購入した方の費用に充当します。お金を頂いたのに家を引渡さないというのはおかしな話ですよね。買い替えのタイミングの問題で「引渡猶予」という特約を付けるケースもありますが、支払いから一週間以内に現自宅を明け渡すのが一般的です。頭金を確実に知りたいという方は「売り先行」を行い、現自宅の買い手がついて、売買契約締結後に買い替え先を探し始めるとよいでしょう。買い替えの場合は売買契約締結後3か月以内に残金決済を行うのが一般的なため、限られた期間で探す形にはなりますが、資金面に不安がある方はその方法が一番安全です。ただし、買い替え先が見つからなかったからと言って引き渡しを伸ばすことは違約に該当します。そのため一時的に実家に住む、賃貸を借りるなどの方法を視野に入れておくことをおすすめします。まとめ
今回は買い替えの資金計画について説明しました。買い替えは売却と購入を同時進行していくので、単純に購入するときよりも多くの人とスケジュールを調整して様々な手続きを進め、必要な費用を支払わなければなりません。そのため、余裕を持った資金計画とタイムスケジュールを設定してください。大きな金額を支払うだけでなく、大きな金額を頂く側にもなるのです。将来を見据えた無理のない資金計画で、安心安全な買い替えを行ってください!株式会社Housmart
マンションジャーナル編集部
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