「湾岸タワマンは災害に弱い」は本当か?タワマンを愛する二人がガチンコ対談!のらえもん氏×GOGEN和田氏

2023.10.26
「湾岸タワマンは災害に弱い」は本当か?タワマンを愛する二人がガチンコ対談!のらえもん氏×GOGEN和田氏

防災面で何かとマイナスイメージを持たれやすいタワーマンション通称「タワマン」や湾岸エリア。

「震災の時は液状化になるんじゃない」
「エレベーター止まっちゃうんでしょ?」・・・

メディアでもSNSでも攻撃対象になりやすい「湾岸」&「タワマン」ですが、「実際のところどうなのか?」・・タワマン&湾岸をこよなく愛し情報発信やサービス提供を続けるお二人に、ズバリ聞いてみました!

湾岸エリア・タワーマンションに限らず、自らのあるいは家族の命・暮らしを守るために住まいを選ぶとは? そんな究極の問い、二人のタワマンの好みについてまで発展したトークをどうぞ。

のらえもん

のらえもん プロフィール写真

マンションアナリスト、ブロガー、インフルエンサー
湾岸タワーマンション在住。2011年9月に「マンション購入を真剣に考えるブログ」を開始し、現在では複数のオンラインプラットフォームでブログ執筆や発信を行う。著書に「絶対に満足するマンション購入術 不動産のプロ達は大事なことを隠している」(廣済堂出版、20年3月)。宅建士とFP2級の資格も持つ。23年から肩書を「マンションブロガー」から「マンションアナリスト」に改称。
https://wangantower.com/

和田浩明

和田浩明 プロフィール写真

GOGEN株式会社 代表取締役CEO
手付金ゼロ円で住宅購入ができるサービス「ゼロテ」を展開する、GOGEN株式会社 代表取締役CEO。いわば「住宅購入費用のプロ」。他にも電子契約等の不動産売買手続きプラットフォーム「Release(レリーズ)」やChatGPTを活用したマンション管理向けチャットサービス「Chat管理人」など、不動産売買のデジタル化を推進し、売買体験をより良いものとするべく躍進を続ける。
https://gogen.jp/

「タワマンは倒壊するんじゃないか」説について思うこと

編集部:
私たちの暮らしや住まいにおいて、災害への備えが重要性を増してきているように感じています。
近年台風や大雨による自然災害が増加しているのはニュースや実体験として感じていらっしゃる方も多いと思うのですが、気候変動に伴う気象災害リスクの高まりについて国土交通省が指摘していたり、今後30年以内の発生確率が70%と推定される首都直下地震について、国や東京都も警鐘を鳴らしているなど、国レベルでも実際に危機意識を持ち、各方面で対策が進んでいます。

それに付随してメディア報道でも災害に対する危機管理や備えについての呼びかけを見かけますが、そんななか特にネットニュースやSNSでは、タワマンや湾岸はなにかと批判の対象にされることが多いなと・・。お二人のお考えや、また正しく情報を選んでいくためのヒントをいただきたいと思って、今回対談を申し込ませていただきました。

のらえもんさん:
防災っていうのは自分の命を守るっていう風に考えると、3要素しかないんですよ。建物の倒壊か、火災か、浸水なんです。

浸水に関しては、基本的には高台を選ぶ、つまり標高が低いエリアを選ばなければ基本的には大丈夫ですよね。
火災には「もらい火災」と自宅の火災があって、自宅の火災は(個人の問題なので)ともかく、もらい火災に関しては、 消防車が入っていけないような自宅の周りが木造戸建ての密集地帯に住まないっていうことが重要です。

あとは建物の倒壊に関して言うと、これは基本的に新耐震を選べばいい先の東日本大震災の時の地震で倒れた・壊れたマンションってなかったんです。そもそも旧耐震ですらほぼほぼ壊れてないんですよ。

和田さん:
東北地方を入れても倒壊は出ていないですね。(※1)

※1
(社)高層住宅管理業協会によると、東北・関東におけるマンションの建物本体被害は、「大破」(建て替えが必要な致命的な被害)は0棟。また、建物本体が60分の1以上傾いた事例も、建物本体が躯体の破損により一時的に使用不能になった事例もなかったと報告されている。
>>参考:(社)高層住宅管理業協会 「東日本大震災の被災状況について(続報)」より


のらえもんさん:
阪神・淡路大震災の時にはピロティ構造の物件は壊れたけれども、それ以外は壊れてない(※2)んですよね。なので、それなりに日本の耐震基準ってきちんとしている。熊本の震度7の地震でも、(新耐震で)甚大なダメージがあって住めなくなったというレベルの事例はないんです。(※3)

なので、新耐震のマンションを選ぶ限り、基本的に倒壊で死ぬことは考えにくく、家具の下敷きになるとかなんじゃないかなと。それはもはや、(家具の配置や固定など)自分の暮らし方次第とかの問題になるんじゃないですかね。

※2
阪神・淡路大震災での建築物への被害としては、下記のような報告がなされている。
・建物の被害は主として現行の建築基準法・同施行令の基準を満たしていない建物(既存不適格建物)に起こった。これらのうち特に老朽化した古い建物が崩壊などの甚大な被害を受けた。
・比較的高層の建物での中間層の崩壊、鋼材の高速荷重下での脆性破壊など、これまで我が国では経験していない被害も発生した。
・鉄筋コンクリート造建築物では、現行建築基準法・同施行令を満たしていない、いわゆる既存不適格建物に被害が多かった。
・全体的にピロティ構造と壁の配置の悪い構造の建築に崩壊したものが多く、これらの中には現行法に適合している建物もあった。
>>参考:内閣府「阪神・淡路大震災教訓情報資料集【03】建築物の被害」より抜粋


※3
熊本地震における建築物被害としては、下記のような報告がなされている。
・鉄筋コンクリート造等建築物で倒壊・崩壊が確認された10棟は、すべて旧耐震基準の建築物だった
・新耐震基準導入以降の鉄筋コンクリート造等建築物で倒壊・崩壊等が確認されたものは報告されていない。上部構造が大破と判定された9棟に関しては、そのうち4棟がピロティ構造。
>>参考:国土交通省「熊本地震における建築物被害の原因分析を行う委員会報告書」


「震災時の火災リスクは湾岸エリアは少ない」理由


編集部:
先ほど火災のお話があったと思うんですけども、いわゆる木密地域って言われてるようなところですよね。最近では火災対策として再開発されて、タワーマンションに建て替わる例が特に東京の東側の区域で盛んに行われていますが・・

たとえば足元に木密地域があったとして、その火災はタワマン敷地内に住んでいたら関係がないってことになるでしょうか。

のらえもんさん:
もはや関係ないですね。クリアランス(離隔距離。建物と建物の間で距離がとれていること)が取れるので・・道路の間にさらに公開空地があって、それで建物(マンション本体)なんですよ。道路からセットバックしてるんですね。(※3)

※3
市街地の環境整備の観点から、マンション敷地内に歩行者が日常自由に通行又は利用できる空地(公開空地)を設けることで容積率や高さ制限などの規制が緩和される。増えた床面積ぶん民間事業者(ディベロッパー等)は利益を得られるため、ゆとりをもった敷地設計が可能になり、建物同士の離隔が確保され、防災上もより懸念の少ないまちづくりが実現される。
>>参考:国土交通省「総合設計制度」


もらい火災が考えにくいというのと、タワーマンション自体で火災が起こることも考えにくい。スプリンクラーが作動して、大量の水が出るんですよね。だからボヤとか起こした時は問題になるくらいに・・下の階くらいまで浸水しちゃうくらいなので。

多くの場合、高層ビルにはこのように建物周りに公開空地が設けてある。写真はマンションではないが豊洲駅前にある複合ビル・豊洲ベイサイドクロスタワーの敷地図


編集部:
離隔もとれているし、タワマン自体が火災に対する設備(スプリンクラーなど)が充実しているので、タワマンに住んでいる場合、火災被害の危険性はかなりおさえられているということですね。

災害=地震だけじゃない。それ以外の災害リスクも含めた確率論で考えると

和田さん:
株式会社Housmartのマンション購入に対する防災意識調査アンケートで2人に1人が「防災観点で懸念がある物件の購入を見送ったことがある」と回答した、ということですが、皆さんの「防災」に関する興味が、命にあるのか、資産価値にあるのかは気になるところですね。

感覚的には「命を守る」ということに意識があまり行ってないんじゃないかと思っているんですけど、本来大事なのってそっちなんですよね。結局タワマンだろうがなんだろうが、直接の震災じゃなくても食料やインフラが止まるとかの被害は起こり得るっていうのが、東北の震災の時に実際にあったことなので。防災に関する個人の備えというところが、本当はクローズアップされるべき

湾岸液状化が言われてるのも、自分の住んでるエリアのマンションが他の人に比べて価値が落ちちゃうんじゃないかっていう漠然とした不安なのかなと。

でも、災害って地震だけの話じゃないので・・僕も厳密にはわからないですけど、確率論でいくと、湾岸で仮に液状化が起こって資産価値が暴落してしまう確率とそれ以外のエリアに住んだ時に、それ(液状化)以外の災害が起こる確率、冷静に比べるとどうなんだろうみたいなところはあると思います。

その辺りをお客さんはそこまで見れないと思うので、どういう風に発信していけばいいのかみたいなところが、まさに問われてるんだろうなっていう気がしました。

編集部:
どう発信するかっていうのは、例えばその情報を伝えるメディアとしてという意味なのか、それとも、例えば新築マンションだったらディベロッパーの話なのか。
現職の前にディベロッパーで分譲・賃貸マンションの商品企画などに関わってらっしゃった和田さんとしては・・。

和田さん:
ディベロッパー側もあると思いますね。「免震だからいい」って話じゃない。最近の大規模タワマンは24時間とか72時間、共用部の電力が動くっていう触れ込みでやってますけど・・HARUMI FLAGになると、専有部まで1週間ほどの電力は担保してます(※4)とか、そうした防災設備の話はあるんですけど、ほとんどのマンションの場合、やっぱり共用部までしか影響しないとか、できても携帯の充電ぐらいという・・。
入居の説明は丁寧にやる割にそういう(被災時に関する)話ってあんまり説明されないなと思います。単なる売り文句に徹しているって感じですよね。

※4
HARUMI FLAGでは、各街区に停電時に一週間程度の電力を確保する非常用発電機を設置している。
>>参考:HARUMI FLAG 公式サイト “停電時約1週間程度の電力確保など、災害時にも対応できるエネルギー自立体制。”


のらえもんさん:
防災のためにHARUMI FLAGが蓄電池を入れてるんですよね、全戸(※5)。ただ、その蓄電池、入れ替えするときに200万円くらいかかるんですよ。 耐久10年。10年で200万円。つまり、1年に20万円かけて、「起こるかもしれない災害」のために、専有部に電池を置いてるってことなんですよ。

※5
HARUMI FLAGは全住戸にエネファームと蓄電池を標準装備している。
>>参考:HARUMI FLAG 公式サイト “全住戸にエネファームと蓄電池を標準装備。”


和田さん:
以前の武蔵小杉のタワマンの話(※2019年10月の台風19号で増水した多摩川の水が下水道管に逆流、武蔵小杉のタワーマンションが浸水し全戸停電になった)とかを見てると、やっぱり1番困るのはトイレが流れなくなるとか・・そういうところではないかという気もします。だから、そこ(停電になるリスク)に年間20万かける価値があるかっていうことは別の話として置いといて、そのリスクがどれだけ周知されてるんだろうか、というところは疑問に思います。

「防災に強い」だけでマンションの売りにはならない

編集部:
ちなみに、その200万円をかける価値で言うと、お二人はどうお考えになりますか?

のらえもんさん:
これは保険と一緒なんで。・・保険って、災害がこなかったら払い損ですけど、起こったら払い得じゃないですか。

和田さん:
仮に、本当に災害が起こって、被災したその時に「200万円払えば1週間電気が使えます。払いますか?」って聞くと、払う人はいると思うんですよ。でもそれって実際にはできないよね。子供が泣いてるとか、ご飯も食べられないとか、 そんな状況になったら、もう200万だったら全然払いますってことになると思うんですけど・・それを現時点で、というのは難しい話ですよね。

のらえもんさん:
なので、売値に200万円はなかなか乗せられないってことです。(新築として購入して)10年後に、じゃあ200万円かけて電池入れ替えますかっていうと、おそらく替えないですよ、みんな。

和田さん:
では50年分の蓄電池を先に売値に乗せて・・となると1000万円価格が上がっちゃう。

のらえもんさん:
それはちょっと重武装すぎますよね。まあでも世の中には確かに公開空地も一切設けずに、ものすごくでっかい門を作って、警備は24時間ずっと立ってます・・というようなマンションもあって。こうしたいわゆる”ゲーテッドマンション”はセキュリティの高さを売りにしていますが、周りより数百万高くても、入居する人はいるんですよ。だから、ゴリゴリの重武装をしたマンションを売るっていうのは、分からなくはないけど、普通の人はあんまりそこまでやらないんじゃないかな。

ちなみにHARUMI FLAGも、災害に対して重武装ですっていうのは、実はそこまで売りにしてないんですよね。HARUMI FLAGが1週間籠城できる仕様だから買います、っていう人は1人も知らないです。

和田さん:
それと、10年後にお金がかかるってことを知ってる人ってほとんどいないんじゃないかなって。僕は昨日、たまたまHARUMI FLAGの内覧に行ってたんですけど、そこについてあまり説明してなくて、なんなら延長保証加入のおすすめぐらいしてるぐらいなんで。

のらえもんさん:
10年後に交換ですよっていうのは聞かないと言わないっていう、そんな感じでしたね。
今の技術だと、やっぱり電池って10年近くしか持たないんですよ。・・いや、正確にいうと持つんですけど、100パーセントの充電ができなくなる。iPhoneもだんだんと電池がへたれてくるものでしょう。だから、規定の容量を満たすためには、10年後にまた替えないといけないんだけど、それにはお金がかかる。重要事項説明には書いてあると思います。高い消火器みたいなものです。

マンションの良し悪し、見分け方のポイントは?

編集部:
防災のことを考えてそうしたオプションをつけてるマンションもあると思うのですが、湾岸エリアでマンションを買うときに「この要素があるマンションを買った方がいい」というような良し悪しを見分けるポイントってありますか?

のらえもんさん:
震災前の企画か震災後の企画かで、やっぱり地震に対する意識っていうのは変わってるんで、防災を意識するんだったら、まあ、震災後の企画の方がいいんじゃないかなとは思います。

編集部:
震災後の企画というのは、震災後に竣工したのではなく、震災後に建築確認が降りてるということでしょうか。震災後に商品企画・建築設計が行われているという。

のらえもんさん:
そうですね。東雲で言うと、パークタワー東雲は明確に震災後の商品企画です。スカイズタワー&ガーデン、ベイズタワー&ガーデン・・パークタワー晴海もそうです。震災の記憶がまだ新しい頃の商品企画の物件は、震災前の物件よりもあからさまに武装は整っている気がします。建った時期でいうと、2013年以降じゃないでしょうか。

パークタワー東雲


あとは、浸水ハザードマップにかかってるところで、地下室に発電機や変電機があるのか、それとも上層階に上げているのかっていうのは、結構ポイントかな。
でも、東日本大震災後に設計されたマンションでも実は地下に入れてるマンションってあるんですよ。武蔵小杉の件があって、それ以降にみんな2階(以上)に上げているんですよね。有名な物件だと、プラウドタワー亀戸クロスからかな? 電気室を2Fに上げたのは。

和田さん:
そこは1つ、最新の新築マンションの傾向ではありますよね。

プラウドタワー亀戸クロス(右)。左手が同敷地内の商業施設「カメイドクロック」


のらえもんさん:
ハード面は進化しましたね。ソフト面で言うと、もうマンションによってあまりにも意識が違うので・・意識しているところはちゃんと毎年防災訓練して、何日分かの食料や水溜め込んで、みたいなのはありますけどね。
とは言っても、ちょっとカロリーを満たすくらいのクラッカーみたいなものや簡易トイレを、マンションの中で確保しているくらいですね。

和田さん:
そうですね。はっきり言って、(実際の震災時には)たぶん足りないと思います。
それこそ、ペットとか飼ってると、そういう備えをどこまでしてるのかとか、あると思いますし。やっぱり小さいお子さんがいらっしゃるとか、自分の家族に合わせた備えというのは結局、ソフト面もハード面もマンション側の備えがすべてを解決してくれるものじゃないと思います。

のらえもんさん:
タワマン住民は「避難所に避難しないでくれ」って言われるんです。
住民が一気に小学校とか避難所に行くとパンクしちゃうから、自分の家にいてくれって言われる。だからそのために、なるべく健康を保っておかないといけないってことですね。ちゃんと歩いて階段を登らないといけない。防災意識するんだったら、1ヶ月に1回ぐらい歩いて自分の部屋まで行ってみるっていうのはいいかもしれない(笑)

編集部:
ソフト面もハード面も、マンションがどんな設備をどれくらい確保してるかみたいなのは、確認しようと思えばできるかもしれない。できるけれども、それより大事なのは、そうしたマンションの備えはたぶん足りないし、自分たちでちゃんと準備しておくこと・・ということですね。

のらえもんさん:
そういうことですね。

和田さん:
タワマンは住まいとして(条件は)いいんじゃないかなと思います。ディベロッパーって、よくも悪くも「無駄なこと」をしないので・・普通の規模感のマンションだと防災備蓄しろって言われないとしていなかったりするので。

タワマン、震災時にエレベーターはどうなる?

編集部:
タワマンだと震災時にエレベーターが止まるんじゃないか、という不安は実際にはどうなんでしょうか?

和田さん:
それもさっきの武蔵小杉の話と一緒で・・非常用電源とか確保しておけば、普通は動くんです。ある程度は。
100戸ぐらいの規模のマンションだとちょっと怪しいかもしれないですけど、普通は湾岸エリアのマンションレベルだと、非常用発電機や蓄電池を置いているので、ある程度はどうにかなる。ただ武蔵小杉の場合は、これが地下にあって、浸水して動かなくなってしまったんで・・全員が階段で上らなきゃいけないということはない一方で、エレベーターも1基に制限されたりして通常時のように動くわけではないので、(タワマンであれば非常時も変わらず)便利だと思うのも、ちょっとおかしいかなという気はします。

のらえもんさん:
非常時はエレベーター1基だけ動かして、さらに全部の階に止まるみたいな感じなので。

和田さん:
最初にお話があったように、大規模な火災が起こりにくいというのは、湾岸エリアのいいところの一つなんじゃないでしょうか。大規模火災は、湾岸エリアではおそらく起こらない。そう考えると、極めて安全性も高いと思いますし、マンションごとの離隔がとれていて車も通りやすいし、自衛隊として救済もしやすいんじゃないかなと。
命はやっぱり守れると思いますよ。もちろん偶然外にいて、何かが倒れてきてしまったとか、可能性は色々あると思うので、 エリアで人が亡くなる危険性がないかっていうと、そうではないと思いますが・・亡くなる方が出るようなエリアじゃ基本的にはないのかなとは思います。

少なくとも、家の中にいて耐え凌げば大丈夫。あとは、そこでどれだけ快適に過ごせるかっていうところは個人の備えなのかなと。基本的なことですけれども。

やっぱり免震タワーが最強なのか?

編集部:
ちなみに、さっきちらっと出たんですけど、耐震・制振・免震って、一般消費者の皆さんもおそらくそれぞれ調べたりとかされると思うんですが、 結局、免震を選ぶっていうのが1番安心という解釈になるんでしょうか?

和田さん:
いや、そこはあんまり関係ないですね。建物によって、免震にはできないという状況もあったりするので。

のらえもんさん:
免震の方が一応良いとは言われてる傾向はありますが・・さきほど和田さんが言われたように、「塔状比」っていう問題があって、免震にしようと思ってもできないタワーってあるんです。
具体的にいうと、縦と横の比率が1:5を超えると免震構造にできないんです。要するに細長いタワーですね。そういう場合は耐震か制振にするしかない。 敷地形状と容積率とかの関係で一番最適なものを建設会社は選んでます。

編集部:
免震にしてないっていうのは、グレード下げたとかそういう話ではないよと。

のらえもんさん:
そういうことではないです。
事実として、東日本大震災が起こった時には、免震タワーの修繕費が少なかった、耐震タワーがその後の部分修繕で費用がかかったところがあった・・という事実はあります。ただ、では耐震タワーが被災して住めなくなったのかというと、そういうことはないですね。
タワマンって、やっぱり構造的には頑丈に作ってるんで、震災が起こったから倒れるとか、ぽっきり折れるとか、そういうのは基本的にはないですね。
湾岸エリアに限らず、超高層認定を取るっていうのは、そういうことです。 60メートル以上の建物っていうのは特別な審査基準があって、それに合格しないとそもそも建設できない。

湾岸エリアマンションの「杭」の話。内陸なら地盤は安心?


編集部:
あの、ちょっとまた建物の設計の話になっちゃうんですけれども・・これだけ深く杭を打ってるんですよ、だから大丈夫・・というのを見かけることもあります。それって、それだけ地盤が心配だっていう話も聞きますが・・

のらえもんさん:
それはその通りですね。

和田さん:
基本的には(杭は)地盤に届くためのものなので、なので杭が長いから云々ということはほぼないかなと。 

のらえもんさん:
N値っていう基準値があるんですよ。簡単にいうとつまり地盤の固さを表す値みたいなのがあって、N=50以上のところに基礎を打つんですね。 

編集部:
そこまで行って、ようやくこう、固定できるみたいなイメージ。

のらえもんさん:
そうです。剣山みたいな感じで、地盤面のところに刺す必要があるんですよね。
僕が聞いた中で湾岸エリアで1番深いのは70メートルくらい・・それくらい掘らないと地盤面に到達しないんです。

逆に勝どきあたりとかだとイメージと違って地盤面が浅いので、直接基礎なんですよ。杭は打ってないんです。東京湾っていうのは、ずっとこう川から流れてつくられているから沖に行けば行くほど深いんですよ。堆積物・堆砂物の上に埋め立て地を作っているわけだから。(※6)

※6
現在の利根川の流路は江戸時代初期に人為的に変えられたもの。それ以前の自然の状態では東京湾に流れ込んでおり、河川によって陸地から運ばれた土砂の堆積により東京湾の浅瀬はつくられた。江戸時代以降、その堆積地の上に人工的に埋立が行われて現在の姿に至っている。
>>参考:防災科学技術研究所 自然災害情報室「防災基礎講座:地域災害環境編 1.東京低地」


だから、本来のその地盤面っていうのは、むしろ杭を打たないと到達できない。でも、内陸でも10メートル、20メートルのところってありますよ。

和田さん:
なんなら40メートルとかもありますよ。

のらえもんさん:
湾岸エリアが特別超深いってわけではない。・・まあ確かに60メートル70メートル杭を打つのはちょっと深すぎるなと思うけど。 

編集部:
液状化の話も、災害時における湾岸エリアの危険性として言われるところでありますが・・

のらえもんさん:
そうですね。湾岸エリアで一部、確かに砂みたいな水が出たところはあるんですよ。それでじゃあ、建物が傾いたかっていうと傾いてはいないんですよね。

東日本大震災で浦安市で液状化による被害が大きくなったのには、二つ理由があって。一つはマンションのように地盤面まで杭を打ち込んでないから。表層部が液状化しちゃったら、家は傾くんですよ。だからそういう意味だと、戸建ての方がマンションより危ない。
もう一つは、広い液状化によって、水道管とか下水管が浮いてきちゃって、そのことでライフラインが寸断されてしまった。で、じゃあそれがその時、湾岸エリアで起こったのかって言うと、別にライフラインは寸断されてない。
あの震災で被害を受けていないのに、(本当に今後可能性として)あるのかな?とは思う。

私は震災の翌日に豊洲、有明、東雲、晴海も歩きましたから、確かに砂が出てるのは確認してるんですよ。例えばここは砂が出た、歩道のタイルが一部ちょっと隆起してるとか・・そういうのは見かけました。でも、水道管が道から飛び出てるのかっていうと出ていない。
怖いのは家ごと傾いて家の資産価値がゼロになることでしょう? それはないんじゃないですか、湾岸エリアで。マンションに住んでる限りではね。

いま湾岸エリア内で住み替えるなら?どのエリア?どのマンション?

編集部:
湾岸エリアとタワマンを愛するお二人ですが、次に住みたいところとして湾岸エリアのエリアとマンションを挙げるとしたらどちらになりますか?
・・と、その前に、住み替えるご予定はありますか?

のらえもんさん:
ありますよ。また湾岸エリアにするかなとは思ってます。・・湾岸をやめる時は、湾岸妖精って名前を名乗らないようにします。

編集部:
住み替えする理由は、やっぱり気分変えるとか?ライフステージに合わせてという・・?

のらえもんさん:
なんで住みかえるんですかって? そんなの・・マンションが好きだからです(笑)

編集部:
なるほど(笑)

のらえもんさん:
いいマンションがあったら住んでみたいです。

編集部:
では、住み替えるのであればどちらに?

のらえもんさん:
そうですね〜月島がいいですね。都内でも新旧のバランスが一番いい街だと思います。稀有な街かな。麻布十番ほどお高く止まってないし。

和田さん:
やっぱり改めて、ミッドタワーグランドはすごくいいなって思いましたね。

ミッドタワーグランド。月をモチーフとした最上階ペントハウスのデザインが特徴。遠方からでも際立っている


月島のもんじゃストリート。ストリート全体のちょうど中央付近にミッドタワーグランドが建つ


編集部:
他にピンポイントでマンションここがいいよねというところはありますか?

和田さん:
ブランズタワー豊洲は、一度住んでみたいなと思います。

のらえもんさん:
ああ、ブランズタワー豊洲はいいよね。うちの妻が、ブランズタワー豊洲に住みたいってよく言うんです。

編集部:
どこがポイントなのでしょう?

和田さん:
豊洲という街と、眺望・・向きによりますけど、基本的にひらけてるので。

のらえもんさん:
眺望が良くて。あとは小学校まで歩道のみで行けるんですよ。車が侵入するところがない。
豊洲駅も近い。で、豊洲エリアで1番新しい。・・もう最高じゃないですか。

ブランズタワー豊洲。下に写るのが隣接する江東区立豊洲西小学校


ブランズタワー豊洲の目の前。緑地と水辺に面しており開放感抜群


和田さん:
でも4階までのエレベーターってどうなんですかね。面倒くさいですかね?

のらえもんさん:
面倒くさいね。ただそれをステータスに感じるだけのちゃんと共用部の作りをしているっていうのがブランズタワー豊洲のいいとこでしょ。

編集部:
4階でエレベーターを乗り換えなきゃいけないということですか。

のらえもんさん:
そうです。都内のホテルみたいな造りですね。
それが日常になるとちょっと・・でもなかなかそういう(ラグジュアリーな造りの)マンションはないですけどね。

和田さん:
やっぱり住んでみたいなとは思いますね。

編集部:
湾岸エリアのマンションの魅力ってどこになりますか? 眺望と離隔?

のらえもんさん:
湾岸エリアで眺望が悪いところは住む意味がないですね(笑)

和田さん:
やっぱり空が見えるってだけで気持ちいいので。こうちゃんと視界が開けていて、下の方の階でも光がちゃんと入ってくるんで。

のらえもんさん:
明るいですよ。「眩しい!」って、しゃーってカーテン閉めちゃうくらい。

編集部:
マンションジャーナルで湾岸エリアのタワマン購入者の方にインタビューすると、みなさんやっぱり住み替えを前提にしていらっしゃって、かつ湾岸エリア内で住み替えを考えている方が多いなと思います。

のらえもんさん:
そうですね。湾岸エリアは住み替えがすごく多いし、でも湾岸から出ていく人はあんまりいないんですよね。 一度住んじゃうと、同じような値段で魅力的なところがそんなに多くないっていうことなんでしょうね。

そういうわけで、特に湾岸エリアで住み替えをする方に特化したサービスも作りました。「すみかえもん」っていうんですが。

編集部:
どんなサービスなんですか?

のらえもんさん:
個人情報(名前・電話番号・メールアドレス)の入力不要で、自宅の査定価格がわかるサービスです。入力項目をマンション名と部屋番号だけに絞り、入力開始から最短20秒以内で査定結果を表示できる。「今の部屋を売ったらどんな部屋に住めるのか」住み替え先をレコメンドしてくれるっていうサービスです。

すみかえもんサービスサイトより


けっこうね、「与えてる」サイトだと思うんですよ。もう、与えるだけ。査定結果って、不動産業者ももったいぶってなかなか教えてくれない。個人情報を全部渡さないと教えてくれないじゃないですか。そこを全部すっ飛ばして査定を出す・・っていう感じなんで。そういうサイトって実はあるようでなかった。電話がバーってかかってくるみたいなこともない。番号を入力してもらわないから、こちらも電話をかけようがない。・・でも、最近LINE登録だけを必須にしました。

編集部:
それはどういう意図で?

のらえもんさん:
査定結果がまた変わりましたとか、そういう通知を出すためです。 
これまでは連絡先をまったくとってないから、更新がお知らせできない。そういう最新情報の通知をやっぱりLINEで出したいなと思って。まったくユーザーさんと繋がりがなかったので。

編集部:
じゃあもうほんとに、ユーザーの皆さんは「調べて終了」って、それだけ。

のらえもんさん:
そう、そんな感じなんですよ。・・でもそれはそれでありかなと思って。また住みたい時に「すみかえもん」を思い出してくれたらそれでいい。

編集部:
ほんとに与えるだけのサイトなんですね。

のらえもんさん:
もし売却や住み替えを相談したかったら、LINEで連絡ちょうだいっていう感じですね。(※LINEで相談することが可能)

和田さん:
住み替えは、まず先に買い替え先の物件が見つからないと動けない。「すみかえもん」でいい物件が見つかりさえすれば、「あ、住み替えに動こうかな」って思ってもらえるかもしれない。そんなサイクルがまわるかは試してみたいですね。

のらえもんさん:
今後も和田さんとアップデートの構想は話していてアイデアはたくさんあるので・・ぜひご期待ください。

>>「すみかえもん」での自宅査定にご興味がある方はこちらから!

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・・いかがでしたでしょうか。いつの時代においても、どこの場所においても変わらないのは、「ここに住んでいれば絶対大丈夫」という場所や住まいはありません。「防災」は絶対解を選ぶことではなく、リスクが起こった場合を想定して対応策を用意しておくこと。自らの身を守るために行う、いわば生きるための必須スキルといえます。

湾岸エリアやタワーマンションにお住まいの方も、そうでない方も、そして住みたいと思っている方も、先行き不透明な世を生き抜くための手段の一つとして、今一度防災セットの準備や家族間での避難ルートなどの対応策を確認してみることをおすすめします。

また、湾岸エリア居住中で住み替えに興味がある方は、ぜひすみかえもん」で希望の住み替え先を探してみてくださいね。

株式会社Housmart
株式会社Housmart
マンションジャーナル編集部

「Housmart(ハウスマート)」が、購入や売却に必要な基礎知識・ノウハウ、資産価値の高い中古マンションの物件情報詳細、ディベロッパーや街などの不動産情報をお届けします。