中古マンションの上手な選び方|理想の物件が見つからない時の条件整理のコツ
2020.06.12
「ずっと物件を探しているけれど、全然いい物件がない・・・」そんなとき、一体どうしたらいいのでしょうか?「理想の物件がない」というときにまず見直したいのは、その「条件」です。今回は、理想の物件を見つけるための選び方、条件の見極め方をお教えします。
では、「譲っていいところ」と「譲るべきではないところ」とは、一体どこなのか? 資産価値が、ひとつの大事な基準になります。具体的にお話ししていきましょう。
まずはチューニングして良いものから、ご説明します。一つ目が、専有面積。そして2つ目が、築年数です。
理想の物件を選ぶために「まずは要素を分解する」
理想の物件がすんなり見つからない場合、「すべての条件が妥協できない!」と思っていると、ひたすら待つことになってしまいます。そんな時は、条件を要素に分解してみましょう。そして、「譲れるところ」「譲れないところ」を見極めて、チューニング(どこを妥協し、どこを死守するのか)していくことで、「自分にとっての理想の物件」が視野に入ってくるようになります。物件を探す時の条件として考えられるものとしては、以下のような要素になるでしょう。- エリア
- 駅距離
- 広さ
- 間取り
- 階数
- 方角
- 築年数
譲っていい条件・譲るべきでない条件とは
「譲っていいところ」と「譲るべきではないところ」、その判断軸はズバリ、資産価値への影響が大きいか否か、です。資産価値への影響が大きい条件は、譲るべきではありません。これは、以下のようにも言い換えられます。- チューニングして良いもの ・・・変化するもの
- チューニングするのは慎重になるべきもの ・・・変化しないもの
チューニングしてもいい条件①専有面積の考え方
「広さの実感」を身につけて、「本当に必要な広さ」を数値で見極めること。これが、専有面積を考える上で大事なポイントです。マンションの1㎡は大変高額です。エリアや築年数にもよりますが、湾岸エリアであれば、ざっくり1㎡が80〜100万円ほどになります。つまり、60〜70㎡という10㎡の開きは値段に置き換えると、800万円〜1000万円という開きの話をすることになります。突き詰めていくと、一体どれくらいの「広さ」が必要なのか。これをシビアに考えるために、平米(㎡)単価でマンションの価格をとらえていきましょう。専有面積はこのステップで考えよう
①まず日本人に馴染みのある「帖」表記を㎡単位でとらえる。②次に、㎡を価格でとらえる。③その価格を、今度は月々のローン支払いのところまで落とし込む。
専有面積は、この3ステップで捉えられることで、現実的に検討できるようになり、理想のラインが明確になります。そのために役に立つのが、以下の数式です。物件探しの上で重要ですので、ぜひ覚えておきましょう。
①6帖=10㎡
②1㎡=○○万円
③ローン100万円=2,500円〜3,000円/月
「6帖ってどれくらいの広さ?」というのをリアルに思い浮かべられるようにすることで、「実はここまではOKかも」「金額的に現実的なラインとしては、この広さがベスト」など、検討範囲がよりクリアになっていきます。
①6帖=10㎡
「広さ」を正確にとらえる上での障害として、この「帖」と「㎡」の単位が混じっている点が挙げられます。日本の不動産のWEBやチラシでは、お家全体は平米数、お部屋の広さは帖数で示されていることが一般的です。日本人としてイメージしやすい畳6枚ぶんを示す「6帖」は便利ですが、それが分かりづらさの原因ともなっています。6帖という表記を見たら、「=10㎡」と換算するようにしましょう。②1㎡=○○万円
次に、平米単価でマンションの価格をとらえていきましょう。広さをお金に換算する、ということです。例えば、検討している物件のエリアの平均の平米単価が100万円だとすれば、「6帖=10㎡=1,000万円」ということになります。③ローン100万円=2,500円〜3,000円/月
価格に落とし込んだら、さらにそれを月々の支払いの肌感覚にまで落とし込みましょう。2020年6月今現在で100万円を借りた場合、一番金利が安い銀行で変動金利で借りれば月々の返済額は2500円、固定金利など高い銀行だと3000円程度です。つまり、住宅ローンが100万円増えれば、月々の支払いが2,500円〜3,000円程度増える、ということになります。この考え方ができるようになると、「今よりも一部屋増やしたいな」と思ったとき、つまり「月々の支払いがいくら増えるのか」と、面積を金額で捉えることができるようになります。例えば、こんな感じです。【例】
「一部屋増やしたい」 ≒ 6帖 = 10㎡ = 1,000万円 =月々の支払い +25,000円〜30,000円
※平均平米単価が100万円のエリアの場合
「一部屋増やしたい」という感覚は、月々の支払いが25,000円〜30,000円増えるということになる、となります。この金額が妥当かどうか、現実的な話まで落とし込めるのです。もう少しさらに具体的な例でお話ししてみましょう。現在2DKの賃貸で40㎡に住んでいるとして、「一部屋増やして、LDKも広くしたい」と思ったとします。
「一部屋増やして、LDKも広くしたい」
↓
だいたい20㎡くらいプラスする
↓
60㎡ くらいが希望条件の目安かな
↓
であれば、希望エリアの平均平米単価が100万円だから、月々の支払いは・・・少なくても50,000円くらいプラスになる、ということか・・・
といったふうになります。「まず欲しい広さを出し、金額に換算する」のです。こうして行くと、現実的な広さの条件が明確になっていきます。
広ければ広いほど、毎月の「増えるお金」に注意!
注意したいのが、広ければ広いほど、それに合わせて月々にかかってくるお金があることです。月々に発生する管理費、修繕積立金、固定資産税、都市計画税。これらはすべて「単価×広さ」で加算されていきます。つまり、広い物件を購入すればするほどこうした出費が増えていくことになるのです。購入時の物件価格以外に月々の支払いとして発生するこれらの費用は、いわば「ジャブ」のように毎月の家計に効いてきます。必要のない広さを購入してしまうと、毎月毎月、必要じゃないお金が出て行くことになってしまうのです。まずは、必要な広さをしっかりと現実的な目で見極めましょう。そのためには「これくらい」などだいたいの目安として捉えていた感覚値を、ぜひ具体的な数字や金額に落とし込むようにしてみてください。チューニングしてもいい条件②築年数の考え方
次に、築年数の考え方です。「あまりにも古いのはちょっと・・・」と感じている場合、いくつかの軸に切り分けて考えてみましょう。それによって、「このくらいの築年数だったら物件によってはいいかもしれない」という目を持つことができます。築年数を考える上で、気にしたいのはこの5つの視点です。「築年数5区分」の法則
- 旧耐震
- 新耐震
- 築25年以内
- 築15年以内
- 築10年以内
旧耐震か新耐震か?を見分ける基準
・旧耐震 → 1981年5月31日までに建築確認を取得した建物 ・新耐震 → 1981年6月1日以降に建築確認を取得した建物耐震基準が変わった区分によって分けたものが、こちらです。注意したいのは「築年数」ではないということです。WEBやチラシの表記としては、「完成した年次」が書いてありますが、建物は、建築確認を申請し、「建てていい」という許可を取得してから建設を始め、完成までに1年〜2年ほどかかります。なので、「建築確認」の日付と、完成した日付には、タイムラグがあるのです。1982年に完成した建物でも、旧耐震であるという可能性もあるわけです。「完成年が1983年以降であれば、概ね新耐震であろう」と考えることができますが、正確な数値としては建築確認の取得年で見るようにしましょう。築25年以内×50㎡以上であれば住宅ローン減税対象
築25年以内であって、登記簿で50㎡以上であれば、住宅ローン減税対象になります(※)。住宅ローン減税対象であれば、10年間で最大200万円ほど戻ってくることになります。1年に直せば、年に20万円くらい戻ってくる計算です。※実際には、適応要件は他にもいくつかあります。ここでは居住用であることを前提にしています。ただ、築25年以上であっても、実は新耐震であれば、住宅ローン減税は使える可能性の方が高いです。検査費用は10万円ほどかかりますが、それで通れば200万円ほど戻る可能性があるので、費用負担する価値はあるといえます。もしそうした物件に出会った時は、「築25年以上の建物だから住宅ローン減税対象外だな・・・」と検討対象外と判断してしまう前に、「新耐震かどうか」という軸でも検討してみてください。リフォーム費用の目安になる、「築15年」と「築10年」
中古マンションを購入するにあたって、「リフォーム費用がどれくらいかかるのか」も購入の時には見込んでおかねばなりません。リフォーム費用を見積もる場合に、築年数「15年」と「10年」というのが、一つの目安になります。築15年・・・フルリフォームが必要
築10年以内・・・壁紙交換でOK
普通の使用感であれば、築15年ほどでフルリフォームが必要になります。また、築10年以内であれば、よほど雑な使われ方をしていない限りは、壁紙交換くらいで大丈夫だと考えられます。具体例で考えてみましょう。例えば、築15年の物件で、WEBの広告にリフォームに関する記述がなかったり、室内の写真がまったくない、というような物件は、内部に自信がない、つまり「リフォームが必要な状態」だと推測できます。となると、仮に60㎡の物件だったら「フルリフォームをすることで、500〜600万円くらいの価格が物件価格の上に乗ってくるんだな」と予測することができ、「・・・であれば、この物件は予算オーバーだな」とか「この物件はちょっと古いけれど、フルリフォーム前提ならアリだな」など、不動産屋に確認せずとも自分である程度つかむことができます。こうした感覚を持っておけば、物件探しの段階で問い合わせをする前により明確に自分の条件にあった物件なのかどうかをイメージすることができるでしょう。物件探しの効率も上がりますし、「築●●年だからだめ」と切り捨てていた条件外の物件も、状況次第では射程距離に入るようになります。
妥協して目線を下げるのではなく、「実はアリだった」という基準値が明確になるのです。
築年数でよくある疑問・質問・勘違い
築年数に関して、よくある質問や疑問、また起こりがちな勘違いについて紹介します。これを知っておくと、検討対象になる物件が、さらにはっきりとしてきます。旧耐震だと住宅ローン減税は使えない?
旧耐震に関しては、100%に近く使えないと考えていいでしょう。稀に、物件によっては対象になっているケースもあります。そうした物件は、耐震診断を行い、必要である耐震補強工事を行います。その上でまた耐震診断を行った結果、新耐震並みの強さを持っていると示せれば、住宅ローンが下りるのです。ただ、これには多額の費用がかかる上に、工数や手間としても大変なので、あまり現実的ではなく、そこまで実行している建物は少ないと言えます。新耐震でも新しい建物の方が安心?
新耐震であれば耐震基準は同じであるため、築浅であるかどうかで耐震の安心度は変わりません。物件によっては、ディベロッパー側の意向により耐震性能をより高めているものもありますが、多くはなく、築年数の浅さによるものとは別のお話になります。築25年以上の建物って30年後に価値あるの?
管理と長期修繕計画次第で、物件の資産価値は大きく変わります。逆に築15年くらいでも、この管理と長期修繕計画という観点から見れば、「よくない物件」というのはあります。マンション管理状況をよくみるというのは、一つの大事な視点です。チューニングしてもいい条件③日当たりと明るさ
もう一つ、チューニングしていい条件としては、「日当たりと明るさ」です。誰でも明るい部屋に住みたい、と考えると思います。ですが、明るさを重視して「南向き」を探しているのであれば、ちょっと考え直してみましょう。明るさを重視するなら「南向き」にこだわる必要はないからです。「南向き」より「前が抜けているか」をチェックしよう
日当たり = 「直射日光」のこと = 東・南・西向きでないと得られない
明るさ = どこの方角を向いていようが、景色が抜けていないと得られない
日当たりは直射日光のことです。これはもちろん、光が後ろから当たる北向きでは得られません。ですが、「明るい部屋」というのは、「直射日光が入る部屋」だけではありません。逆に、気にすべきは窓から見た景色。「前に建物があるのかないのか」によって、「明るい」と感じる部屋になるかが決まるのです。北を向いていても前が抜けていれば明るさは採れます。逆に、前に建物が迫っていれば、南向きでも光はなかなか入ってこないでしょう。
タワマンエリアは北向きの方がちょうどいい?
またエリア特性も明るさに影響します。向かいに他のタワーマンションが立ち並ぶ湾岸エリアなどでは、北向きでも後ろからの光が前の建物に反射して光が入ってくる、ということがあります。「逆に北のほうがちょうどいいくらいで、南向きだと暑すぎて夏場はたまらない」というのも、タワマンエリアではよく聞く話です。北向きでも明るい、とわかっていれば、物件探しのレンジが広がります。直射日光のことを指す「日当たり」は、「明るさ」や「方角」、また「資産価値」には直結しません。先ほど挙げたタワマンエリアの例にもあるように、エリアや立地の特性にもよりますので、試しに「建物の前が抜けている北向き」を選んで見に行ってみる、というのもいいでしょう。建物前が抜けているかどうかは、GoogleMapやGoogleEarthで見てみるとだいたいの立地感をつかめます。もし「南向き」か否かで物件を取捨選択してしまっていた場合は、ぜひ一度見直してみましょう。また、もし資産価値を考えて「南向き」と思っている場合は、方角よりも、ベランダから「何が見えるか」に注目しましょう。その方が資産価値への影響が大きい場合があります。チューニングに慎重になるべき条件①駅徒歩分数の考え方
ではここからは逆に、チューニングすべきでない条件について解説します。ずばり「資産価値」に直接影響する要素です。駅徒歩分数は、エリアの次に資産価値に影響します。こればかりは何年経っても、物件と駅との距離が縮まったりすることはありません。新しい駅が物件近くにできない限りは、駅徒歩という絶対的資産価値は、後から得ることができないのです。そして、駅近の相対的価値は今度も上がり続ける可能性大です。「自分は歩くのは苦じゃないから」という方でも、10年後にどうなるのか?と考えてみましょう。10年くらいで売ろうという想定であれば、なおさらです。価値によって、売却時の価格は変わりますし、そのぶん住み替えられる住居の選択肢も決まってくるでしょう。今の価値観も大事ですが、10年後にどうなっているか?という視点は、ぜひ持っておきましょう。チューニングに慎重になるべき条件②エリアの考え方
エリアは最も資産価値に影響する要素です。これは、賃料相場や地価公示を注視しましょう。エリアの価値の調べ方
賃料相場 ・・・「レインズ マーケットインフォメーション」 http://www.contract.reins.or.jp/search/displayAreaConditionBLogic.do
地価公示(土地の売買価格の推移) ・・・「土地総合情報システム」 https://www.land.mlit.go.jp/webland/
賃料相場は「レインズ マーケットインフォメーション」で、地価公示は国土交通省による「土地総合情報システム」で、それぞれ調べることができます。地価公示を調べる時は、「検討している土地がこの5年でどういう推移をたどっているか?」を見るようにしましょう。上がっているところ・変わっていないところ・下がっているところとがあるはずです。上昇しているところであれば安心ですが、上昇してきたのがここ2、3年で停滞していたり、徐々に下がっているようであれば、要注意と言えます。
勘や魔法ではなく「技術」としての不動産探しを
私たち不動産会社には、良質な物件をつくることはできません。また、良くない物件を「良いものにする」こともできません。ただ、不動産のプロフェッショナルとして、その知識をベースに、「ベストなものを選ぶための方法」を示したり、ご要望を聞いて本当に欲しい条件を整理し「・・・であれば、これがお客様にとっての理想の物件ではないか」と提案することはできます。ぜひ、物件探しの時には、- 要素に分解する
- 市場を見極める
株式会社Housmart
マンションジャーナル編集部
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