【夜景評論家丸々もとお氏に聞く】マンション選びにおける夜景の重要性とは?

2017.09.27
【夜景評論家丸々もとお氏に聞く】マンション選びにおける夜景の重要性とは?
今回、夜景評論家の第一人者として著名な丸々もとお氏に「夜景の見えるマンション選びのポイント」をテーマに取材させていただきました。丸々もとお氏は、日本各地の有名な観光施設、レストラン、イベントにおける夜景の空間演出を手掛けるプロデューサーであり、多数のメディアにも出演されています。そんな、夜景を知り尽くした丸々もとお氏が語る「夜景が綺麗なマンションの見つけ方のポイント」や「夜景が我々の生活に与える効果」とは一体何なのでしょうか?

夜景が見えるマンションを見つけるポイントとは?

丸々氏:「実際に自宅の中に入ってマンションから夜景を見ようとすると、新築・中古を問わず手続きが必要となりますよね。なので、まずは夜景が見えそうなマンションの候補をある程度絞ることから始めましょう。おすすめの中古マンションの選び方は、夜景側の視点で眺望のいいマンションを探すことです。つまり、こんな夜景が見えたらいいなと思うスポットに実際に行ってみて、その地点から見上げた時によく見えるマンションを探すという方法です。夜景からマンションが見えるということは、当然マンションからも夜景が見えるというわけです。実際に、その視点で色々なマンションを見てみて、お目当てのマンションが定まったタイミングで内覧の手続きを行い、確かめてみるのが良いでしょう。内覧した時に注意しておきたいのは、「目線の高さ」です。内覧をしている時は、立った状態でお部屋を見て回りますよね。しかし、普段生活していて窓の外の夜景を見る場面では、椅子に座ってくつろぎながら見るケースが多いと思います。立っている時と座っている時は景色の見え方が当然異なるので、座った時にほとんど空しか見えないということになってしまうかもしれません。なので、可能であれば内覧する時に特別に椅子を用意してもらって、実際に座ってくつろいだ状態で外の景色を眺めてみることをお勧めします。また、高層階だからといって必ずしも眺望に優れているとは限りません。なぜなら、高層階に行くほど、景色の中に占める空の割合が大きくなってくるからです。もし目の前を遮るような建物がないのであれば、中低層階でも十分夜景を楽しむことはできると思いますよ。

夜景が我々に与える効果とは?

丸々氏:「夜景が見えることも大事ですが、さらにもう一歩深い視点を持って「光の質」にまでこだわることをお勧めします。例えば、オレンジ色などの暖色は、人間の精神・肉体に高揚をもたらす効果を持っています。高速道路のジャンクションなど、事故が一度起こると大事故に発展しやすいような場所でオレンジ色の光が使用されているのはそのためです。もし夜景がそのような暖色で満たされていると、無意識のうちに注意力が高まってしまい、リラックスしにくいのです。光の多い夜景の場合も同様です。インパクトのある夜景は情報量が多く、それらすべてに人間は反応してしまうのです。なので、頭の中を整理したい時にインパクトの大きな夜景を見るのは適していません。さらに、オフィスの風景が目に入るような場合、無意識のうちに残業がイメージされてしまい休まらないという影響を受けてしまいます。リラックス効果を求めるのであれば、「ある程度暗闇に覆われており、その中にポツポツと明かりがあるような夜景」が見えるマンションを選ぶと良いです。こういった夜景を見ることで想像力が沸き立ちやすくなるので、クリエイティブな考えごとがしたい時には最適です。」

丸々様が考える、マンション選びの理想的な価値観とは?

丸々氏:「「新築か中古か」というのは本質的な議論ではありません。たとえ新築マンションに住んでも、次第に建物は古くなっていきます。大事なのは、新しい建物か古い建物かで判断することではなく、その空間を自らどのように活用し、空間的価値、時間的価値を高めていく演出を行うかです。例えば、夜景の選び方次第で家族団欒の質は大きく変わってきます。家族全員が揃う時間帯は、基本的には、朝か夜ですよね。朝は時間に追われ慌ただしくなりがちなので、景色をゆっくりと見る暇はないでしょう。となると、家族揃って団欒ができる最適な時間帯は一般的には夜のみです。綺麗な夜景を見ながら、お子さんと将来について会話したり、旅行のお話をしたりすることで家族の絆は高まっていくのではないでしょうか?人口減少していく中で、住宅の在庫は必然的に増えますので、より一層物件を選ぶ視点が重要になってきます。実際は出産、転勤など、中古マンション購入に至る事情次第では、時間的な制約がある中で購入せざるを得ない方が多いのではないでしょうか。なので、普段からどんな物件が自分には合っているのかと言う点について考えておくことが重要です。私は、全国各地を仕事で回っている時、景色を眺めながら夜景の綺麗なマンションを見つける「素振り」をしています。不動産購入は就職と同じくらい人生に大きな影響を与える意思決定なので、購入を検討する時期になって初めて考えるのではなく、普段からどんな物件がいいのかをある程度絞っておくと良いでしょう。」

丸々氏がこれからの不動産仲介・販売に期待することとは?

丸々氏:「これまでの日本のマンション販売では、夜景がもたらす価値についての理解を深める事なく、HPやチラシ広告を通じ、一般の方に対して「いかに綺麗に見せるか」というテクニカルな、写真加工の質を高めることが重視されてきました。マンションは高額商材なので、販売側としてはインパクトの強い広告を訴求し、憧れするような宣伝を行うのは当然です。その流れの中で夜景評論家の私が期待することは、現場の営業マンがお客様に客観的な情報を伝えることで終わるのではなく、もう一歩踏み込んで、その夜景が居住者の生活にどんな影響を与えてくれるのかという点について掘り下げていくことです。つまり、「お部屋から東京タワーが見えます」という単純な情報提供で終わるのではなく、お客様にご案内するお部屋で一晩過ごし、そうして初めて発見できるような魅力をお客様に伝える。自分が売る対象に本気で向き合い、それをコンテンツ化してストーリーとして伝えることが求められていると言えるのではないでしょうか。」取材協力:丸々もとお様
夜景評論家・夜景プロデューサー・イルミネーションプロデューサー・(社)夜景観光コンベンション・ビューロー代表理事。世界初の「夜景評論家」(R)であり、夜景観光のパイオニア。1965年生まれ。立教大学社会学部観光学科卒。ぴあ(株)情報誌『WEEKLYぴあ』の編集記者、(株)リクルートを経て独立。92年『東京夜景』上梓以降、日本で唯一無二の夜景評論家として本格的活動を始める。夜景の魅力を観光学、景観学、色彩心理学など学際的に評論する独自の「夜景学」の構築に取り組んでいる。夜景に関する著作は50冊以上。新聞・雑誌連載等の執筆活動のほか、宿泊プラン、夜景イベント、レストラン&展望台プロデュース、不動産コンサルティング、夜景観光町おこし、講演会、インターネットにて活躍中。近著に「世界の夜景」(ダイヤモンド社)「日本の夜景」「東海道夜景五十三次」(エンターブレイン)「夜城」(世界文化社)。神戸市、横浜市、長崎市、川崎市、札幌市等の夜景観光アドバイザーを歴任。夜景検定(夜景鑑賞士検定)総監修、日本夜景遺産事務局長、LED光源普及開発機構理事等を務める。全国に広がる“工場夜景クルージング”の仕掛け人でもある。
→丸々もとお様オフィシャルサイト:http://www.superyakei.com/
株式会社Housmart
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マンションジャーナル編集部

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