私は中古マンション購入を考える方に、管理費・修繕積立金の値上がりに気を付けるよう、必ず助言します。つい見落としがちな項目であるからです。
管理費と修繕積立金は、新築分譲時は低めに抑えられているのが一般的です。修繕費が必要になるのはまだ先ですし、そこにはマンションを販売するデベロッパー側の戦略もあります。
月々の負担が抑えられていることで、賃貸に住んでいるより購入した方がお得に見えるため、売りやすいのです。
しかし、
当初は管理費と修繕積立金がトータルで15,000円であったとしても、20年後に30,000円、中には40,000円近くに値上がりする可能性もあるのです。
この記事では、管理費と修繕積立金について掘り下げていき、中古マンション購入時に注意すべき点を示します。
監修者:針山昌幸
株式会社Housmart 代表取締役
宅地建物取引士・損害保険募集人資格
『中古マンション 本当にかしこい買い方・選び方』
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管理費とは
管理費は管理会社に管理を委託している場合、マンション管理会社に対して支払われます。
管理費は、
- 管理人さんの給与
- 建物、設備等定期点検費
- エレベーター保守料
- 植栽維持管理費
- マンション共用部分の水道光熱費
- 火災保険料
に充てられます。
管理は、不動産ディベロッパーの関連会社が新築時から継続的に担っているのが一般的です。時々、管理費がサービスの質に合っていないマンションもあり、中には他の管理会社に変更するマンションも見受けられます。
管理会社サイドも変更されてしまっては困るので、物価の上昇や消費税の変更がない限り、昨今はあまり値上げすることもないでしょう。
管理費の相場
ここでは、管理費がマンションの規模によってどのくらい異なってくるか、部屋面積が75㎡の場合で試算しました。総戸数だけでなく、管理会社や共用施設の中身によって価格は異なるため、幅があります。
総 戸 数 |
管 理 費 |
40戸以下(小規模) |
10,000円~20,000円以上のところも |
100戸(中規模) |
10,000円~13,000円 |
300戸(大規模) |
7,000円~10,000円前後 |
タワーマンション |
15,000円~20,000円前後 |
修繕積立金とは
修繕積立金は、大規模修繕に備えるため積み立てられる費用です。各マンションごとに今後30年間の長期修繕計画が定められており、その計画を基に大規模修繕では外壁・防水の修繕や給排水・空調の設備修繕が実施されます。
修繕の周期は、国土交通省から示されているマンション管理標準指針を参考に、各管理会社が新築時に計画を立案しています。大規模修繕は12年ごとを目安に予定されていますが、修繕する項目によって実施するタイミングが異なるため、築4~5年以降は毎年のように何らかの修繕が実施される計画となっています。
修繕積立金の相場
修繕積立金の徴収方法は、2通りあります。
- 大規模修繕前に一時金を徴収せず、徐々に修繕積立金が値上がりするパターン
- 毎月の負担を一定にする代わりに、大規模修繕実施前に一時金を徴収するパターン
大規模修繕前に一時金を徴収せず、徐々に修繕積立金が値上がりするパターン
下記は修繕積立金が徐々に値上がりする案で、どのくらい毎月修繕積立金がかかるか示した表です。小規模・中規模・大規模・タワーマンションといった規模が異なるマンションごとに、部屋面積が75㎡の場合を試算しました。
小規模マンション 総戸数29戸 5階建て
築年数 |
修繕積立金(月) |
1~3年 |
12,530円 |
4~7年 |
12,530円 |
8~11年 |
23,400円 |
12~15年 |
23,400円 |
16~20年 |
23,400円 |
21~24年 |
23,400円 |
25~30年 |
23,400円 |
合計 |
約750万円 |
中規模マンション 総戸数46戸 9階建て
築年数 |
修繕積立金(月) |
1~3年 |
6,360円 |
4~7年 |
8,330円 |
8~11年 |
11,280円 |
12~15年 |
14,230円 |
16~20年 |
17,180円 |
21~24年 |
20,130円 |
25~30年 |
24,560円 |
合計 |
約560万円 |
大規模マンション 総戸数183戸 9階建て
築年数 |
修繕積立金(月) |
1~5年 |
4,690円 |
6~10年 |
6,000円 |
11~15年 |
7,230円 |
16~20年 |
8,000円 |
21~25年 |
10,720円 |
26~30年 |
10,720円 |
合計 |
約284万円 |
タワーマンション 総戸数326戸 39階建て
築年数 |
修繕積立金(月) |
1~5年 |
11,300円 |
6~10年 |
20,300円 |
11~15年 |
32,390円 |
16~20年 |
37,280円 |
21~25年 |
37,280円 |
26~30年 |
33,520円 |
合計 |
約970万円 |
規模が異なると、修繕積立金にも影響を与えることが分かります。なお、新築マンションを購入する場合は、修繕積立基金が発生し、上記のタワーマンションの場合、10・20・30年目にも積立基金が50万円前後ずつかかる計画です。
毎月の修繕積立金を一定にするかわりに、
大規模修繕実施前の築12年・24年・30年目に一時金を徴収するパターン
ここでは、上記に挙げた総戸数46戸の中規模マンションを例に、一時金を徴収した場合、どのような試算になるか示します。
築年数 |
修繕積立金(月) |
一 時 金 |
1~3年 |
6,360円 |
|
|
4~7年 |
6,360円 |
|
|
8~11年 |
6,360円 |
|
|
12~15年 |
6,360円 |
12年目 |
約60万円 |
16~20年 |
6,360円 |
|
|
21~24年 |
6,360円 |
24年目 |
約160万円 |
25~30年 |
6,360円 |
30年目 |
約110万円 |
このパターンの場合、大規模修繕の前にまとまったお金を回収するため、一括で払えない人がいた場合、大規模修繕が実施できないという恐れがあります。
マンションは築年数が経つと、入居者も高齢化率が高くなっていたり、賃貸で貸し出している割合も高くなるため、回収できないリスクも考えた方がよいでしょう。また、マンションの売却と大規模修繕のために回収される費用発生が重なった場合、新たに購入する人に支払いが生じます。その場合、多少売却に時間がかかることが予想されます。大規模修繕費用分の値下げ交渉が生じる場合もあります。
中古マンション購入時にチェックする項目
ここまでの分析を踏まえ、中古マンションを購入する際、事前に確認しておいた方が良い点は、下記のとおりです。
管理や修繕の「現状」と「今後」を確認しましょう
長期修繕計画をチェックすることで、この先30年の費用負担が予想出来ます。どの設備にどのくらいお金がかかるのか、実際に確認してみましょう。
新築時であっても計画案をモデルルームで見ることができます。また中古マンションの場合は、管理会社に問い合わせれば見ることが出来るので、事前に見ておきましょう。
また中古マンションの場合、管理や修繕の現状を確認したい場合は、「
管理に係る重要事項調査報告書」を参考にするとよいでしょう。
この報告書には、
- 管理体制
- 管理費等の滞納額
- 共用部分の修繕実施状況
- 今後予定されている工事の概要
などが記載されています。
管理費等の滞納はどのマンションにも見受けられ、中には100万円以上のところも。きちんと催促してくれる管理会社であることも大切です。
資金計画
住宅ローンを完済したあとも、管理費と修繕積立金はマンションを所有している間、費用が発生します。
部屋を貸し出す場合も管理費・修繕積立金の負担があります。そのため、値上がりがあった場合は、当初見越していた手取りの収入が少なくなる可能性もあります。
中古マンションを購入する前に資金計画を考える際は、住宅ローン以外にも管理費・修繕積立金などの費用にも目を向けた上で計画を立てましょう。
管理費・修繕積立金が他のマンションに比べて高かった場合
マンションを売却する際、管理費・修繕積立金が高いと売りにくいのでしょうか?
私は、管理がきちんと行われており、サービスの質が保たれている中古マンションであれば問題ないと考えています。
24時間有人管理は入居者が安心・安全に過ごすことが出来ますし、コンシェルジュサービスではクリーニングや宅急便をお願いすることも出来ます。そのため、管理費はマンションの利便性の対価ともいえるでしょう。また、修繕積立金に関しても、適宜修繕していくことでマンションを綺麗に保つことができ、資産価値の向上にも繋がります。
戸建を購入した場合でも、自身でリフォームを随時行っていくことを考えれば、入居者で負担を分担しマンションにお金をかけてあげるのは当然のことと言えるでしょう。
まとめ
昨年、東京都がようやくマンション全物件の管理状況を把握することが決定しました。
しかし、自治体においてもマンションの実態をまだ掴み切れていない状態です。現状では管理や修繕に差異があり、マンションによっては行き届いていない場合もあるのです。
マンション運営の主導権は管理会社ではなく、入居者一人ひとりが握っていくべきです。
大規模修繕の金額が高額になることが予想されたマンションでは、設備の管理や小規模の修繕工事を発注する際に、事業者を公募したり、複数の事業者から見積もりを取るなど、支出の抑制に努めたといいます。その結果、修繕積立金のみで大規模修繕を賄うことができました。
中古マンション購入後は、管理を管理会社任せにするのではなく、総会にはなるべく出席しましょう。結局管理費や修繕積立金などのマンションの運営費用を払っているのは所有者に他なりません。何か問題があった場合には、入居者自身の知恵もしくは第三者の力を借り、居住者みんなで協力しながら解決に導いていくことが大切なのです。
数多く存在する中古マンション購入の確認必須ポイントの中でも、管理費と修繕積立金の値上がりを想定しておくことはもっとも重要な内容のひとつです。しっかりと確認しておきましょう。