中古マンション購入で絶対に利用したい減税・補助金制度|条件や注意点を解説
2017.08.28
日本では、将来的に2,000万戸以上もの空き家が発生するとの深刻な予測もされています。こうした状況を受けて、政府はこれまで住宅政策として手薄だった既存住宅の流通促進に力を入れ始めました。そのため、住宅の取得や活用に関する様々な法整備が進んでいます。より住みやすい家を有利に手に入れるためにも、各制度の概要をチェックしましょう。
監修者:針山昌幸
住宅ローン控除
概要
住宅を新築、取得または増改築し、その際に金融機関などから住宅ローンを借り入れる場合に、4,000万円以下のローン金額部分の1%について居住から10年(増改築は5年)にわたって毎年所得税および住民税の税額控除が受けられる制度です。4,000万円×1%×10年で、最大40万円が毎年控除されるとても大きな減税制度です。さらに、条件を満たした認定住宅だと元の対象ローン金額が5,000万円まで引き上げられるため、控除金額が最大50万円にもなります。受けるための条件
新築住宅、中古住宅、増改築の場合でそれぞれ条件が異なります。新築住宅
- 新築または取得の日から6ケ月以内に居住し、適用を受ける各年の12月31日まで引き続き住んでいること。
- 控除を受ける年の合計所得が3,000万円以下であること。
- 対象の住宅の床面積が50㎡以上であり、さらに2分の1以上が自分で住むためのものであること。
- 10年以上のローンであること。(勤務先からの1%以下のローン、親族や知人からの借入金は対象外)
- 住み始めた年とその前後2年間の計5年間に、居住用財産(マイホーム)を譲渡した場合の長期譲渡所得の課税の特例などの適用を受けていないこと。
中古住宅
上記の新築住宅の条件に加えて下記の条件を満たすこと。- 建築後に使用されたものであること。
- 次のいずれかに当てはまること。 イ.築25年以内であること(マンションなど耐火建築物の場合)。 ロ.一定の耐震基準を満たしていること。 ハ.上2つに該当しない場合は、住み始めるまでに耐震改修を行うこと。
- 生計を一にする家族などからの取得でないこと。
- 贈与による取得でないこと。
増改築
上記の新築住宅の条件に加えて下記の条件を満たすこと。- 自分の所有、かつ自分で済むための家ついて行う増改築であること。
- 次のいずれかの工事に該当するものであること。 イ.増築、改築、大規模な修繕または模様替えであること。 ロ.マンションの場合は、所有する部屋の床、階段または壁の過半について行うリフォームであること。 ハ.居室、調理室、浴室、トイレ、洗面所、納戸、玄関または廊下の一室の床または壁の全部について行うリフォームであること。 ニ.一定の耐震リフォームであること。 ホ.一定のバリアフリーリフォームであること。 ヘ.一定の省エネリフォームであること。
- 工事金額が100万円を超えていて、2分の1以上が自分で住むための部分の工事費用であること。
注意点
- 控除金額はあくまでも「最大」です。所得税を主にした控除という仕組み上、そもそも所得によっては恩恵を最大限受けることはできません。
- ローン金額が4,000万円未満の場合、その金額×1%となるため最大額ではなくなります。 また、10年にわたって毎年計算されるため、その間にローン残額が4,000万円を切った場合も同様です。
- 10年の間にローンを完済すると控除を受けられなくなります。
- 住民税の控除は、「所得税で控除しきれなかった額で、前年度の課税所得7%までが上限」となります。
- 耐震、バリアフリー、省エネの各リフォームはそれぞれ別の控除制度もあります。
- 平成31年6月30日までに入居する場合に限られます。ただし、これまでも金額等を変更しながら同様の控除制度を繰り返し延長してきたため、何らかの控除制度がそれ以降も実施される可能性があります。
すまい給付金
概要
消費増税に合わせて設けられた制度で、消費税が8%に引き上げられた現在では最大30万円、今後10%に引き上げられた際には最大50万円の給付を受けられます。支払っている所得税が少ないと恩恵を受けにくい住宅ローン減税のデメリットを補い、逆に消費増税の影響を受けやすくなる所得が少ない人ほど給付額が大きくなる制度となっています。受けるための条件
家そのものの条件の他に、対象者にも条件があります。対象者
- 住宅を取得して持ち分を有し、自分で住む。(持ち分があればいいため、共有する配偶者も受け取り可。)
- 収入が一定以下(消費税8%の現在は目安510万円以下、10%時には目安775万円以下)。
- 住宅ローンを利用しない場合は、50歳以上。
新築住宅
- 床面積が50㎡以上。
- 施工中等に第三者の現場検査を受け、以下のいずれかの条件に該当する。 イ.住宅瑕疵担保保険へ加入。 ロ.建設住宅性能表示を利用。 ハ.住宅瑕疵担保保険法人により保険と同等の検査を実施。
- ローンを利用しない場合は、フラット35S(住宅金融支援機構の住宅ローン商品)と同等の品質基準を満たしていること。
中古住宅
- 床面積が50㎡以上。
- 売買時等に第三者の現場検査を受け、以下のいずれかの条件に該当する。 イ.既存住宅売買瑕疵保険へ加入。 ロ.既存住宅性能表示制度を利用。 ハ.築10年以内で、住宅瑕疵担保保険に加入または建設住宅性能表示を利用。
注意点
- 800万円程度以上の収入がある方は利用できません。対象範囲の収入でも、収入が高くなるにつれて給付額が下がります。
- あくまでも「消費増税に対する救済措置」であるため、中古の場合は消費税が発生する「宅建業者からの購入」のみが対象で、「個人売主からの購入」はそもそも消費税がかからないため対象外となります。
- 消費税10%への増税が平成31年10月の予定であるため、平成33年12月までに入居する場合に限ります。
贈与税の非課税制度(軽減措置)
概要
通常は親や祖父母から贈与を受ければ贈与税が発生しますが、住宅購入のために受けた贈与については最大で1,200万円まで非課税(消費税10%時には最大3,000万円)となる制度です。なお、本制度の限度額を超える資金の贈与を受ける場合には、さらに通常の基礎控除(110万円)または相続時精算課税の特別控除(2.500万円)を適用することができます。受けるための条件
贈与税は人間関係に絡むものであることから、物件そのものというよりも対象者への条件が多くなっています。対象者
- 贈与を受けるときに国内に住所があること。
- 直系の父母または祖父母からの贈与であること(配偶者の父母等はあたらない)。
- 20歳以上であること。
- 所得が2,000万円以下。
- 贈与を受けた翌年3月15日までに住宅を取得等して住む、または近日中に住むことが確実であること(遅くとも翌年末までに住まないと適用外)。
- 親族などから取得した家ではないこと。または親族などとの請負契約で新築や増改築をしたものではないこと。
新築住宅
「床面積が50~240㎡で、半分以上が自分で住むためのものであること」のみです。中古住宅
上記に加え、以下の条件を満たす場合。- マンションなど耐火建築物の場合、築25年以内。
- 一定の耐震基準に適合すること。または、耐震改修を行うこと。
増改築
上記面積条件に加え、以下の条件を満たす場合。- 自分で所有して住んでいる家屋であること。
- 次のいずれかの条件を満たす場合。 イ.大規模な修繕または模様替えであること。 ロ.マンション等については、床、階段、室内側壁等の過半のリフォーム。 ハ.居室などの一室の床または壁全部についてのリフォーム。 ニ.耐震リフォーム。 ホ.バリアフリーリフォーム。 ヘ.エネルギー合理化についてのリフォーム。 ト.給排水管または防水についてのリフォーム。 チ.省エネリフォーム。
- 工事金額が100万円以上。
注意点
- 平成26年までの旧非課税制度や震災非課税制度の適用を受けた場合は利用できません。
- 消費税10%に増税の際は限度額が上がりますが、前述のすまい給付金と同様に個人間の中古住宅売買には適用されません。
- 平成33年末までに契約が必要です。
リフォーム補助金
概要
中古マンションストックや空き家の増加とともにリフォームの注目度が年々高まっていますが、既存住宅の質の向上と子育てしやすい環境整備を図って設けられた制度がリフォーム補助金(長期優良住宅化リフォーム推進事業)です。この制度では最大250万円の補助金が支払われますが、リフォームを推進する事業者に補助金が支払われるものであり、購入者は間接的な恩恵を受けるという仕組みになっているのも特徴です。受けるための条件
申請可能なのは施工業者または買取再販業者(中古住宅を買い取った後リフォームして転売する業者)に限られ、さらに以下の条件を満たす必要があります。- 構造躯体等の劣化対策、耐震性、省エネ対策、維持管理や更新のしやすさ、(マンション等の場合はさらに高齢者対策、可変性)について一定の基準を満たすこと。
- 省エネタイプの場合はマンションで55㎡以上など、事業や住宅の種類ごとに定められた一定の広さの要件を満たすこと。
- リフォーム工事着手前に登録者によるインスペクション(状況の調査)を実施すること。
- リフォーム工事の履歴と維持保全計画を作成すること。
- 原則として平成30年2月16日までに工事の完了報告書が提出できること。
注意点
- 着工前にインスペクションを実施しないと対象外になってしまうため、スケジュールを含めて施工業者と入念に打ち合わせをすることが重要です。
- 類似の制度が引き続き実施される可能性はありますが、条件が変わることがあるため都度確認が必要です。
まとめ
各制度の詳細な条件はやや複雑ですが、何となくのイメージはつかめたでしょうか。せっかく整備されている各制度をきちんと把握しておくことは、お得に良質な住宅を手に入れるために大切です。しっかり理解して、賢く住宅を購入しましょう。※本記事中の制度条件は多少簡略化して紹介している部分がございます。また、記事掲載時点の制度内容を紹介していますが、これらの制度は頻繁に見直しが行われますので、実際に制度を利用される場合は十分にご確認ください。株式会社Housmart
マンションジャーナル編集部
マンションジャーナル編集部
「Housmart(ハウスマート)」が、購入や売却に必要な基礎知識・ノウハウ、資産価値の高い中古マンションの物件情報詳細、ディベロッパーや街などの不動産情報をお届けします。