奥渋谷エリアの中古マンション市況|トレンド分析 “住宅購入市場のいま”

2023.10.02
奥渋谷エリアの中古マンション市況|トレンド分析 “住宅購入市場のいま”

いつどこで売り出されるかわからない中古マンション。
現在、どこのエリアでの売り出し物件数が多いのか。価格として手堅いのはどのエリアなのか・・etc.
住宅購入市場におけるトレンドを、毎回1エリアにフォーカスして数値ベースで考察します。
「今から買うべきエリア」を探している方はもちろん、「今購入を検討しているエリアを買うべきか」を考える参考値にもなるはず。

今回は、奥渋谷エリアをPICKUP。
渋谷駅周辺の喧騒から離れ、閑静でリッチな雰囲気漂うこのエリアその不動産マーケットは今、どうなっているのか?
売り出し物件数と平米単価から分析してみます。

データで見る奥渋谷エリア

最高価格:6億9800万円 最低価格:1290万円
平均価格帯:約1億403万円
販売物件数:62
※2023年9月現在




↑ 平均価格と売出戸数




↑ 平均価格と平均平米単価


このエリアを一言で

👉売り出されている物件の4割が億ション
👉平均平米単価は宇田川町アドレスが高め
👉築50-60年は110㎡以上の物件が価格を押し上げ

今回は、渋谷区の奥渋谷エリアをピックアップ。渋谷駅から北側寄りの宇田川町、松濤、神山町の3アドレスで見てみた。宇田川町は9路線が利用できる渋谷駅(JR山手線・埼京線・湘南新宿ライン・井の頭線・東急田園都市線・東急東横線・東京メトロ銀座線・半蔵門線・副都心線)、松濤は神泉駅(井の頭線)、神山町は代々木公園駅(東京メトロ千代田線)も徒歩圏内であり最寄駅として利用できる。                                       

◾️この街の歴史・街並み・特色
「宇田川町」の地名は、代々木から井の頭通りに沿ってかつて流れていた宇田川という河川に由来する。「宇田川有楽街」という古くからの繁華街として栄え、現在ではオフィスビルや商業施設が集う渋谷の中心地であり繁華街としての側面を持っている。松濤・神山町エリアは「第一種低層住居専用地域」に指定されており、低層住宅が並ぶ高級住宅街である。松濤は江戸時代に下屋敷が置かれ、明治に入り下屋敷が鍋島家に払い下げられた後は、狭山茶を栽培するは「松濤園」という茶畑に。その後、茶畑は高級住宅街として変貌を遂げた。同じく神山町も江戸時代には下屋敷が置かれていた。現在の神山通りにはおしゃれなカフェやショップが点在し、通称「奥渋谷」とも呼ばれる人気エリアに。渋谷駅周辺の喧騒から一歩離れ、静かで雰囲気のある街並みが特徴だ。

◾️中古マンションの売り出し状況
本エリアは売出物件のうち約40%が億超え物件である超高価格帯エリアだ。その割合は、全体の3割が億ションの六本木エリアを超える。また、どの築年数でも平均平米単価が100万円を下らないことも奥渋谷エリアの特徴だ。平均平米単価をアドレス別に見ると、宇田川町が246万円/㎡、松濤が136万円/㎡、神山町が134万円/㎡と宇田川町アドレスが他の2つに比べて圧倒的に高額。宇田川町が他の2アドレスと比べて平米単価が高い理由として、宇田川町は平均価格が2億7751万円である総戸数503戸の大規模タワーマンション「パークコート渋谷ザタワー」売出物件数の大部分を占めているため。これに対し「第一種低層住居専用地域」に指定されている松濤・神山町は、低層マンションで構成されている。高級住宅街として知られる2アドレスであるが、物件面積は意外にも小さいサイズから揃っており、松濤が30㎡台と50㎡台のシングル・DINKs向け物件、神山町が20〜30㎡台のシングル向け物件を中心に売り出しが多い。全体として築50-60年の平均平米単価が約181万円/㎡と、築20〜50年の物件よりも他の築古物件と比べて高く高額になっている。築50-60年は110㎡以上の億超え物件(1億9800万円〜3億9800万円)が複数戸売り出されており平均を押し上げていることがその理由だ。

◾️今後の発展の見込み、再開発予定
本エリアでは渋谷で100年に1度と言われる大規模再開発が3つ進行中。宇田川町は「公園通り西地区市街地再開発」、松濤は「Shibuya Upper West Project(渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト)」、渋谷2丁目には「渋谷スクランブルスクエア 第Ⅱ期(中央棟・西棟)」の3つだ。宇田川町の「(仮称)公園通り西地区市街地再開発事業」は、渋谷区役所の南側区域の再開発計画。神南小学校と共同住宅「渋谷ホームズ」を一体化して建て替える官民一体のプロジェクトだ。事業協力者は東急不動産と清水建設。住宅、オフィス、店舗からなる地上34階の大型複合ビルが2026年に着工、2031年に竣工予定だ。松濤の「Shibuya Upper West Project(渋谷アッパー・ウエスト・プロジェクト)」は、2023年1月に閉業した東急百貨店の跡地に東急株式会社を含め事業主3社による再開発が進んでいる。賃貸レジデンス、リテール、ラグジュアリーホテルで構成された地上34階建の複合施設が2027年に完成する見込み。この再開発では、「ザ・ハウス・コレクティブ」のラグジュアリーホテルが日本初進出となる。渋谷2丁目で進行中の再開発「渋谷スクランブルスクエア 第Ⅱ期(中央棟・西棟)」は、東京急行電鉄株式会社・東日本旅客鉄道株式会社・東京地下鉄株式会社の3社による地上13階建の西棟と地上10階建の中央棟の大規模商業施設が建設される。「地上47階建の渋谷スクランブルスクエア第Ⅰ期(東棟)」は2019年11月に開業している。第二期の再開発工事は2027年の完成を目指し、既存建物の解体完了後に着工予定。

◾️この街の住みやすさ
9路線が乗り入れる巨大ターミナルである渋谷駅を庭にできるため、交通利便性は言うまでもなく大変便利だ。多彩な商業施設が集う渋谷周辺の生活利便施設も豊富に揃っている。渋谷駅直結の商業施設「渋谷ヒカリエ」の中にある食品専門スーパー「九州屋」があり、新鮮で国産の有機野菜が揃っている。渋谷駅東口から徒歩10分の場所にはスーパーの「ライフ渋谷東店」、神泉駅から徒歩2分のところには24時間営業の小規模スーパー「マルエツプチ 渋谷神泉店」や、渋谷駅から徒歩3分の場所にはドラッグストアの「マツモトキヨシ 渋谷Part1店」があり日用品の買い出しには困らない。JR渋谷駅から徒歩約13分の場所には約2000人を収容できるコンサートホール「渋谷公会堂(LINE CUBE SHIBUYA)」があり、アーティストの公演鑑賞ができる。神泉駅から約8分歩くと「鍋島松濤公園」があり、湧水地や子どもが遊べる遊具が揃っており春はソメイヨシノ、秋は紅葉など四季が楽しめる。代々木公園駅のすぐそばには噴水や花壇が整った「代々木公園」があり、春はお花見スポットとして楽しめるほか、サイクリングや軽い運動、散歩も楽しめる。松濤エリアには陶磁器専門の「戸栗美術館」や建築物や内装も見どころの「松濤美術館」があり、静かな雰囲気のある高級な住宅街で美術館巡りも楽しめそうだ。交通利便の良さ、多様な商業施設、文化施設、自然豊かな公園も揃った渋谷エリア。「職住遊」を兼ね備えた場所で、常に移り変わる時代の先端に身を置く都会的なライフスタイルを楽しみたい方には打ってつけの街だ。再開発内容を見ても、今後資産価値に翳りが見られる可能性も低いだろう。


エリア内のマンション・平米単価と販売戸数の推移

現時点で売り出し件数が多い宇田川町から、5戸以上売り出しのあった中古マンションの平米単価と販売戸数の推移を見てみました。

築3年のパークコート渋谷ザタワーは、2022年2月に244万円/㎡から上昇し続け2023年2月には292万円/㎡に。2023年7月には320万円/㎡まで到達し、2023年9月現在は平米単価319万円/㎡で推移しています。築43年のノア渋谷パート2は、2023年1月に91万円/㎡から2023年3月には101万円/㎡台に到達し、2023年6月まで101万円/㎡台で維持。2023年7月には124万円/㎡まで上昇し、2023年9月現在は平米単価121万円/㎡となっている。築50年のニュー渋谷コーポラスは、2022年9月から2022年12月まで130万円/㎡台後半で維持し、その後2023年1月には128万円/㎡まで下落。2023年3月以降から再び130万円/㎡台に戻り、その後は2023年4月から8月まで140万円/㎡台を維持。2023年9月現在はやや価格を下げ、平米単価135万円/㎡となっている。

👉パークコート渋谷ザタワー(総戸数503、2020年竣工)
👉ノア渋谷パート2(総戸数63、1980年竣工)
👉ニュー渋谷コーポラス(総戸数105、1973年竣工)

気になるあのエリアの最新市況データを見る方法

連載「トレンド分析 “住宅購入市場のいま”」では、今回のように毎回1エリアをPICKUPして、その売り出し状況を深堀していきます。

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