マンションを売却するか賃貸に出すかの判断基準とは?

2018.02.08
マンションを売却するか賃貸に出すかの判断基準とは?
今住んでいるマンションを、売却するか賃貸するか・・・一体、どちらが良いのだろう?
このように、売却か賃貸で迷う人は少なくありません。売却にも賃貸にも、メリット・デメリットがあります。一概にどちらが安心・得する、というものではないため、ご自身の状況に合わせて判断していくことが必要です。この記事では、売却と賃貸それぞれのメリット・デメリット、また、賃貸借契約の種類について解説します。

監修者:針山昌幸

針山昌幸 プロフィール写真

株式会社Housmart 代表取締役
宅地建物取引士・損害保険募集人資格
『中古マンション 本当にかしこい買い方・選び方』
(Amazonランキング・ベストセラー1位)

売却か賃貸か? それぞれのメリット・デメリット

売却・賃貸のどちらが良いかは、ご自身の状況やプラン、物件、そのほか様々な条件によって異なるため、一概に「売却がいい」「賃貸はだめ」などは言えません。まずは、それぞれのメリット・デメリットをまとめました。 それぞれ順番に解説していきますので、ご自身の条件や要望に照らし合わせながら読み進めてみてください。
メリット デメリット
売却
  • 現金が手に入る
  • ランニングコストがかからない
  • 住居用不動産の税制優遇が利用できる
  • いつ売れるかわからない
  • 売却前に新居を購入すると住居費が二重にかかる
賃貸
  • 不労所得を得られる
  • 経費として計上できる
  • 将来的に居住することも可能
  • 空室期間は収入が得られない
  • 経年劣化による家賃下落リスクがある
  • ランニングコストがかかる
  • 金融機関との相談が必要
  • 居住用の税制優遇が受けられない
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売却のメリット

契約が完了し握手する人の写真まずはマンションを売却するときのメリットについて。不動産を売却すると3つのメリットがあります。
  1. 現金が手に入る
  2. ランニングコストがかからない
  3. 住居用不動産の税制優遇が利用できる
>>マンション売却の流れと注意点を専門家が徹底解説!【保存版】

現金が手に入る

不動産を売却すれば、売却代金が一括で手元に入ってくることになります。ただ、その場合は、仲介手数料や登記関係費用などの諸費用がかかり、さらに住宅ローンを完済する必要があります。その諸費用とローン完済を終え、残ったお金が手元に残る現金になります。相場や住宅ローン残債額にもよりますが、不動産を売却することで100万円単位の現金を手にできる場合もあります。

ランニングコストがかからない

売却して物件を手放せば、ランニングコストはかかりません。修繕維持積立金や固定資産税など、賃貸で発生するランニングコストは変動する可能性があります。つまり、ランニングコストがかかるということは、将来的な支出額が不確定であるということ。対してランニングコストがかからない売却は、将来的に収支計算がしやすいというメリットにも繋がります。

住居用不動産の税制優遇が利用できる

また、自分が入居している不動産の売却であれば、3,000万円の特別控除を利用できます。この税制優遇が利用できないと、高税率の譲渡所得税がかかるため、この優遇が利用できるメリットは大きいといえます。>>マンション売却にかかる税金の計算方法とチェックポイント

売却のデメリット

家族の折り紙を包む営業マンの手の写真一方で、マンションの売却のデメリットは、いつ売れるか分からないという点から発生します。
  1. いつ売れるかわからない
  2. 売却前に新居を購入すると住居費が二重にかかる

いつ売れるかわからない

不動産の売却活動は、中古マンションであれば、査定や引渡しなど、売却活動以外も含めると、不動産の売却が完了するまで半年〜1年程度かかります。マンションの売却は元々時間がかかる上に、不確定要素が多くなるため、売れるタイミングが読みづらいというのがあります。たとえば、自分の売っている不動産よりも、1割安い金額で同じようなマンションが売り出されていたとします。そのような場合は、自分の不動産の売り出し価格を下げない限り、どんどん売却期間が延びていく可能性が高くなります。

売却前に新居を購入すると住居費が二重にかかる

また、いつ売れるか分からないというデメリットは、不動産を買い替えるときは特に気をつけなければいけません。不動産を売却する前に新しい住居を購入すると、ダブルで住居費がかかるからです。ダブルで住居費がかかる期間は、不動産の売却が完了するまで続きます。

賃貸のメリット

内見をする家族と営業マンの写真次に、マンションを賃貸したときのメリットです。以下のようなメリットがあります。
  1. 不労所得を得られる
  2. 経費として計上できる
  3. 将来的に居住することも可能

不労所得を得られる

賃貸の最も大きなメリットは、不労所得を得られるという点です。不動産を賃貸に出して賃借人が付けば、賃料収入が定期的に入ってきます。また、不動産賃貸には業務が発生しますが、これらは賃貸管理会社に依頼することも可能です。
  • 賃借人募集
  • 賃借人の内見案内
  • 賃貸借契約の締結
  • 賃料の回収
  • 退去時の立会い
つまり、オーナーとなれば特に何もせずとも継続的に賃料収入が得られるというわけです。

経費として計上できる

また、不動産の賃料収入は不動産所得になり、所得税がかかってきます。しかし、不動産の場合は経費として計上できる項目が多いため、所得から差し引ける金額が大きくなります。つまり、節税効果が高くなるということです。具体的に経費として計上できる項目は以下の通りです。
  • ローンの利息部分
  • 管理費、修繕積立金(マンションの場合)
  • 退去時の補修費用
  • 室内の設備入替費用(給湯器交換など)
  • 賃貸管理会社へ支払う費用
  • 固定資産税、都市計画税
  • 物件取得時の経費(仲介手数料など)
  • 減価償却費
このように、賃貸している不動産の維持・管理に関する費用は、全て経費として計上することができます。

減価償却費用とは?

この経費のうち、最も大きな金額になるのが「減価償却費」です。減価償却費とは、不動産を取得したときの費用を、毎年経費として計上できるものになります。計算式は、「建物購入価格×0.9×償却率×経過年数」という計算になりますが、計算式や計上方法は複雑なため、計算自体は不動産会社の担当者に依頼しましょう。仮に、減価償却費が50万円と算出されれば、一定期間は年間50万円を経費として計上できます。つまり、月額10万円の家賃を徴収しているマンションであれば、5か月分の賃料所得を相殺して0円にできるということです。

不動産所得は総合課税

不動産所得は総合課税という仕組みの税率で、ほかの所得と合算できます。つまり、会社員であれば給与所得と合算して計算できるということです。ただ、前項で解説したように減価償却費をはじめ、不動産所得は経費項目が多くなります。また、減価償却費のように、高額な費用を継続的に計上することも可能です。そのため、本来の所得を大きく減額することができ、節税効果が高くなるのです。

将来的に居住することも可能

不動産を賃貸するということは、その不動産を所有し続けるということになります。そのため、将来的にその不動産に移り住むことができるという点もメリットです。ただし、その場合は賃借人との契約を終了する必要があります。賃貸借契約を結ぶと、正当な理由がない限り賃借人を一方的に退去させることはできません。そのため、「家賃を支払わない」などの正当な理由がなければ、賃借人が退去する意思を見せない限り退去させることは難しいでしょう。つまり、不動産オーナーが賃貸物件に移り住むタイミングは、その不動産の賃借人が退去するタイミングだけということです。このように、不動産を賃貸すると将来的に移り住むことは理論的には可能なものの、現実的には移り住むタイミングの自由がきかない点は認識しておきましょう。

賃貸のデメリット

内見をする夫婦と営業マンの写真つづいて、不動産を賃貸するデメリットは以下の通りです。
  1. 空室期間は収入が得られない
  2. 経年劣化による家賃下落リスクがある
  3. ランニングコストがかかる
  4. 金融機関との相談が必要
  5. 居住用の税制優遇が受けられない

空室期間は収入が得られない

賃料収入を得られるということは、賃借人が付いているという前提です。そのため、空室期間は賃料収入が途絶えることになります。この点から、賃貸をしても安定的に収入が得られる安心感は確証できないでしょう。

経年劣化による家賃下落リスクがある

また、マンションは築年数を経過するごとに傷んでいきます。外部の塗装やタイルが劣化してきたり、室内のクロスやフローリング、水まわり設備などが劣化してきたりします。これにより、家賃はずっと一定ではなく、築年数によって下がっていくのが一般的です。このため、築年数を経過するごとに収入が減っていく点には要注意です。

ランニングコストがかかる

また、先ほどメリットで解説した計上できる経費項目は、定期的に発生する支出(ランニングコスト)になります。
  • ローン支払い金額
  • 管理費、修繕維持積立金(マンションを賃貸する場合)
  • 固定資産税、都市計画税
  • 退去時の補修費用
  • 賃貸管理会社へ支払う費用
  • 室内の設備入替費用(給湯器交換など)
これらのランニングコストは、たとえ空室で賃料収入が途絶えていたとしても費用としてかかってきます。

金融機関との相談が必要

また、仮に住宅ローンを組んで購入した自宅を賃貸に出す場合には、金融機関への相談が必要になります。なぜなら、住宅ローンはあくまで「居住用不動産の購入」に対して融資しているので、それが賃貸になると「投資用不動産」と見なされるからです。投資用不動産の場合には、住宅ローンより金利が高いアパートローンや不動産投資ローンでないと融資してくれません。入居用不動産を賃貸に出すときは、金融機関へ相談し、住宅ローンからアパートローンへ切り替えるケースもあります。その場合には金利が上がり、支払い額が上がるリスクが高くなります。

居住用の税制優遇が受けられない

また、一度賃貸に出すと、居住用不動産に関する税制優遇が受けられなくなります。代表的なところで言うと、「住宅ローン控除」や「3,000万円の特別控除」がこれにあたります。住宅ローン控除とは、毎年ローン残債の1%が税金から控除される税制優遇です。この税制優遇は、あくまで住宅ローンに対しての優遇なので、住宅ローンからアパートローンへ借り換えたら適用されません。また、3,000万円の特別控除とは、売却時に売却益(譲渡所得)が出ても、3,000万円まで控除してくれる税制優遇になります。この優遇も、あくまで自分が入居している不動産の売却時に適用されるので、賃貸した時点で適用できません。>>マンション売却にかかる税金の計算方法とチェックポイント

賃貸契約の種類

最後に、賃貸する場合の2通りの契約方法をご紹介します。
  • 通常の賃貸借契約
  • 定期借家契約
多くの賃貸不動産が通常の賃貸借契約を締結しています。その場合、賃借人が退去する意思を示さない限り、オーナーの一存で退去させるのは難しくなります。基本的には居住対象としては想定せず、賃貸専用マンションと考えることになります。一方、定期借家契約とは、期限を決めて必ず賃貸借契約を解除できる契約になります。たとえば、1年の期間を定めて定期借家契約を結んだとします。そうすると、契約締結から1年経過時点で、賃借人が住み続けたいと主張しても、必ず賃貸借契約は解除できます。ただし、期限を区切った契約になるので、その分賃料は相場以下の金額になる点はデメリットとして認識しておきましょう。たとえば、「○○年後に自分で住みたい」など将来的なプランがある場合l通常の賃貸借契約を結ぶと、その時期に移り住めるかわかりません。その場合は、定期借家契約を結ぶことで、期限が来たら必ず賃貸借契約を解除できるようにしておけます。

自分や物件の現状、将来のプランを軸に賃貸か売却か判断を

このように、賃貸には賃貸のメリット・デメリットがあり、売却には売却のメリット・デメリットがあります。不動産は売却してしまった方がその後の手続きなどを考えると楽です。一方、賃料が高く設定できて、空室リスクが小さい立地であれば、賃貸した方が将来的に良い財産になるかもしれません。マンションの立地や物件状況については、売却もしくは賃貸を相談している不動産会社の担当者に聞いてみて、判断材料を集めるのも良いでしょう。売るにしても、貸すにしても、ご自分の現状や今後どのように所得を得たいかという点が何より大切です。ご自身やご家族の今と将来を改めて考え、賃貸するか売却するかを判断すること。それが、後悔しない売却・賃貸に繋がります。

早く・確実に売却するためには?

早く確実なマンション売却を叶えるためには、適正価格で売り出さないといけません。 そのためには、効率的な情報収集とロジックに基づく値付けが必要です。2022年現在、中古マンションの価格が上昇している点に注目が集まっています。が、実はその一方で、悲劇も起こっています。「今ならば高値でも売れるはず」と考えて強気の価格をつけたところ、買主からまったく振り向いてもらえず売れ残り続け泥沼の長期戦に・・・というような事例が少なくないのです。売れ残りにならないためには、適正に市場を見極めること。そのための判断材料となる情報収集に役立つのが、アプリ「カウル」です。カウルアプリ住宅ローンシミュレーター画像カウルには、売却に役立つ便利な機能が揃っています。
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株式会社Housmart
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マンションジャーナル編集部

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