手付金とは?頭金・諸費用との違いから相場、NG事項までプロが徹底解説!
2015.04.05

この記事の重要ポイント!
- 手付金とは、不動産の売買契約をお互いにキャンセルさせないためのお金
- 手付金は現金で用意する
- 頭金とは、住宅を購入する際に住宅ローンを借りずに物件金額の一部を現金で支払うためのお金
- 手付金は、決済時に「頭金」としてそのまま売主に支払う
- 諸費用とは、住宅を購入する際に物件金額以外に必要になる仲介手数料などの費用
監修者:針山昌幸

手付金とは?なぜ手付金が必要なの?


手付金の相場はいくら?
では、売買契約時に先に支払う手付金は、どのくらい準備すれば良いのでしょうか。一般的な手付金の金額は物件価格の5%〜10%と言われています。中古住宅の売買の際は、基本的に相場は5%です。大手不動産会社が仲介(不動産購入のお手伝い)をしている場合は、5%未満では購入申込を受け取ってもらえません。なぜかというと、手付金の金額が少ないと契約キャンセルの可能性が高まるため、売主側にとっては大きなリスクとなるからです。また、売買契約がキャンセルになった場合、買主は不動産会社に支払う仲介手数料を一部、支払わなくてすみます。不動産会社は売買契約がキャンセルになって売上が下がることを嫌がるので、手付金をなるべく多く買主に支払って欲しいのです。売買契約を行うためには、準備、調査、契約書作成など、多くの準備が必要であり、多大な労力がかかります。万が一それがキャンセルになれば、不動産会社にとってはマイナスです。そのため、大手不動産会社は「手付金が5%未満の購入申込は受け付けない」という社内規定を設けているのです。ただ、物件金額が高くなれば高くなるほど、手付金の金額も大きくなります。どうしても手持ちの現金が物件金額の5%に満たない場合は、不動産会社の営業マンに相談してみましょう。手付金を100万円準備することができれば、売主を説得して契約が成立するケースもあるなど、可能性はゼロではありません。
手付金の金額を高くした方が良いケースとは?

「手付金をローンで借りるのは絶対NG」なワケ
手付金を一時的に用意しなくてはならないケースで絶対にしてはいけないことは、手付金をカードローンなどで借金して準備することです。これは、借金があると契約後の住宅ローン審査が通らなくなる可能性が極めて高くなるためです。住宅ローンを借りる予定の人は、カードローンで手付金分の借り入れをすることは絶対に避けてください。手付金が用意できない場合はどうすればいい?
基本的にどんな取引であっても、手付金なしで売買契約はできません。手付金なしの取引は、買主が支払いを全額「手持ちの現金」で行う「売買契約と決済(引き渡し)同時取引」に限られます。手付金を用意できない場合に、よく行われるのが親からの借り入れや贈与です。親からの借り入れで手付金を準備し、フルローンで手付金分の現金が戻ってきたらまた親に返す、という方法がしばしば取られます。金融機関を利用せず、ご家族の中でお金の融通をして頂く、という形です。
不動産の手付金は現金での準備が必須

「持ち回り契約」って?手付金はどうなるの?
売買契約は買主・売主が同席して行う事が一般的ですが、買主・売主の日程の都合が合わない場合はそれぞれ別に契約を行う「持ち回り」と呼ばれる方法をとります。持ち回り契約の場合、手付金を一旦不動産会社に預ける形になります。この際、手付金の「預かり証」を不動産会社に発行してもらいます。後日、売主が手付金の受け取りを行うと、領収書を売主が発行します。この領収書を不動産会社経由で受け取ることで、手付金を支払った証拠になります。手付金が戻ってくるパターンとは?

- ローン特約が適用になるとき
- 売主が手付放棄したとき
- 売主が契約違反をしたとき
【1】ローン特約が適用になるケース
「ローン特約」とは、住宅の売買契約締結後において買主が住宅ローンを組む際に、金融機関の審査を通らずローン借り入れができなかった場合に売買契約をペナルティ無しで解除できる条件をつけることを指します。不動産取引の3ステップのうち「売買契約」が終わった後は「住宅ローン審査」を行います。このローン審査に落ちてしまった場合は、買主は不動産を購入することはできませんので、売買契約は「白紙」の状態に戻ります。ローン特約の適用により白紙解除が行われると、契約する前の状態に戻さなくてはいけません。当然、売主に支払った手付金が戻ってくることになります。この手付金には「金額の変更」や「利子をつける」ことは認められていません。あくまで買主が支払った金額がそっくりそのまま戻ってくるのです。しかし実際の取引の現場では「売買契約」を行う前に住宅ローンの事前審査を行っています。事前審査を行っていれば、住宅ローン本審査に落ちるということはまずありませんので、このケースは非常に少ないでしょう。>>済ませておけば安心!住宅ローンの事前審査とは?【2】売主が手付け放棄したとき
手付金が戻って来る2つ目のケースは、売主が「契約をやめたい!」と言ってきた場合です。これを「手付解除(解約手付)」と言います。売主による手付け解除が行われた際は、買主が支払った手付金が戻ってきます。それに加え、買主が先に支払った手付金と同額の現金を売主は支払わなくてはいけません。つまり、売主が手付け放棄をした場合は、手付金が返って来るだけではなく、手付金分だけお金が増えることになります。ちなみに手付け放棄をできる期間は、あらかじめ契約書で決められています。決済(引き渡し)の前日に「やっぱりやめた」と言われても、買主・売主双方困ってしまうからです。この手付け放棄をできる期間のことを「手付け解除期間」と言います。「手付け解除期間」は売買契約日から2週間〜1ヶ月程度が目安となっています。【3】売主が契約違反をしたとき
3つ目のパターンは、売主が契約違反をした場合です。売主が契約違反をした場合、手付金の返還と合わせて合計売買金額の10〜20%という重い罰金を売主は支払わなくてはいけません。契約違反の主なケースとしては、売主がいつまで経っても引っ越しの準備をしない、などのケースが想定されます。また他の契約違反のケースとしては「【2】売主が手付け放棄したとき」でご説明した「手付け解除期間」を過ぎた後に契約解除の申し出をしてくるケースも含まれます。
申込金と手付金、何が違う?
新築マンションを購入する場合、申込金というお金が存在します。これは購入申込書を記入する際に支払うお金で、10万円〜30万円ぐらいが相場です。申込金と手付金との違いは、契約をキャンセルした際にお金が戻ってくるという点です。申込金は売買契約時に手付金に含めるケースがほとんどですので、一度売買契約を締結してしまうと、お金は戻ってきません。あくまで「契約締結前」のキャンセルの場合のみ、申込金は戻ってくると覚えておいてください。中古マンションの場合は、申込金は必要ありません。購入申込書(買付)を書く時点ではお金は必要ないのです。なぜ新築マンションの場合だけ申込金があるのかは不動産の取引慣行によるものですが、新築マンションならではの「抽選販売」における当選の権利のためという意味合いが強いようです。また、買主の気持ちを確かめる意味合いも強いのかもしれません。手付金等の保全措置とは?
売主が個人ではなく不動産会社の場合、倒産や夜逃げなどのリスクが0ではありません。また新築マンションの場合は、売買契約をしてから引き渡しまでの期間が長いことも良くあります。そこで手付金の金額が高額になる場合は、売主である不動産会社に手付金などの買主から預かったお金を保全する義務が生じます。具体的に保全義務が生じる金額は下記の通りです。- 未完成物件の場合:売買代金の5%もしくは1,000万円を超える額
- 完成物件の場合:売買代金の10%もしくは1,000万円を超える額

手付金以上のお金が取られてしまうパターンとは?

不動産手付金の上限ってあるの?
手付金の相場は物件金額の5〜10%とお伝えしましたが、上限金額はないのでしょうか?これは不動産の売主が「個人」か「不動産会社」かのパターンで異なります。不動産の売主が個人の場合は、手付金の上限はありません。20%でも50%でも支払うことができます。一方、不動産の売主が不動産会社の場合は、物件金額の20%が上限金額となります。不動産会社が売主となる場合は、手付金としてあまりにも多額の現金を受け取るのはNGという訳です。頭金とは?

手付金は頭金に充当することが多い
先ほど解説した手付金はあくまでも「先払い」で支払うお金になりますので、物件価格と別途でかかるものではありません。手付金は通常、決済の際に頭金としてそのまま売主に支払います。例えば5000万円のマンションを購入した場合、契約の際に先に現金で500万円を手付金として支払うと、その500万円を決済の際に頭金としてカウントし、残りの4500万円を住宅ローンで支払うといった形です。もちろん手付金以上の頭金を支払うことも可能です。フルローンの場合でも手付金は必要?
もし仮に頭金0円(フルローン)で住宅価格の全てを住宅ローンで借りた場合も手付金は必要になります。その場合、契約の時には一時的に手付金を支払い、決済の際に手付金が戻ってくる形になります。もっとも実際の現場ではいちいちお金を戻してもらうことはせず、住宅ローンで借りたお金のうち手付金を差し引いた差額を売主に振り込むパターンが多くなっています。頭金は前もって住宅ローンを借りる銀行口座に入れておこう
売買金額の一部を頭金として現金で支払う場合は、前もって住宅ローンを借りる買主の銀行口座(住宅ローンが振り込まれる買主の銀行口座)に入金しておきます。お引き渡し日当日は、住宅ローンの借入金が買主の口座に銀行から振り込まれた後、頭金と借入金を合わせた金額を売主に振り込みます。頭金の入金(住宅ローンが振り込まれる買主の銀行口座への振替)は、少なくともお引き渡し日の3営業日前までには実施するようにしましょう。お引き渡し日の前日や当日などに入金しようとすると、着金(お金が口座に到着する事)に想定以上に時間がかかり、いつまでたっても売主への支払いができないことがあります。以前に対応したお客様でも、お引き渡し日の8時に入金作業(振替)を行ったにも関わらず、自分の別の口座に着金したのが13時ごろで、結局5時間も銀行で待ちぼうけを食らってしまった、というケースがありました。諸費用とは?

諸費用の金額目安はどれくらい?
諸費用の金額目安としては新築マンションで住宅価格の4%〜6%、中古マンションで7%〜10%程度です。これだけ見ると「中古マンションの方が諸費用が高い」ように見えますが、新築の場合は仲介手数料が最初から住宅価格に含まれているので、諸費用単体で見た時に中古住宅は仲介手数料の分だけ値段が上がるのです。諸経費を支払うタイミングはいつ?
諸経費は、基本的に決済(引き渡し)のタイミングで支払います。不動産会社に支払う仲介手数料については、半分を売買契約時に支払う必要があります。もし諸経費を住宅ローンで借り入れて準備する場合、不動産会社に依頼をして、仲介手数料全額を決済(引き渡し)時に支払う交渉をしても良いでしょう。住宅ローンで諸経費を借りたとしても、銀行から振り込まれるのは決済時なので、その時まで不動産会社に待ってもらう、という訳です。>>仲介手数料っていつ払うの? 分割払いはできる?
売主が注意すべきローン特約のポイント

【1】手付金の返還
契約が終わって手付金という現金が入ってきたからといって、臨時収入だと思うような勘違いをしてはいけません。いくら買主がキャンセルしそうにない購入意欲のある誠実そうな人に見えても、ローン審査が通らなかった場合には買主の意思とは関係なくローン特約による契約解除、とせざるを得ません。すると、売主には手付金を全額買主に返還する義務が生じ、売主には1円も入らず契約前の状態に元通りということになります。引き渡し手続きが終わるまでは、手付金は使わず「預かっているだけ」と考えておきましょう。【2】ローン特約は買主のみ
ローン特約というものは、先ほど説明した通り「買主のローン審査が通らず、止むを得ず解約する場合の条件」であるため、売主の都合には全く関係ありません。買主・売主とも何らかの事情で解約をする場合には、ローン特約の場合を除いて基本的には契約書で定めるペナルティが発生します。債務不履行(期日が来ても引き渡しに応じないなど)であると違約金の扱いとなりますが、一般に考えられる「何らかの事情により売主から解約を申し出たい」という場合には、手付金の倍額を買主に支払うことで解約できるという契約になります。倍額を支払うと言っても、元々の手付金は買主からもらっているものですから、実質的には「手付金を買主に返すとともに、同額のペナルティを支払う」ということであり、買主・売主ともにローン特約以外の理由で解約する場合には原則的に手付金相当額を相手に支払う必要があるというものです。つまり、手付金を受け取った時点で売主にも相応の責任が生じることを意味しますので、安易な解約はできなくなる点に注意しなければなりません。【3】物件広告を出すことができない
無事購入希望の方が見つかって契約を行うことになっても、ローン審査が通るか怪しい方と安易にローン特約付きの契約を結ぶことには気を付けなければなりません。ローン特約があれば万が一ローン審査に落ちても買主・売主ともにペナルティがないため、一見してデメリットが無いようにも見えます。しかし、一度契約を結んで手付金をもらってしまうと、そこから物件の広告を出すことができなくなってしまいます。いくら審査に落ちるかもしれないといっても既に契約していますので、引き続き広告を出すことは「おとり広告」のような状態になって禁止されてしまうのです。(※おとり広告とは「集客のための実態のない広告」のことで、存在しない物件や売却済みの物件の広告を故意に行い、その広告をみた人に来店させ、他の物件を紹介するために使われる広告です。)そのため、契約準備の段階から契約、ローン審査、結果が分かってから再度広告という手続きを踏むまでの間、下手をすれば1ヶ月近くストップしてしまう可能性もあります。不動産の流通はシーズンによってかなり変動があり、ハイシーズンにそのようなことをしてしまうと致命的です。なかなか購入検討がしてもらえない状況であれば仕方ありませんが、ある程度複数の引き合いがあるような場合には、ローン審査の確実性を優先するということも必要でしょう。【4】ローン特約の延長をお願いされたら
基本的な契約書のフォーマットでは、ローン特約による契約解除については期限が設けられています。一般によくある話ではありませんが、稀に買主からこの期限について延長をお願いされることがあります。これは、予定していた金融機関でのローン審査が通らず、他の金融機関にも打診しようとして時間が欲しいという都合によるものです。買主がこちらの物件を気に入ってくれていれば人間の心情として待ってあげたくなりますが、やはり安易な延長には気をつけなればなりません。ローン審査が通らないということは収入や職業の安定性、過去の各種借り入れ・返済状況の信用情報などを基に不可と判断されているということですが、この基準は金融機関によって異なるとは言え、ある程度有名な金融機関であればそこまで大きな差はありません。買主のローン審査にあたっての条件が悪ければ、大抵の場合は仲介業者が最初から比較的審査が通りやすい金融機関を含めて複数のローン審査に出しますので、そこから改めてOKをもらえる金融機関を探すのは容易ではないのです。安易に延長してしまえばやはりその期間広告が出せませんので、前段で解説したとおり売却のチャンスを失ってしまいます。経験豊富な仲介業者の意見を参考にするのが有効でしょう。まとめ
住宅の購入に際しては「どのタイミングでいくら必要か」を押さえておくことが重要です。特に手付金はフルローンの場合でも必要になりますので、意外な盲点になりがちです。諸費用もある程度まとまった金額になりますので、直前になって慌てる事がないよう、しっかりと準備していただければと思います。中古マンション購入アプリ「カウル」で推定価格、将来予想価格を見てみよう!


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マンションジャーナル編集部
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